灯陰 / emmuree | 安眠妨害水族館

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灯陰/emmuree
emmuree

1. miss 【drain】
2. ジザスカ
3. 灰色の空の下で
4. I hear the clocks counting down
5. 灯陰 -orange-
6.  「月に溺れる蜜蜂。」
7. instability
8. 弔
9. angel's watercolor
10. ROSES ~骨と薔薇と闇と光~

2010年にリリースされたemmureeの2ndアルバム。
この段階で、既に10年以上のキャリアを誇っていました。

結成は1998年なのですが、活動初期の音源があまり残されておらず、ようやく発表された1stアルバムが2007年。
そういう意味では、ベテランの風格を醸しつつ、まだまだアルバムにおけるマンネリ感はなく、むしろ新鮮味があるという、彼らの活動ペースならではの味わいがある作品に仕上がったと言えるでしょう。

長い時間軸の中で、多少の変化はある。
救いのないほどの暗い曲一辺倒ではなくなってきており、彼らなりの光が見えてきたのが本作の特徴だろう。
暗黒に落ちていく場面と、うっすらと差し込む光に浮遊する場面。
表題曲である「灯陰 -orange-」には、その感覚がドラマティックに表現されています。

一方で、待望の音源化となった「miss 【drain】」や、オムニバスアルバムに収録されていた「ジザスカ」のリテイクと、初期の楽曲でスタートする構成により、軸がブレていないことを示しているのがニクい。
上述の「灯陰 -orange-」を含む新曲群にしても、オールドファッションのV系シーンを再現するようなアプローチが継続されており、既存の楽曲ともうまくかみ合っている。
彼らのマニアック性とメロディアスな部分が融合した「月に溺れる蜜蜂。」が、個人的にはお気に入りの1曲です。

2010年という時代に、同期を使わず、生音だけ。
エフェクトをかけて耳をつんざくような強烈なギターサウンドを前に出し、リズムコンビは世界観を構築することに専念。
あとは、フロントマンである想さんの表現力で勝負するというシンプルなアレンジであるが、こんなにも濃厚になるのだから素晴らしい。
音の隙間に、ロマンを感じることができるのですよ。

ネックなのは、音質面だろうなぁ。
部分的に割れているし、1stのほうがクオリティが高かったような。
それも時代感の演出と捉えれば趣深くはあるのだが、せっかく良質な音楽が詰まっているのだから、もっと繊細なサウンドを感じ取りたかったのが本音です。

ずっしりとした精神的な重さがあるのは相変わらずなので、聴きたくなるタイミングは限られますが、名盤には違いない。
じっくりと成熟させて納得の作品を発表する彼らのスタイルは、CDをリリースできるのが当たり前の時代だからこそ、考えさせられるものがありますね。

<過去のemmureeに関するレビュー>
EMMURE´E
【acute sense】
真っ赤な林檎
灰色