VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 備忘録 その4 | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

ここからは10月16日の備忘録です。
3日に及ぶVJSの最終日。
初日は見送ったとはいえ、1日フルで楽しんだ反動で、朝の段階で足が痛かった。
これ3日とも参加した人は、どれだけ体力があるのだろう。
いや、体力というより、気力で参加するフェスなんだろうな。
そんなことを考えながら、年齢的な衰えを実感せざるを得ませんでした。

この日は、ほかの2日よりも終演時間が1時間程度早い時間設定。
もっとも、この予定終演時間が意味をなすはずがないというのは、誰しもが気付いていたわけで、終電の都合で最後まで見れなかった人が、終電でギリギリ帰れるかな、ぐらいの肌感覚ではありましたが。


ぞんび

1. 墓場deラブソング
2. 腐り姫
3. アブノーマル・セラピー
4. 死ねばいいのに。

"幕張メッセが高田馬場AREAになる"という逹瑯さんのバンド紹介を受けて登場した、最終日のトップバッター。
これは、コンセプト勝ちですな。
バンド単位でモチーフにするには、思いついたとしても実行できない"ぞんび"という設定を、誰にも負けないオリジナリティに昇華させていたのではないかと。

キャッチーなポージングと、ダークポップな音楽性を結び付け、ヴィジュアル系のフィールドに落とし込む。
キリストをゾンビにして蘇らせたようなGt.翔さんのヴィジュアル的なインパクトもさることながら、テーマをメインストリームに馴染ませて還元するセンスに驚かされましたよ。
4曲だけという短い時間ではありましたが、たったこれだけの演奏時間で、メンバーひとりひとりのキャラ立ちもわかるというとっつきやすさもポイント。
2日目に比べて、朝イチからの動員が多かった理由も頷けます。

それにしても、朝が似合わないバンドである。
朝からバリバリ暴れまわるゾンビなんて、いてほしいわけがない。
とはいえ、メンバーコールの代わりに"死んじまえ!"と叫ぶ「死ねばいいのに。」は、朝だったからこそナンセンスで面白さが倍増したのも事実。
ある意味、おいしい立ち位置だったのかもしれません。


THE MICRO HEAD 4N’S

1. SCANDALOUS
2. VOLCANATION
3. Deeper Than Black ~闇色の翼~
4. MONSTER'S ROAR
5. SEVENTH COLOR

2番手として登場したのは、THE MICRO HEAD 4N’S。
話題性としては、Dr.TSUKASAさんが演歌歌手としてデビューした最上川司のほうが高かった気がしないでもないが、FANATIC◇CRISISにD'espairsRayと、時代を彩ったバンドのメンバーが在籍している点で、彼らの出演は意味があったと思うのです。

実のところ、ボーカリストがex-AのNimoさんにチェンジしていたことをすっかり忘れていて、登場からしばらくは戸惑ってしまっていたのですが、その時間がもったいなかったと後悔したほど。
さすがのキャリア。
さすがのステージング。
ほかのメンバーに比べたら経験値が劣るNimoさんについても、思いのほか貫禄があって馴染んでいる。
楽曲としては小奇麗にまとめた感があるものの、堂々とした演奏も手伝って、圧倒されているうちに終わってしまった感覚でしたよ。

曲を覚えてから、もう1度見てみたい、聴いてみたい。
このメンツを揃えてサブステージ規模というのも寂しい気はしてしまうが、このメンツをサブステージの距離感で見ることができるなんてお得、と考えておきましょうか。


NoGoD

1. 神風
2. STAND UP!
3. 絶望、バイバイ。
4. カクセイ

Vo.団長さんも多忙である。
初日は、X-SUGINAMIのボーカリストとして本フェスの正真正銘のトップバッターを務め、最後の無敵バンドまでがっつり参加という嚙み込みかたをしていたにも関わらず、2日目は自身の単独公演をこなして燃え尽きているという。
そして、3日目は再びVJSにて早めの時間に登場。
このスケジュール感で、よくあれだけの力強いハイトーンボイスが出せるものだ。

