夜明け前、最後の夜に永遠を紐解く方程式を夢む@Zepp DiverCity TOKYO | 安眠妨害水族館

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2015.9.21、Moran Last Live「夜明け前、最後の夜に永遠を紐解く方程式を夢む」に行ってきました。

開演時間を15分くらい押してのスタート。
メンバーが一人ひとり登場するいつものSEとは異なり、白い幕に5人のシルエットが映し出されるという演出から始まり、この段階で鳥肌が立ってしまった。
そんな中で演奏されたのが「痕跡とキャンバス」と、「Element」というのも、わかっているというか、それを通り越して意地悪だというか。
嫌でも色々なことを思い返してしまうじゃないか。

正直なところ、1曲1曲について、誰がどんなステージングをしていたとか、ここが良かった悪かったとか、いつものような感想が浮かんでこないのですよ。
もちろん、Gt.viviさんが薔薇を差し出す演出が格好良かったな、とか、Ba.Ivyさんがぴょんぴょん飛び跳ねて躍動感を与えているな、という断片的なものは覚えているにせよ、それすら幻だったのかもしれないと思えるくらいに。

本編のライブ構成は、聴かせる系のナンバーを全体的に散らしている印象で、アップテンポのナンバーを持ってきても、必要以上に固めていなかった。
意図的に、"ヒートアップしすぎて、暴れているうちに終わってしまった"ということがないようコントロールしているようにも見えた。
だったら、なおさらステージングを見ているはずじゃないか、と言いたくなるだろうけれど、じっくり聴くことができる、というのは、じっくり想い出に耽る余地があるということ。
この曲が出たとき、こんなことをしていたな。
この曲をライブで見て、あんなことを思ったんだっけ。
自分の中で、Moranの音楽と紐付けられた記憶たちが一斉にフラッシュバックして、ステージどころではなかったのです。

「Eclipse」にしても、「暁に燃ゆ」にしても、大好きなアッパーチューン。
まさか、この楽曲たちで、涙を堪えることになるとは、実際にあの場に立ってみるまで、想像できなかった。
ファンの総称である"Holic"。
そう、この日のステージは、まさにMoranの演奏に、Holicたちがそれぞれの色付けを行うことで完成する総合演出だったのだろう。
Vo.Hitomiさんが、"ここで最高の恋がしたい"と序盤に会場に向けて語りかけたように、事実に主観が重なることで無限にイマジネーションが広がっていく様は、確かに恋に近い感情の膨張と言えるのかもしれないな、と。

スイッチを入れて、盛り上げる方向に切り替えだしたのは、本編も終盤に差し掛かったあたり。
「Lyric of the DEAD」が終わると、Gt.Siznaさんがお約束となる裏声での煽り。
ところどころでHitomiさんが語り口調で話したり、Dr.Soanさんが煽ったりという場面はあったものの、MCらしいMCは入れず、淡々と曲を重ねていたと思っていたところで、この飛び道具が待っているという。
相変わらずの変態的な動きで会場を沸かせると、ハードにまくしたてる「Maybe Lucy in the Sky」に。
そこから「Break the silence」と畳み掛けて、このままだとさすがに体が疼くだろうという絶妙なタイミングで、激しい楽曲を詰め込んできましたね。
ここで何も考えずに暴れられたことで、最後の「浮遊病」が更に効果的になる。
なんというか、ここまでが本当にあっという間。
24曲もやっていたのか、と終わってからズシンと重力を感じることではじめて気付くくらい。
それだけ密度の濃いライブだった証拠なのかな。


アンコールは、「以降、白紙のクロニクル」から。
"Moranが解散し、明日からの予定が白紙であることが怖い。
でも、Moranがなくなった世界で、その白紙が少しでも永遠で埋まるように。"
要約として、そんなことをHitomiさんが話したあとでこの曲だから、やっぱりズルいよ。
アンコールで持ち直した涙腺が、再び緩むじゃない。

スパニッシュなギターが特徴的な「皮下に滲む」、アコースティックな雰囲気をバンドアレンジで再現した「Fairy Tail」と、アンコールだけにアクセント的な楽曲を挟むものの、代表曲である「ロワゾ・ブルー」をここに持ってきて、再度ヒートアップさせるのも忘れない。
「Vegaの花」、「Bulbs」と、美しくもダンサブルな楽曲を続けて、本編ではコンセプト的にできなかったのであろう楽しげな雰囲気を作り出していました。

