落日ピカレスク2017@高田馬場AREA(2017.11.19) | 安眠妨害水族館

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ホタルの単独公演、「落日ピカレスク2017」に行ってきました。

電脳オヴラアトとのツーマン「ジャックvsビリー 2016」、Zepp Tokyoでの「AREA 20th ANNIVERSARY」以来、復活後は3度目となるライブ。

1日限りの復活ということでもなく、コンスタントに活動するわけでもなく、次の予定はないけれど、メンバーの誰かがやりたくなったらまたやるスタンスとのことで、社会人バンドとなった今の彼らには理想の形なのかもなぁ、と思ったり。

 

「落日ピカレスク」というライブタイトルは、2003年、ホタル初のワンマンライブと同じもの。

セットリストや衣装まで当時の再現とはいかないまでも、昭和映画のポスターを至るところに貼り付けて、あの頃の空気を出そうとしているのが懐かしかったですね。

 

昭和歌謡のイメージを決定づけた代表曲、「未練」からのスタート。

ピリっと空気を引き締めると、序盤は盛り上げに盛り上げる構成でした。

「切り裂きジャック」、「怪人二十面相」、「メランコリック遊戯」…

1曲1曲、イントロやはじまるたびに歓声が沸く会場。

フリも覚えているもので、一気にタイムスリップした感がありましたよ。

 

「サクラチル」からの3曲は、ほぼ固定の流れ。

ラジオ放送のSEを噛ませつつ、どっぷりと重く暗い世界観に潜っていく感覚。

「影になったレイラ」での鬼気迫る表情は、相変わらず凝視できないぐらいに狂気を帯びています。

しかし、「サクラチル」で、番傘を差す演出をする際、台風中継さながら傘がひっくり返るというアクシデント。

雰囲気的に笑ってはいけないタイミングだけに、色々な意味で衝撃的なシーンになりました。

ライブには魔物が住んでいる。

もっとも、慎一郎さん曰く、本人が一番どうしようと思っていたようですが。

 

「娘」で落ちるところまで落ちた後は、椅子に座ってのアコースティック的な雰囲気で仕切り直し。

「雨のち部屋」、「夜霧の女」、「バーボン」と、レアな楽曲たちが披露されました。

特に、「バーボン」は"作ったはいいものの、表現しきれずほとんどやっていない。そもそも、誰もバーボンを飲んだことがない。"とのことで、ようやく日の目を見た形でしょうか。

正直今となってはダサい部分もあるが、これもホタルらしさだから、とアレンジは当時から変えていないのだとか。

ここのパートが、まるまる「ジャックvsビリー 2016」から付加された形。

この辺りの楽曲が聴けるのも、ワンマンだからこそだよなぁ。

 

メッセージ性の強い歌モノを固めた「野良犬の詩」からの流れも、グッとくる。

パートの締めに、13年ぶりの新曲となった「社会に散った日」を持ってくるのがニクいですね。

ホタルが解散せずに続いていたらこんな曲をやっているのであろう、という仮定で制作された書き下ろしの新曲。

エモーショナルな懐メロコアで、ホタルよりもジュリィーに近い音楽性かなとも思ったけれど、その変遷も含めて等身大のホタルなのだろう。

曲を聴くだけで、慎一郎さんが作曲したというのがわかるのだもの。

慎一郎さん、そういえばホタルでのギター&ボーカルははじめてなのかな。

意外だったのか、ギターを持った瞬間、どよめきが生じていました。

 

終盤は、序盤以上に盛り上げて、「Mr.ファットマン」にピークを持ってくる。

「サタデーナイトフィーバー」の煽り部分は、ツーマンのときよりも短くまとめていたな。

ダレずにポンポンと進むのが、かえって刹那的な感傷を呼び起こすので、良かったのでは。

本編最後は、名曲「四季」。

21曲という大ボリュームで、社会人が仕事の合間を縫ってこの準備をしてきたのかと思うと、頭が上がりません。

 

アンコールは、物販で販売された「スペシャルグッツ」に封入されたTシャツで登場。

騙し打ちのような形で、がおさん、たかしさんのみが登場すると、場をつなぐためのMCに入ったのですが、こんなに長くたかしさんのMCを聞いたの、はじめてなのではなかろうか。

脱退ライブでも、そんなに話していた記憶がないもの。

後任ベースが決まっていたものの、この4人でなければだめだ、ということで解散になったという13年経って明かされる真実。

結果としては、オリジナルメンバーで終わらせていたことが、この日のワンマンに繋がっているのかなとも思うので、人生ってどこでどう転ぶかわからないものですよね。

 

「西口改札ラプソディー」に続いて演奏されたのは、こちらも書き下ろしの新曲である「鬼灯」。

「社会に散った日」と同じテーマを描いているとのことですが、こちらは、当時のホタルのど真ん中の音楽性を再現するアプローチ。

シンプルだけど深みのある歌謡曲ライクなミディアムナンバーに仕上がっており、実はこれ、ライブ映えするのかも。

そして、すべての締めくくりとなるのは、やはり「たからもの。」でした。

ここで、序盤でギターの音が鳴らなくなり、途中で中断するというハプニングが発生。

導入の煽りからやり直すという、二度目の登場、ライブの魔物。

ただ、これがあったことにより会場の一体感が増した気がしたのは、僕だけでしょうか。

メンバーだけでなく、オーディエンス側も一緒になってライブを成功させようとする空気が、アクシデントがあったことによってより強く実感できた。

魔物も案外、悪くないな、と。

 

演奏については、さすがにブランクを感じさせました。

現役バンドマンではないリズム体は、割と早い段階から疲労も見えていたし、キメが多くなるとズレも目立つ。

しかしながら、ライブの良し悪しは別問題。

このメンバーで、このワンマンを楽しめたという事実が重要で、この日参加していた誰もが、充実感を持って1日を終えたのではなかろうか。

笑いあり、涙あり、演出にも気を配っており、これを求めていたのだよなと素直に思える、忘れられないライブになりました。

 

なお、この日のDVDが後日通販でリリースされるとのこと。

記憶を記録としても残しておきたい人、行けなかったけれど見ておきたい人、番傘がひっくり返ったシーンがどう編集されているのかが気になる人は、チェックしておくといいのではないでしょうか。

 

1. 未練

2. 切り裂きジャック

3. 怪人二十面相

4. メランコリック遊戯

5. サクラチル

6. 影になったレイラ

7. ニニ六

8. 娘

9. 雨のち部屋

10. 夜霧の女

11. バーボン

12. 野良犬の詩

13. 遠き落日

14. 9才

15. 死にたがりと天

16. 社会に散った日

17. ハイスピードジョニー

18. 破廉恥

19. サタデーナイトフィーバー

20. Mr.ファットマン

21. 四季

 

en1. 西口改札ラプソディー

en2. 鬼灯

en3. たからもの。