それにしても、こういう場では団長さんのキャラが目立つね。
彼の上手さは、こうやってファンとの距離感を縮め、音楽を聴かせる前から注目度が高まった状態に持ってこようとするセルフプロデュース能力にある。
さすがに後半は疲労も見え始めましたが、コミカルなキャラクターとは裏腹に、激しい楽曲を高らかに歌い上げる姿の格好良さといったら。
フロントマンが万能だと、バンドとして計算できるから良いですね。

また、影を支える楽器隊にも目を向けておきたい。
特に、kyrieさんのギタープレイは圧巻。
涼しい顔で難解なフレーズを弾き倒し、NoGoDの武器は団長のキャラだけではないという無言の主張を叩きつけていました。
女形を封印しても、なんだかんだ名残がある華凛さんについては、笑顔固定をやめた分、プレイに意識のリソースが割けるのか、更にえげつないベースフレーズとパフォーマンスの応酬。
様々な音色を響かせて表情を付け加えるShinnoさんのギターにしても、分厚いビートで演奏を支えるKさんのドラムにしても、誰ひとりとして空気になっているメンバーがいないのだから驚きです。
"We are?"と振っておきながら、"X!"とオーディエンスが返すと、"NoGoDだっつーの!"と言い残して退場するというオチも見事に決まり、総合力の高さを示した形でしょう。


ゴシップ

1. R-18
2. お仕置きの時間
3. とあるアイドルオタクの異常な愛情
4. 【Psycho≠pas$】

音出しの時点で執拗に煽り、1曲目から熱を持ってスタートできるようスタンバイしておくという、転換時間が短いからこその工夫。
しかも、それだけあたためておいてアカペラはじまりというスカしを入れる天邪鬼っぷりも、攻めているなと感じさせるには十分でした。

いつも以上にメイクなどをガゼットに寄せていた印象だけれど、注目されてナンボのフェス。
きっかけは何だっていいのだから、極端にやってしまったほうが良いでしょう。
ハードでダークなサウンドに、あえて幼稚なフレーズや"あっちむいてホイ"のフリなどを取り入れるコテオサ感は、今回の出演者の中では特出した個性だったのでは。
シーン全体的に、ゼロ年代的な空気感を持つバンドが絶滅危惧種となっている昨今。
彼らのようなバンドが育てば、ヴィジュアル系を盛り上げる、というこのフェスの最大目的の達成にも近づける気がします。

大きなライブがあるとビラを配りにくるバンド、というイメージがあったので、この日のゴシップは出演者なんだ、と感極まる想いもありました。
バンドの夢は、ファンの夢。
彼らのステージ、妙に印象に残っています。


ダウト

1. 感電18号
2. 飛行少女
3. MUSIC NIPPON
4. 花咲ビューティ

すべての歌詞を"ダウト"に変えて音出しをするという、意表を突いたアピールからのスタート。
彼らの場合、歌メロが良い楽曲が多いので、盛り上げ系の楽曲が中心となりやすいフェスのステージで、どういう攻め方をしてくるのかが楽しみでした。

セットリストはベスト的。
ライトリスナーに訴えることも意識した構成にしてきた印象です。
ただし、個人的には、もっと聴きたい曲があったというのが本音。
彼らの良さを伝えるにも、時間が足りなかった印象は否めませんね。
誤解しないでいただきたいのは、彼らの技術が未熟だったとか、気合いが足りなかったとか、そういう意味ではなく、まだまだ引き出しがあるとオーディエンスに思わせていたということ。
こんなものか、で終わったわけではなく、もうちょっと聴いていたら引っかかる曲をやってくれそう、という感覚を持ち帰ったのでは。

Vo.幸樹さんは、フロアに降りたり、適度に合いの手を入れたりと、キャリアを見せつける堂々たる立ち振る舞い。
バンドとしても、ラストはバンドアレンジでの三三七拍子で締めるという独特の様式美を貫いており、しっかり爪痕は残していたのではないかと。
やはり、スタイルを持っているバンドは強いですな。


