「臓器のノゾキ穴。」 / 黒百合と影 | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

「臓器のノゾキ穴。」/黒百合と影


1. チョコレート階段
2. 「洗脳」
3. 液状部屋
4. 絶倫フルコース
5. 「腐乱腐乱」
6. すてきな唄。

レーベル離籍、メンバー脱退と慌ただい動きを見せていた黒百合と影ですが、いよいよ第二期が始動。
本作は、" ミニミニアルバム其の二"と称してリリースされた2ndミニアルバムです。

969枚の限定生産。
内容としては、限定シングル「うろんなチョコ冷凍。」に新曲を3曲追加した形ですね。
先行シングルをカップリング曲を含めて全部ぶち込んでくるとは意外でしたが、よりディープに作品の世界観を補完することができているのかと。

総括として、アングラ感が大幅に強化されました。
激しさは意識しつつも、ミディアムテンポでドロドロとした楽曲ばかり。
キャッチー性は完全に無視し、禍々しい暗黒の世界にどっぷりと沈んでいきます。
こんなサウンドに辿り着いてしまったのであれば、独立して自由に突き進む決断をしたのも納得できるというくらいのマニアックさで、聴く人は選ぶが、選ばれたリスナーにとってはじわじわ心の深い部分に侵食してしく唯一無二の作品となるのではなかろうか。

「チョコレート階段」は、シングルらしくその中でもとっつきやすい楽曲に仕上がっており、導入ツールとして機能。
その流れで「洗脳」になだれ込むと、あとはカオティックに黒百合と影の音楽を一方的に押し付けるだけ。
この突き放した感覚は、距離を縮めていこうとする昨今のショービズシーンから逆行するアプローチなのですが、カードの切り方が上手いというか、徐々にフィットしていく構成になっているので、むしろそのスタイルが格好良いのでは、とタイトル通り洗脳されていくようです。

また、必ずしも難解で聴きにくいアレンジに徹しているわけではなく、現代シーンで主流となる手法もさりげなく取り込んでいるのですよ。
前身バンド時代も含めて、流行をなぞるスタイルも経験済。
ここにきてそれが活きているというのも皮肉っぽくはあるのですが、結果として、受け入れにくいアングラ感を受け入れやすく変換して出力、という絶妙なサウンドメイクを実現しているのだから面白いものです。
フルアルバムでは噛み合っていなかった部分が、すっかり馴染んでオリジナリティとして昇華。
まさか、こんな化け方をするとは。

幼稚さのある言葉遣いで、グロテスクな心情を抉りだす歌詞は相変わらず。
それを清濁織り交ぜて発するVo.烏名鳴さんの表現も、間違いなく幅が広がりました。
ダミ声、呻き声、叫び声…
上手い下手ではなく、簡単には真似することができないボーカルスタイルを確立しつつあり、CDを通して聴いているだけでも圧倒されてしまいます。

なお、歌詞カードには、収録曲の歌詞が不規則に並び替えられて3ページに渡り記載されている仕様。
歌詞を目で追いながら音楽を聴くことはできません。
CDを取り外したところには"聴くな。"とも書いてあり、"音楽業界が配信リリースに移行していく中でCDを買う意味…"といった議論のアンチテーゼにもなっているのかも。

メディアへの露出の減少など、レーベル離籍の影響はゼロではないにしても、ここまでやりたいことをやってくれるなら潔し。
第一期での活動時には、あまりピンときていなかったのだけれど、どうも、評価を固定するには早すぎたようです。
アングラ路線に舵を切り替えた第二期・黒百合と影、今後の展開にも注目していきましょう。

<過去の黒百合と影に関するレビュー>
皮肉な種の卑屈な芽。
「浴槽」 「月蝕」 「未遂」