ラストシーズン / ゴーストレイン | 安眠妨害水族館

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ラストシーズン/Ghostrain

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1. ラストシーズン

ゴーストレインが贈る、切なすぎる桜の頃の物語-。
彼らにとって2作目となる配信シングルがドロップされました。

音楽活動を休止していた期間中に、Vo.伏見慎一郎さんが綴ったこの楽曲。
卒業シーズンにリリースするにはもってこいの、淡く甘酸っぱい叙情的なナンバーとなっています。

慎一郎さんから連想される桜モチーフの楽曲と言えば、ホタル時代の「サクラチル」や、ジュリィー時代の「サクラ心中」が代表的。
どちらも、戦時中を描いた時代背景も相まって、切なくも悲壮感が漂い、精神的な重さを含んでいました。
一方で、この「ラストシーズン」は、眩さ、瑞々しさを感じさせる。
重さはなく、むしろ軽やかさがあって、その軽やかさに止めることができない時間の無常さが映し出されることで、切なさが際立っているのですよ。

言ってしまえば、ベタベタな卒業ソング。
テーマは普遍的で、あえて斬新な解釈を持った歌詞が綴られているわけでもない。
ならば、よくある楽曲として埋もれてしまうかと言えば、答えは"No"であろう。

慎一郎さんの表情豊かなボーカリゼーションは、春の風を思い起こさせるほどやさしく、淡く、だけど、芯が合って存在感がある。
Bメロで散々盛り上がっておきながら、サビは少し抑えめに入るという難しさがあるのですが、それをさらりとやってのけ、楽曲をドラマティックに演出しています。
激情を叫ぶだけが彼の魅力ではないのだと再認識。

また、演奏についても、楽曲の持ち味をよく理解していますよね。
全体的には、Ba.浦野健一さんのビートが引っ張っているのですが、わざと音が重ならないように気を使ったギターのフレーズにしても、疾走感を殺さずに駆け抜け続けるドラムにしても、とても良いコンビネーションが構築されているな、と。
非ミュージシャンをメンバーとして迎えてのアニメーションとのメディアミックスも、世界観の深堀りに一役買っていますし、ここまで春が来る切なさをあらゆる角度から浮彫にした楽曲はあったでしょうか。

主催イベントが決定し、2016年になり、初めてライブ活動に乗り出すゴーストレイン。
その皮切りに届けられたのが、こんな名曲であれば、いやでも期待は高まるというものです。
これまで配信でのリリースが続いていますが、フィジカル作品としての流通は考えていないのかなぁ。
DVD付きの作品を発表しても、その価値も理由もあるプロジェクトだと思うのだけれど。

<過去のゴーストレインに関するレビュー>
アルタイル