Versailles

1. Aristocrat’s Symphony
2. Sympathia
3. The Revenant Choir

スタイルを持っているなら強いというなら、KAMIJOさんは最強である。
和を意識させるバンドが続いた空気感を、あっという間に中世ヨーロッパに変えてしまう耽美な世界観。
曲を詰め込むバンドも多い中、3曲に厳選して、ドラマティックに展開していく1曲1曲の美しさを大事にしたセットリストもVersaillesらしいな、と思いました。

シンフォニックでクラシカル。
そのうえで圧倒的なパワーを持ったメタルサウンドは、活動休止前よりも更に磨きがかかった様子で、KAMIJOさんの歌声も、それに埋もれることなく進化を遂げていた。
キャリア的にはベテランの域に入りつつあるメンバーたちですが、まだまだ伸びしろを感じさせてくれるからワクワクが止まらない。
バラードである「Sympathia」を、こういうところに放り込んで、演出のひとつに使ってしまうセンスも素晴らしいの一言です。

"ボンジュール"ではじまり、"メルシーボークー"で終わるキャラの徹底もさすが。
ベートーヴェンやモーツァルトを引き合いに出して、ヴィジュアル系を並列で語ってしまうスケールの大きさもさすが。
ひとつ気になったのは、KAMIJOさんが持っていた、色がちょくちょく変わる光るバラ、あれ、いくらなんでも安っぽすぎませんか?
普通に赤いバラを持っていてくれたほうがイメージに合っていると思うのだけれど。


Angelo

1. Umbilical cord
2. RIP
3. OUTBREAK
4. Script error
5. PROGRAM

カリスマ・キリトは、久しぶりに見てもやはりカリスマだった。
白いフードを被って、ミディアムナンバー「Umbilical cord」を歌い上げる姿は、何か別次元の存在を見ているような感覚になってしまう。
年齢を重ねるにつれて、美しさが増していくというのは、どういうメカニズムなのでしょう。

5人編成になってからのAngeloを見るのは、おそらく初めて。
マニアックながら引き込まれてしまうサウンドは、何十年もやっているバンドかと思うくらいに洗練されていて、見違えるように格好良くなっていました。
神々しさすら覚えていたら、続く「RIP」では、フードを脱いだキリトさんが豹変。
マイクスタンドを何度も床に叩きつけ、ボコボコにしてしまうというロックンローラーっぷりには、生キリトに慣れていない身としては衝撃以外の何物でもありませんでしたよ。
大好きな「PROGRAM」で締めるところでも感動。
もう、何から何まで凄まじかった。

真顔でユーモアを吐くキリト節も健在で、何度もヘドバンを要求するキリトさんと、それに呼応するオーディエンスとの主従関係。
終わったあとのザワザワした空気感が、どれだけ初見のオーディエンスにAngeloの爪痕を残したかを物語っていましたね。
イベントで他バンドの動員を掻っ攫っていくというPIERROT時代の伝説を、この幕張メッセという会場でリアルタイムで目撃してしまった。
あのヘドバンの海は、忘れられない光景である。


バンギャルの適応能力の高さ。
主に、初見でも楽曲のノリを見極め、あっという間にフリをマスターしてしまうファンを賞賛する際に使用する言葉である。

この適応能力、フェスという文化においても発揮できていたのかもしれません。
はじまる前は、ロックフェス文化とバンギャル文化の違いや、世代間の感覚の違いによって揉め事になるのでは、という声も多かったようですが、実際体験してみたらそうでもなかった。
普段、目当てのバンドが終わったら帰っているようなネオ世代も、しっかり色々なバンドを見ていた印象です。

しかも、3日目にもなると動き方にも慣れがでてきて、動く、休むのメリハリも出てくる。
バンギャル文化とフェスは相性が悪い、というのはネガティブな幻想で、単純にフェスを経験する場がなかっただけ。
回数をこなせば、バンギャルナイズされたフェスの文化が、自然にできていくのかな、とも感じましたよ。


そんな感じで午前中は終了。
ここまではオンタイムで進行していました。
まだまだ終わらぬVJS。
備忘録その5に続きます。