花見便り~俺の女唄名曲集~ / 花見桜幸樹 | 安眠妨害水族館

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花見便り~俺の女唄名曲集~【通常盤】/花見桜幸樹

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1. 時の流れに身をまかせ
2. お久しぶりね
3. 夜桜お七
4. 浪花節だよ人生は
5. 津軽海峡・冬景色
6. 舟唄
7. 恋の季節
8. 炭坑節
9. 秋桜
10. ラヴ・イズ・オーヴァー
11. あの鐘を鳴らすのはあなた

ダウトのVo.幸樹が、ムード歌謡歌手としてソロ・デビュー。
本作は、ソロとしては初となるアルバム作品となります。

鬼龍院翔が名付けたという"花見桜幸樹"名義でのソロ活動。
ダウトでも、歌謡曲・演歌調の楽曲は披露していましたが、あくまでバンドサウンドが前提であった。
ソロでは、その縛りもなくなり、本格的なムード歌謡のサウンドメイクとなったことで、ダウトの差異化、V系シーン内での個性化が図られたといったところでしょう。

デビューから半年といたタイミングで届けられた1stアルバムは、歌謡曲のカヴァー集。
"女唄"の歌謡曲にテーマを絞ったことで、バンド時代のカヴァー作品に比べて選曲がベタになってしまった感はあるのですが、持って行きたい方向感はよくわかるのではないかと。

楽曲の良さは言うまでもない。
さすが、10年以上も歌い継がれている楽曲。
ベストアルバムを聴いているような安心感がありますよ。

あとは、そこから何を足せるかというところなのですが、ヴィジュアル系を意識させない本格派のアレンジが裏目に出ている部分もあるのかな。
ロックバンド出身だからこそのサウンドメイクでもなく、原曲の新解釈をさせるようなチャレンジがあるわけでもなく、男声ボーカルが歌っている以外の個性を見つけるのが難しい。
幸樹さんの歌唱力は、インディーズで活動していた頃から比べれば驚くほどの向上を見せているものの、オリジナルと真っ向勝負して圧倒できるわけでもなく、ややイロモノ感が濃くなってしまうというか。

もっとも、オリジナルや、カヴァーをしてきた先人たちと比較しなければ、クオリティは低くない。
「お久しぶりね」や「恋の季節」なんかのギラついた楽曲はハマる。
短調な「秋桜」も、シーンで磨いた感情表現により、こうも胸に刺さるほど歌いこなせるとは。
通常盤にのみ収録された「あの鐘を鳴らすのはあなた」も、壮大に仕上がって、ラストにふさわしいナンバーに仕上がっています。
演歌的な歌いまわしでの弱さに目を瞑れば、V系がムード歌謡を歌うという新鮮さを楽しむことができる作品であることは間違いありません。

最上川司さんのブレイクにより、V系シーンの中でじわじわと高まりを見せる演歌・ムード歌謡ジャンルへの進出。
結果的に、ダウト時代に演歌チャートに殴り込みをかけた実績もあり、第一人者的な立ち位置になった幸樹さん。
このタイミングを逃すわけにもいかないと思いますので、歩みを止めずにやり抜いてもらいたい。
願わくば、オリジナルでのムード歌謡アルバムなんてのも聴いてみたいですね。