COSA・NOSTRA / Kill=slayd | 安眠妨害水族館

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COSA・NOSTRA/Kill=slayd

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1. Solitude
2. Krank
3. Sheltering Heart
4. Ironix
5. CRISIS
6. Higher
7. Libido
8. undertaker
9. Overture
10. HEAT
11. I am enough for my self
12. UNIVERSE
13. Honesty
14. 激しく強く壊れるほどに
15. MARIA

90年代に活躍したKill=slaydのラスト&ベストアルバム。
限定1,000枚、シリアルナンバー付きでのリリースとなりました。

Vo.TOKIさんが現在在籍しているC4でもベストアルバム「ORGA」が発売予定。
本作は、そこへの流れに繋げるために制作されたとのこと。
当時のメンバーで参加しているのはTOKIさんのみで、ゲストミュージシャンとして、C4の盟友、大村孝佳さんがギターで共演しています。

選曲は、メジャー期からの楽曲が中心。
初期の楽曲は「CRISIS」くらいで、オールタイムでバランス良く、という構成にならなかったことには、寂しさがないわけではありません。
しかしながら、当時のアレンジを極力再現する、というコンセプトがあったようで、現代ロックとして聴いても耐えうるレベルのアレンジになっているかどうかが重要だった様子。
確かに、制作側の気持ちもわかるというか、それなら仕方ないか、と。

また、TOKIさんとしては、Kill=slaydでの消化不良感を払拭したいという意図も強くあるようで、もっとも葛藤していた時期の楽曲が増えているということなのかもしれないな。
事実、モラトリアム的で、迷いや憂いをどこかに感じさせるナンバーが多い気がします。
1曲目が「Solitude」というのも、象徴的でしょう。

彼らが活動していたのは、まさに1990年代。
ビートロックにポップさを加えて、メロディアスな要素を強めた音楽性がスタンダードでした。
ハードな楽曲もありますが、シンセの使い方にしても、歌メロの乗せ方にしても、あの頃のJ-POP的な雰囲気。
たとえ初めて聴くナンバーであっても、懐かしさを感じるというリスナーも多かったのでは。
ただし、経験により渋さを増したTOKIさんの歌声が重なることで、その古臭さも味となる。
表情が豊かになったというか、当時の葛藤を乗り越えた精神状態で歌われることで、"伝え方"にも気を配れるようになったのかな、と個人的には解釈しています。

アレンジは原曲通りという楽曲が多い中で、ギターソロ的なフレーズについては、比較的自由に大村さんの個性を出しているのも興味深い。
すべてを大胆にアレンジするセルフカヴァーも良いのだが、土台を変えない前提で再構築されるのも、どこがレベルアップしたのかがわかりやすくて面白いのですよ。
特に、「MARIA」では歌詞が差し替えられた。
ここでは作詞家としての成長を示そうとしたと捉えると、なお楽しめそうである。

音質面でも、綺麗にまとまりすぎてる感はあるものの、聴きやすく改善。
再録やリアレンジ、歌詞の変更まで行われ、オリジナルのファンであっても、聴き比べができる。
適当に寄せ集めたベスト盤とは異なり、クオリティを上げるための努力があちこちに見られます。
間違いなくKill=slaydの入門編にはもってこいの作品ではあるが、発売即日で完売。
物理的に追加プレスは不可能ということで、手に入りにくいものになってしまったのは残念だけれど、それだけ現代でもニーズがあったということがわかったのは収穫だったりして。