そして、セカンドアンコールで披露されたのが「夜明けを前に」。
これまで闇を歌ってきた彼らが、Moranがなくなったとき、Moranが歌う闇で救われてきた人が道に迷わないようにと、光に進んでいくことについて向き合った楽曲とのこと。
Hitomiさんの決意が、鮮やかな照明の演出とともに伝わってきます。
ラストシーンは、オーディエンスとのシンガロングで。
それまでは、前方と後方でオーディエンスに温度差があったかな、と思っていたのですが、ここでは間違いなくひとつになっていたと断言しますね。

アウトロの途中で幕が閉まると、開演時と同じように、メンバーのシルエットが映し出される。
そこから、メンバーが順番に解散を迎えた心境を語り、話し終わるとライトが消えてシルエットからひとりずつ減っていくという演出。
最後まで詩的な表現を貫いたviviさん。
不器用ながら、純粋な気持ちをぶつけたIvyさん。
震えながらも、地声で力強く感謝の言葉を述べたSiznaさん。
活動中に遠い世界に旅立ってしまったZillさんを含めて、過去のメンバーも含めて一人ひとりにメッセージを丁寧に伝えていたSoanさん。
そして、"みんなが泣いてくれた涙が誇りです。"と、皮肉っぽくも本心なのであろう、Hitomiさんの言葉を最後に、映し出されていたシルエットがすべて消えてしまう。
この儚さが本当に鮮やかで、「Bulbs」で打ち出された銀テープの名残が、天井からひらひらと雪のように降ってきたところも込みで、目に焼き付いて離れない光景となりました。


「Party Monster」を演奏していなかったので、サードアンコールもあるのだろうな、とは思ったのだけれど、この光景で終わらせたいと納得できたので、個人的にはここで離脱。
時間も21時をすぎていたし、出てきても2、3曲やれば良い方でしょ、とタカをくくっていた部分もあっての判断だったのだが、まさか7曲もやっているとは誤算でした。
セットリストから察するに、最後の瞬間は盛り上がる楽曲を畳み掛けて、ひたすら等身大のライブをぶつけてきたみたいですね。
MCも面白かったようで、さすがに少し後悔。
その日の占いで、"判断が裏目に出る"と書かれていたことを後から思い出し、"これだったか!"と頭を抱えた帰り道でした。

アンコールも含めて、合計39曲。
「but Beautiful」、「ホロウマン」、「カクタス亜科」…
シングル曲や人気曲でも演奏されていない曲があって、この大ボリューム。
実に4時間半に及ぶ長丁場で、誰が見ても完全燃焼といったところ。
この日のライブがDVDになるようだけど、これ、全編収録されるのだろうか。
サードアンコールやMCまで含まれているなら、見ていない部分を補完する意味でも持っておきたいなぁ、なんて。

そんなこんなで、迎えた夜明けは、体がバッキバキでした。
メンバーのみなさん、Holicのみなさん、本当にお疲れ様でした。


1. 痕跡とキャンバス
2. Element
3. Eclipse
4. ハーメルン
5. White Out
6. 紅差し
7. 暁に燃ゆ
8. 望めないと知る結末に、理由が僕を慰める
9. The Hermit
10. rub
11. Wing or Tail
12. 同じ闇の中で
13. 遥かの青
14. 人間の人間による人間のための恋路
15. 目下の泥濘
16. 明日への剥離
17. 幸福についての尺度
18. Reverse
19. 彼
20. 今夜、月のない海岸で
21. Lyric of the DEAD
22. Maybe Lucy in the Sky
23. Break the silence
24. 浮遊病

en1. 以降、白紙のクロニクル
en2. 皮下に滲む
en3. Fairy Tail
en4. 堕落へと続く偏愛の感触
en5. ロワゾ・ブルー
en6. Vegaの花
en7. Bulbs

en8. 夜明けを前に

en9. マニキュア
en10. LOSER'S THEATER
en11. Stage gazer
en12. Silent whisper
en13. Cello suite
en14. Party Monster
en15. Maybe Lucy in the Sky