名もなき森の夢語り / D | 安眠妨害水族館
名もなき森の夢語り/D ¥2,520 Amazon.co.jp 1. 光の庭 2. 名もなき森の夢語り 3. Canis lupus 4. 知られざる子供達 5. 三角お屋根と哀れな小熊 6. Like a Black Cat ~無実の罪~ 7. 春の宴 8. 象と人と蟻と… 9. 名もなき森の夢語り (Voiceless) 命の源の象徴でもある「森」をコンセプトにしたミニアルバムとのこと。 Dにとって、流通に乗るアルバム作品は、なんだか久しぶりですね。 Aタイプ、Bタイプには、それぞれ別のDVDが付属、Cタイプに、ボーナストラック「象と人と蟻と…」、および「名もなき森の夢語り」のインストバージョンを収録。 今年発売したシングルを収録すれば、フルアルバムとしてのリリースも可能であったのに、あえて新曲のみのミニアルバムにしてきたあたりは、世界観へのこだわりを感じます。 インストである「光の庭」に続いて、表題曲に突入。 MVが制作されていることからも、この曲がリードトラックになるのだけれど、これがまた、Dというバンドを凝縮している内容に仕上がっている。 耽美的で荘厳なアカペラからスタートし、銃声のサンプリング音が鳴り響くとともに、ゴージャスなメタルサウンドに。 コンセプトを意識してか、神秘的なサウンドワークに特化していますが、この、やりすぎるくらいのゴテゴテ感がたまりません。 また、Vo.ASAGIさんの艶やかな声質を活かしたメロディアスパートと、長い活動の中でだいぶサマになってきたシャウト&デスヴォイスパートを、上手く織り交ぜた構成にも、彼らの強みをすべて注ぎ込んできたなと、ただただ感心させられた。 「Canis lupus」では、更に神秘性を増して、浮遊感があるミディアムナンバー。 この手の白系チューンだと、hydeライクなASAGIさんの歌い癖は相変わらずですが、幽玄な森の奥深くへ入り込むような前半パートを引っ張っていくには、このタイミングでの収録は納得です。 その次の「知られざる子供達」も、ミディアムバラード。 ASAGIさんの描く世界観は、従来から、童話をモチーフにしたようなものは多かったのですが、そのスタイルは、森というテーマに、ズバっとハマりますな。 巧みなファルセットを駆使しつつ、歌唱力のレベルアップ、表現パターンの充実を実感させる1曲。 再びテンポアップし、勢いを出していく位置に配置されたのは、「三角お屋根と哀れな小熊」。 ハイスピードな曲調の中でも、複雑なフレーズを弾きこなしたり、独特な譜割に挑戦したりと、テクニカルな演奏が堪能できる。 良い意味で、この曲は癖になります。 クラシックに通ずる様式美も意識されており、物語性も十分とあれば、これ以上何を期待しようか。 スピード感が増したところで、「Like a Black Cat ~無実の罪~」を畳み掛けていくところも、わかっていらっしゃる。 間奏のギターが格好良く、ストレートな疾走メロディも、高揚感を煽ります。 本編のラストは、「春の宴」で、しっとりと。 音使いが、どことなくおとぎ話のようで、メルヘンチックだなぁ。 メッセージ性も強く、森をテーマにした物語の裏に、もっと直接的なテーマがありそう。 なんとなく、意味深な終わり方だと感じました。 Cタイプでは、民族的な雰囲気を増して、アクが強い「象と人と蟻と…」が追加収録。 らしい楽曲だとは思いますが、締めにふさわしいナンバーだという気はしないかな。 その点では、最後に表題曲のインストが入って、エンドロール的に終わるのは正解かも。 ミニアルバムという、曲数が限られた媒体の中で、ゆるい曲が多めに選曲されているのは意外でしたが、森が持つ父性とでも言いましょうか、すべてを許してしまうような大きさを表現するには、きっとこれで良いのでしょう。 激しい曲が好きな人には、物足りない部分はあるかもしれませんが、久々に、濃い作品を送り込んできたな、と。 最近の傾向からは、どんな音楽性が繰り広げられていくか想像しにくかったのですが、考える前に、音を聴くべし。 どんなモチーフを使っても、コテコテな世界観に染め上げてしまう、ASAGIさんの本領発揮を見ることができますよ。 <過去のDに関するレビュー>Alice Paradox
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