KINGDOM / D | 安眠妨害水族館

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KINGDOM(通常盤C-TYPE)/D

¥3,240
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1. Blood Moon
2. DARK WINGS
3. Mother Doll
4. 月の杯
5. 血に濡れた一角
6. 断罪の銃士(ガンナー)
7. SECRET HANGAR
8. アネクメネ(Instrumental)
9. 猿王の腰掛け
10. 風に嫁いだバイラオーラ
11. 微熱~雨の幻想曲(ファンタジア)~
12. Another Kingdom(Instrumental)
13. 黒薔薇の騎士
14. Rosenstrauss
15. 終焉~宇宙(そら)への回帰~

「VAMPIRE SAGA」以来、3年半ぶりとなるDのオリジナルアルバム。
メジャー復帰後初となるフルレンスです。

A-TYPEはMVが入ったDVDと、「終焉~宇宙への回帰~」のインストを収録。
B-TYPEは豪華ブックレットが付属し、「終焉~宇宙への回帰~」のオーケストラバージョンを収録。
C-TYPEはCDのみで、インスト曲となる「アネクメネ」と「Another Kingdom」が追加収録。
僕は、価格設定や収録内容から、C-TYPEを購入しました。

本作は、全曲において"ヴァンパイアストーリー"がテーマに据えられている。
これまでも、このコンセプトを意識した楽曲を数多く発表している彼らですから、集大成ということになるでしょうか。
2014年を持って活動休止期間に入るということもあり、少なくとも総括的な意図は含んでいそうです。

さて、内容ですが、バシバシとV系リスナーのツボを刺激するナンバーが目白押し。
ASAGIさんがコンポーズした楽曲が多いこともあってか、従来のDのサウンドに比べてメタル色が控えめになっており、世界観を重視したメロディアスチューンが中心になっていますね。
全体的に疾走感があって、キャッチーなフレーズも随所に見られる。
本格派メタルも良いのだけれど、これくらい王道さのあるアプローチも織り込んでくれたほうが聴きやすさは増しますし、ASAGIさんのボーカルにはマッチする気がします。

もちろん、先行シングル「月の杯」のように、シンフォニックメタルをベースにした楽曲もコアな部分に配置されていて、今までの音楽性をガラっと変えたという印象は与えません。
様式美はしっかり継続しつつ、メロディのインパクトや、雰囲気モノによる世界観の構築といったところにまで気を配ったことにより、ストーリーテリング的な手法がピタリとハマるファンタジックな作品に仕上げてきたと言えるのでは。

「断罪の銃士」、「Rosenstrauss」、「DARK WINGS」、「月の杯」と、シングルからの収録も多いが、アルバム曲が9曲とボリュームも充実。
このバランスであれば、アルバムとしての流れを作りながら、シングルのポテンシャルも活かすことができ、コンセプチュアルな中にもメリハリが生まれます。

音楽的には、もっとコンパクトにして引き締めることも可能だったのでしょうが、本作については、世界観の壮大さ、濃厚さを最優先にしたのが勝因であろう。
長編大作のファンタジー映画に浸ったような聴きごたえ。
多少疲れてしまっても、その疲れさえ心地よかったりするのだ。
なお、C-TYPEは、一息つきたいところでインストが挿入されるため、聴き疲れも緩和。
飽きが来るのを防ぐ工夫もばっちりですな。

バラエティが豊富で、全曲がシングルでもおかしくなさそう。
そのうえで、構成力が抜群。
「猿王の腰掛け」などは、単体で聴いたらギャグにも聴こえてしまいそうな歌詞ですが、この流れで聴くと、必然であるようにも思えます。
ラストの「終焉~宇宙への回帰~」まで、耳が離せない。

10周年のキャリアを見せつけられました。
これで活動休止とはもったいない気がしますが、ここまで綺麗に締めくくられると、次のコンセプトまでの充電期間として割り切るしかないな。
しばらく離れていたというファンにも聴いてみてほしい一枚。

<過去のDに関するレビュー>
Nyanto-shippo "De"!? (D featuring 森の仲間達)
名もなき森の夢語り
The name of the ROSE
闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア
Alice
Paradox