慟哭を鼓動として道とする音 / Soanプロジェクトwith芥 | 安眠妨害水族館

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慟哭を鼓動として道とする音/Soanプロジェクトwith芥

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1. 不確かな箱庭
2. 隔つ虚構紡ぐ真実と憧憬
3. 透過幕
4. arrive
5. hysteria show time

ex-MoranのDr.Soanさんが、ソロプロジェクトを開始。
連続リリースの第一弾となる1stミニアルバムです。

Chantyの芥さんと、ex-amber grisの手鞠さんという二人のボーカリストを迎え、"動"と"静"を表現する2枚の作品が完成した。
「慟哭を鼓動として道とする音」は、そのうち"動"の部分を担うことになる1枚。
本作におけるボーカルおよび作詞は、すべて芥さんが担当しています。

手鞠さんを"静"のほうに起用するのは納得なのだが、芥さんも、どちらかと言えば"静"が似合うタイプかと思っていた。
Chantyに、激しさや攻撃性というイメージを持っていなかったから。
しかしながら、この人選が見事にハマっているから驚きました。
表面的な攻撃性を見せるのではなく、芥さんの表現力を活かした、内面的な激しさを歌にぶつけるようなアプローチ。
素材を殺さないどころか、ポテンシャルを引きだしたと感心するほどですよ。

考えてみれば、Moranの頃からSoanさんの楽曲は、激しさだけでなく、ナイーブさも内包した美しさがあったよな、と。
芥さんも、デスヴォイスでゴリゴリ押し込みまくるような無茶を強いられることなく、持ち味を出した歌唱となっている一方、"Chantyとは違う"という印象もしっかり与えており、強烈なインパクトを残します。
ともすればHitomiさんというカリスマ性の高い歌い手がチラつく音楽性なのに、そちらに意識が向かないというのは、芥さんの声にも相応に華があるということ。
発掘というには既に実績がありすぎるのだが、これはプロジェクトの功績と呼べるのでは。

重厚なサウンドで雰囲気を出しつつ、サビではメロディアスに展開する「不確かな箱庭」、ダークでソリッドな疾走チューン「隔つ虚構紡ぐ真実と憧憬」と、序盤では勢いを大事にしたうえで、「透過幕」ではミディアムテンポの歌モノも披露。
スピード感だけがハードさの象徴ではないと言わんばかりで、これが効いている。
コーラスワークが聴きどころでもある「arrive」で再びアップテンポに切り替わると、最後は、ザラザラとまくし立てつつダンサブルに締めくくる「hysteria show time」。
終盤にはスパート的なナンバーを持ってきて、全体を俯瞰するとドラマティックな構成になるという演出。
テーマを絞っても一辺倒にはならないのが、実にSoanさんらしいですね。

なお、ゲストミュージシャンとして、ギターにShunさん、ベースにIvyさんが参加。
Moranのリズム体が、ここで再会というのも、ファンにはたまらない演出でしょう。
さすがにコンビネーションは抜群で、ツボをわかっているといったところ。
歌にリズムに、曲に世界観。
どこを切り取っても満足できる仕上がりでした。