白い花が、散る頃に。/可哀 想
1. 誰もいない世界で
2. 像と猿、道化師の日常
3. イエスタデイ
4. 祭
5. あめがふる。
6. 落日
7. 白い花が、散る頃に。
8. 無
アコギと唄 作品集 其の一。
emmureeのボーカリスト、想さんによるソロアルバムです。
今でこそ、バンドマンによる弾き語り作品というのも珍しいものではなくなってきましたが、セルフカヴァー的なものが多い印象。
アコギ用の楽曲を用意して、きちんとアレンジも練り込んで、となると、まだまだチャレンジングな企画であると言えるでしょう。
しかしながら、ここまで深みが出るものかと驚いてしまうのが本作。
想さんの艶やかな声が、湿り気のあるギターの音色に溶け込む。
ゆったりと、静けさとともに、だけど緊張感を持って。
8曲の中にも強弱がつけられているので、気が付いたらじわじわと侵食されてしまいます。
いつの間にか、想さんの世界に放り込まれているのですよ。
ポイントとしては、ギターが鳴りやんで、次の音がはじまるまでのわずかな隙間。
この一瞬が、あらゆることに思いを巡らすための無限の時間にも思えるのだ。
瞬間的な無音にまで、趣深さを与えてくれるアーティストなんて、他にはなかなかいないのでは。
情報量の多い音楽が主流となった昨今、音源でこれを体験したのは久しぶりかもしれないですね。
アコギを掻き鳴らして、叙情的に歌い上げる楽曲もあれば、音数の少なさを逆手にとって、白く浮かび上がる雰囲気モノもあり。
表題曲である「白い花が、散る頃に。」は、その両方を贅沢に取り込んだバラードになっているのだけれど、これがまた、素晴らしいのだ。
当然ながら、「誰もいない世界で」でのスタートはハマっていたし、引き算の美学「あめがふる。」なども佳曲。
こうやって潰し込んでいくと、1曲たりとて無駄がないから面白いものです。
アコースティック作品に使うと不思議な気もするが、とてもライブ感のある1枚だな、と。
曲が途切れ、照明が落ち、次はどの曲だろうかとザワつく気持ち。
イントロのフレーズで、待っていた楽曲が披露されることがわかる高揚感。
それらのドキドキを、このCDは思い起こさせてくれるのでは。
なお、当初は会場限定盤としてリリースされていましたが、後に通信販売も開始。
emmureeとは異なる想さんの一面に触れるには、とても良い機会ではないでしょうか。