Grimoire / HERe:NE | 安眠妨害水族館

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Grimoire/HERe:NE

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1. Re:
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5. G'Z
6. 蝶よ、華よ。
7. SABATTH(Grimoire ver)
8. MIRROR
9. evade
10. GATE
11. 零~ZERO~
12. MEVIUS

仙台を拠点に活動しているHERe:NE。
本作は、2013年にリリースされた1stフルアルバムです。

"魔導響書"と称した作品を4枚発表。
その完結編となる"魔導物語"が、この「Grimoire」である。
コンセプトを打ち出す前のシングル「蝶よ、華よ。」も収録されていますが、それも含めて耽美でゴシックな世界観を持った楽曲たちで構成されているのが特徴でしょうか。

HERe:NEと言えば、Vo.和鬼子さんのおかんキャラを活かしたガールズバンド。
ネタ要素を強めて、現在ではガーリーなポップサウンドも取り入れた方向感を打ち出しつつありますが、この時期は、まだまだ源流に近い音楽性と言えるのかと。
シリアスでダークなサウンドを多用しており、女性らしさは極力排除するようなアプローチ。
さすがに和鬼子さんの歌声は男性的とは言えませんが、あえて表情を抑えているような歌い方となっており、作品単位での統一感はあります。

女声ボーカルが珍しいシーンにおいて、和鬼子さんの安定した歌唱力は強み。
それは、コテコテに徹している初期の音楽性であれば、なおさらのこと。
「GATE」のような王道感溢れる楽曲で、最大限に発揮されています。
世界観の徹底のための雰囲気モノが多く、ひとつひとつのインパクトには欠けてしまいますが、やりたいことははっきりしていましたね。

ゴスを意識していることを踏まえれば、それが狙いなのかもしれませんが、打ち込み感が強すぎるのをどう捉えるか。
リズムマシーンの機械的なドラムに、デジタル色の強い音を重ねることで、なんとなく
90年代のインダストリアル・ゴスユニット的な雰囲気が出ているのも事実。
メンバー構成を考えれば、もっとギターやベースが前に出て、有機的に楽曲に絡んでもいいのではないかと思うものの、好みによってはこれが良いというリスナーもいそうです。

個の力の弱さが最後まで響いた感はあるのだが、ニッチな部分に入っていけそうな音楽性には、潜在的なニーズはあったと思われる。
差異化のための試行錯誤で、この頃の世界観が薄れてしまったのは、良かったような、残念だったような。
個人的には、レコーディング技術も向上し、キャラ立ちしきった今、この方向性での楽曲が聴きたいなぁ。
「GATE」なんかは、現メンバーで素直に再録してほしいものですよ。

2枚目となるベストアルバムをリリースし、7月の単独公演を控えてライブ活動を休止している彼女たち。
復活後、どのような成長を見せてくれるのか期待したいところです。

<過去のHERe:NEに関するレビュー>
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