賑やかな食卓 / the god and death stars | 安眠妨害水族館

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賑やかな食卓/the god and death stars

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1.賑やかな食卓
2.出来事と偶然の為の媒体
3.エドワード・スミス
4.風邪のライオン
5.隣人林
6.告発

the god and death starsのミニアルバム。
約半年ぶりにリリースされた新作は、強みである"歌謡オルタナティブ"を研ぎ澄ませた6曲が収録されています。

タイトルのナンセンス度合いが増しており、難解さも出てきたでしょうか。
スリーピースによる無駄を排除したサウンドでありながら、構成面では捻くれた部分を見せ、それぞれを一筋縄ではいかない楽曲に仕上げている。
aieさんの声質もあるのだけれど、"枯れた"感じが強まったかな。
歌謡曲と、オルタナの融合。
今まで以上に、濃密な作品になっているのでは。

「賑やかな食卓」は、タイトルとは裏腹、じとっと暗くスタートします。
序盤はじっくりと堪えるように進行していくので、サビまでは我慢が必要なのですが、そうすることによって、彼らのサウンドに酔いしれる準備を整えることができる。
表題曲ではあるが、リードトラックというより、the god and death starsのコアな音楽への導入といった位置づけでしょうか。

続く、「出来事と偶然の為の媒体」では、淡々と進みながらも、引っかかるフレーズを随所に織り込むことで印象的に。
変則的なリズムがマニアック度合いを高めていますが、繊細で美しいアルペジオと、サビでの開け方が格好良いな。
「エドワード・スミス」は、一言、"彼ららしい"に尽きる。
ブルース調のメロディを、軽快なテンポに乗せて歌い上げて。
大人びた落ち着きがあるのだが、ギラリと尖ってもいるのです。
歌詞にも、ドキっとさせられますね。

意表を突いたのは、「風邪のライオン」。
シンプルなビートロックで、こういう楽曲をthe god and death starsが奏でるとは意外であった。
とはいえ、やはり、こういう音楽を通ってきた世代なのだろう。
無理した感じは一切なく、自然体でバンドのアンサンブルを楽しんでいるようです。
タイトルからはイメージすら湧いてこない「隣人林」は、「りんじんばやし」と読むのでよいのかしら。
渋く枯れたギターサウンドが耳に残る歌謡ロック。
アクセントを挟んだ分、彼らのアクを凝縮したようなフレーズが目白押しで、終盤に向けた彼らなりのラストスパートとしておきましょう。

フィニッシュに持ってきた「告発」は、展開が多く、次のメロディが読めないドラマティックなナンバー。
これまた、癖のある楽曲で締めるものだ。
Aメロ、Bメロ、サビ…と、流れは比較的ストレートに見えるのだけれど、その後には、また違ったメロディが用意されている。
リフにしても歌メロにしても、アイディアを贅沢に使っていて、ある意味で潔いと思います。

シングルになりそうな楽曲は見られず、とにかく、自らの音楽性を追求したアルバムである。
ピリピリと張りつめたシリアスさ。
ダークで淀んだ世界観。
彼らの中でも最もディープな作品となっており、とっつきやすさには欠けてしまいますが、裏を返せば、これほど、一度踏み込んだら這い出すことができない魅力を持った作品も珍しいわけで。
深みにハマりたい人は、是非とも堪能していただきたい一枚。

<過去のthe god and death starsに関するレビュー>
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-dawn of the god-
殆ど腐敗
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