「飢え」「餓え」 / ウミユリ | 安眠妨害水族館

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「飢え」/ウミユリ

 

1. テディベアの娼年 作曲 aie(the god and death stars…etc)

2. 浪漫致死ズム 作曲 結生(MERRY)

3. Ever after 作曲 Velo(ex-Moran)

4. Shoe sore 作曲 ザク

5. クチナワ 作曲 yuya(Develop One's Faculties)

 

「餓え」/ウミユリ

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1. Hunger 作曲 yuya(Develop One's Faculties)

2. Judge gavel 作曲 源 依織

3. 浪漫致死ズム 作曲 結生(MERRY)

4. Ever after 作曲 Velo(ex-Moran)

5. クチナワ 作曲 yuya(Develop One's Faculties)

6. アマノ花談 作曲 4ge(ex-Fatima)

 

ex-MoranのVo.Hitomiさんによるソロプロジェクト、ウミユリの1stミニアルバム。

会場限定盤「飢え」と一般流通盤「餓え」、2タイプでのリリースとなりました。

読み方は同じで、漢字が違う。

ジャケットデザインや一部の収録曲も異なっているなど、ひとつの作品のようで、別々の作品のようで…というギミックは、実にHitomiさんらしいなと。

 

このウミユリ、ソロプロジェクトでありながら、バンド編成での演奏を前提としているようで、作曲に、演奏に、豪華なゲストが参加しています。

Veloさんや4geさん、LayさんといったMoranやFatima時代のメンバーとの再会や、aieさん、結生さん、yuyaさんなど、このアーティストの楽曲をHitomiさんが歌ったらどうなるのだろう、という夢の競演が目白押し。

あのHitomiさんが新プロジェクトで音源を発表!というだけでも話題性は高いのに、どこを切り取っても注目度が集まる仕様になっているのは、さすが策士だなと思わざるを得ません。

 

会場限定盤である「飢え」については、aieさんが作曲を担当する「テディベアの娼年」から。

イントロの時点でaie節バリバリの、ダークなオルタナティブロック。

それでも、歌に入ればしっかり持っていくあたり、Hitomiさんのカリスマ性に改めて感心します。

MERRYの結生さんがコンポーズした「浪漫致死ズム」は、レトロなフレーズの応酬に結生さんらしさが垣間見える一方、ノリの良さとアダルティーな雰囲気を併せ持つサウンドは、なんとなくFatimaを思い出させる。

作曲者とHitomiさんの個性の融合としては、この曲がもっともハマっているのではないかと。

 

Veloさんによる「Ever after」は、白くて幻想的なバラード。

優しくもメランコリックな歌声にしても、あえて外しを入れるギターにしても、初期Moranの匂いがして懐かしい。

ザクさんが担当した「Shoe sore」は、ストレートな疾走ナンバーで、ある意味でHitomiさんのセオリーを無視したような潔さがありますね。

ありそうでなかった、純粋な王道感。

たまにはこういうのも気持ちが良いものだ。

 

ラストはyuyaさんの「クチナワ」。

わちゃわちゃした忙しないリズムが焦燥感を煽り、構成も複雑で一筋縄ではいかないのだけれど、キャッチーさがあってインパクトも残していく。

これをラストにしたのも妥当といったところでしょう。

全体的に大人びているが、緩急のメリハリが効いていて、アルバムとしての流れはなかなかのもの。

 

しかし、ほぼ完成形とも言える「飢え」の印象をガラっと変えて、アナザーストーリー的に展開していくのが一般流通盤の「餓え」。

「浪漫致死ズム」、「Ever after」、「クチナワ」といったコアとなる楽曲はそのままに、トップバッターをSE「Hunger」と、依織さんによる「Judge gavel」のコンビネーションに差し替え。

また、ラストは4geさんの「アマノ花談」となっており、「クチナワ」はトリ前の盛り上げどころとして使われています。

 

前者は、ダークでメロディアスな疾走チューン。

世界観を構築してから勢いのある楽曲を放つ、なんともV系然としたスタートダッシュで、違いの明確化に抜群の効果を示していました。

後者も同様で、アニソンというか、ゲームミュージックというか、ファンタジックなシンセが前に出たダンサブルなサウンドは、リスナーに大きな衝撃を与えたのでは。

Fatimaのメンバーによる、Fatimaの面影の破壊は爽快で、早口を盛り込んだキャッチーなサビには心を掴まれずにいられません。

 

ソロプロジェクトなのに、作曲者の個性が目立っている。

これは捉えようによっては失敗なのかもしれないのですが、結局のところ、Hitomiさんなら自分の色に歌いこなせるはず、という信頼があるからこそ。

下手に歩み寄るのではなく、フラットに自分が納得する楽曲を作ったことで、Hitomiさんの表現力の底上げが図られたという一面もありそうです。

 

もっとも、次回作ではこれらを踏まえて、いよいよHitomiさんの真骨頂!という楽曲にも期待したい。

どこかでメンバーは固定化に向かうのか、ますます流動的になっていくのか。

これは、様々な観点で楽しみが多いプロジェクトですよ。