Blanc et Noir / VELVET EDEN | 安眠妨害水族館

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Blanc et Noir/VELVET EDEN

¥2,500
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1. Luzifer
2. Toxic queen
3. Jailed prince
4. Misery
5. No.15
6. Goodbye Alice

2015年版ベルベットエデン。
2枚組のフルアルバム、「DOUBLE TWELVE」以来のリリースとなるミニアルバムです。

低音ボーカルを活かした、ゴス要素の強いエレクトロ。
5人編成時代にバンド感を強めた時期はありましたが、やはり"VELVET EDEN"で思い描くのは、こういうサウンド。
音楽性としてのベースは、あるべきところに回帰してくれたな、という印象ですね。

一方で、本作の特徴は、そのうえでロック色を強めてきたところ。
バンドに頼るのではなく、あくまで2人組のゴスユニットとしてロックを意識するアプローチは斬新であり大胆。
色々な編成を経てここまで辿り着いた彼らだからこその音楽性なのだろうな。

地を這うように、ダークな世界観で進んでいく「Luzifer」で幕を開けると、「Toxic queen」ではダンサブルに振り切れる。
ここは、Chroさんが新しい血を入れてくれたな、といったところ。
DADAさんの妖艶な低音ボイスと、アッパーなダンスチューンが混ざり合うと、こんなにも異形なダンスロックに仕上がるのか、と感心します。
構成やメロディは、彼らの楽曲の中ではとっつきやすさがあると言え、序盤にこれを収録したのは正解でしょう。

「Jailed prince」は、全般的にはインダストリアルに進行するのだが、サビの部分では力強く開ける。
ここでの歌唱のメリハリに、DADAさんのポテンシャルを見た。
続く「Misery」は、デジタルサウンドを多用しつつもロック感があるナンバー。
作曲者を見てみたらChroさんということで納得。
従来の良さを踏襲しつつ、新しい扉を開くのに必要だったピースがこうして埋まっていくのを目の当たりにすると、なんだか感慨深くなるものです。

終盤に送り込まれる「No.15」も、その流れに乗ってか、スピード感のある楽曲に。
曲数を進めていくごとに驚いてしまう作品なのですが、新生VELVET EDENは、こんな楽曲もできるのか、とまたも驚かされました。
ギターソロに該当するシンセパートが用意されていたり、昂揚感のあるサビが待っていたりと、王道寄りの構成。
最後に持ってきた「Goodbye Alice」は、タイトルにしても歌詞にしても、意味深である。
帯に書かれている"これまでの物語を継承・展開させることでダークメルヘンの新たな可能性を追求した"という文章を踏まえれば、初期の楽曲とのリンクを否が応でも勘ぐってしまいます。
VELVET EDENらしさ全開の楽曲で、古くからのファンも納得の1曲。

活動再開後、DADAさんが作曲にも絡むようになった影響か、表現力により凄みが出てきたような気がしますな。
従来は、無表情で硬質に歌うイメージで、それはそれでゴシックな世界観にマッチしていたのですが、楽曲の幅を広げる中で歌い方にも柔軟性が出てきたのは、本作における大きな進化ではないかと。

2015年になって、彼らの新譜(しかも全曲が新曲)が聴けるだけでもありがたいのに、活動停止前よりもパワーアップしているのだから恐れ入る。
「Blanc et Noir」。
"白と黒"を意味する作品タイトルは、新たなスタートの"白"と、従来の世界観であるダークな"黒"が混在するという意味なのだとか。
過去の彼らを救い上げつつ、それに囚われることのないサウンドを聴かせる本作にはぴったりのネーミングだと思います。

<過去のVELVET EDENに関するレビュー>
Witch on flames
捨て猫
Street of ALICE
人形娼館