√-route- / HERe:NE | 安眠妨害水族館

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√-route-/HERe:NE


1, PDF
2, RRR(route ver)
3, Shin~de~rela
4, なまはげきりたんぽ
5, route~魔女界行進曲第一章~

東北発のガールズバンド、HERe:NE。
本作は、ライブ会場と通信販売限定でリリースされた1stミニアルバムです。

Vo.和鬼子さんの強烈なキャラクターを武器に、徐々に知名度を上げつつある彼女たち。
"笑顔吸収型魔女"という設定になって、音楽性もキャラに寄せたスタイルに変わってきたような。
初期は、和鬼子さんの"オカン"キャラと、耽美でゴシックな世界観とのギャップが面白さだった気がしますが、現在では、キャラを全力で押し出す方向に舵を切ったということなのかな。
とりあえず、現時点でのHERe:NEを詰め込んだ作品、という位置づけなのかと思われます。

「PDF」は、"Paranoia Disorder Fascism"の頭文字を取っているらしい。
ダークなサウンドを、デジタルサウンドによってガーリーにコーティング。
サビではポップに開ける展開で、シリアスな面とワイワイ楽しい面を1曲の中に落とし込んだ、トップバッターに相応しいナンバーと言えるでしょう。

続く「RRR」は、過去の楽曲のリテイクバージョン。
ポップ色を強めた設定紹介的な楽曲で、今のHERe:NEを示すにはなくてはならないアッパーチューンです。
「Shin~de~rela」は、ゴージャスなシンセによって、唯一、耽美色が強いと言える仕上がりに。
確かに、あのキャラを押し出してしまうと、この手の様式美重視の楽曲は難しいのかもしれないのだけれど、だからこそのギャップもあって、アクセントにはなっているのかと。
和鬼子さんの歌唱力は申し分ないので、こういうお耽美ナンバーも引き続きやっていってもらいたいものですね。

問題作は、「なまはげきりたんぽ」。
自ら"HERe:NE史上最も内容が薄い"と言い放つキャッチーなフレーズを優先したパーティーソング。
秋田の名物たちを、祭囃子のような愉快なサウンドに落とし込んで盛り上げます。
土着的な雰囲気があるだけに、歌メロに入ると素直なポップ調になってしまうのがもったいない気がしますが、地方バンドだからこその手法で、今の彼女たちならこれもアリかなぁ。
ラストの「route~魔女界行進曲第一章~」は、RPG風の世界観を持ちつつ、ポップさは失わず。
この並びだと、何故だか「なまはげきりたんぽ」が浮かないのが不思議である。

ある種、世界観を捨てる割り切りが、吉と出るか凶と出るか。
予想以上にポップに振り切れていて、音だけを聴けば、V系感は薄くなっているのですが、裏を返せば、そこが個性化、差異化のチャンスとも言える。
あとは、プラスアルファで何か強みにできる面白味を見出したいといったところでしょうか。
楽器隊が目立つシーンが少ないのと、キャッチーではあるのだけれど、これというキラーチューンに欠け、無難にはまとまっているが、ガツンというインパクトが欲しくなる。
その点では、「なまはげきりたんぽ」は、もっとやりたい放題突き抜けてしまってもよかったけどな。

地方のガールズバンドというシーンにおけるハンデもある中、精力的に年間100本以上のライブをこなす活動ペースは応援したくなる要素。
場数をこなしたことで、ステージングの上達はもちろんのこと、キャラを活かしたネタの精度が高まっていくことを期待したいです。