it isn’t a singles / the god and death stars | 安眠妨害水族館

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it isn’t a singles/the god and death stars

¥3,240
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1. 焼失
2. aaron
3. 真っ赤な雪
4. 穴々
5. 夜空の手前
6. sister ripper
7. ミンチ
8. 無実の無視
9. 複雑な倒立
10. 母乳
11. ザゾンビ-demo ver.-

一応、ベスト盤ということになるのかな。
アルバム未収録となっていた楽曲を網羅したthe god and death starsのフルアルバム。

初のシングルコレクションと謳っておきながら、「it isn’t a singles」というタイトルが彼ららしい。
こんな作品名をつけた意図としては、代表曲を集めた、またはシングルのリードトラックを並べたベストアルバムとは、少し趣が異なるということでしょう。
リードトラック、カップリングという概念はあまり気にしない。
配布CDだろうが、会場限定CDだろうが、アルバムに入っていなければ詰め込んでしまえ。
そんなスタンスが浮き出た1枚となっていました。

言ってしまえば、発表済みの楽曲ばかり。
しかしながら、結果として入手困難となっていたレアな楽曲も多く含まれ、そこまで頻繁にライブに足を運べていなかった層には嬉しい仕様。
これまでのオリジナル盤に含まれなかった楽曲も改めて救済され、シングルベストでありながら、カップリングベストとしての機能も果たしているから面白いです。

もちろん、ずっと追いかけていたファンであっても聴く価値はあり。
最近発表されたばかりのナンバーは除くとしても、ほとんどの楽曲にリミックスが施されており、オリジナルアルバムとしても気持ち良く聴くことができるのだ。
特徴がある枯れ音を響かせるギターが引っ張る、オルタナロック。
流れの中で聴く名曲たちは、単発的に耳にするよりも、深みを増しているようにも思えますね。
そこまで複雑性はないのだけれど、裏の裏、奥の奥までありそうなスリーピースのアンサンブルは、一朝一夕では完成しないコンビネーションだな、と。

やはり、その中で注目してしまうのは、「母乳」。
ボーカルが録り直されており、aieさんのボーカリストとしての成長が手に取るようにわかります。
音を伸ばす部分での声量や、音程の安定感が、明らかに増した。
そのうえ、抽象的な表現にはなってしまうけれど、グッとくる歌い方ができるようになったよなぁ。
スタンスは大きく変わっていないにも関わらず、より核心に迫ってくる。
発表当時の時点で、"aieさん、上手くなったな"と思ったものですが、そこから更に進化していましたよ。

なお、ボーナストラックとして収録されているのは、「ザゾンビ」のデモバージョン。
成長を示した直後に、初期のデモを持ってくるなんて、狙っているにしても捻くれています。
自然体なのか、あえての演出なのかはわかりかねますが、粗く、生々しいサウンド。
最後の最後に原点回帰で締めくくるというのも、遊び心が成せる業だったりして。

聴き逃している楽曲があったリスナーにとってはマストアイテム。
黒を基調としたジャケットも格好良く、あらゆる角度から楽しみたい作品です。

<過去のthe god and death starsに関するレビュー>
after the addle apple
deep snow burned away
賑やかな食卓
mary bird milk
-dawn of the god-
殆ど腐敗
Live at LOFT
addle apple
addle apple trailer disc