キラーチューン / クレイドル | 安眠妨害水族館

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キラーチューン/クレイドル

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1. 自分汚染
2. キラーチューン
3. 精神崩壊物語
4. M.C.T
5. オレンジハート
6. kisekinohito

広島を拠点に活動しているクレイドル。
全国流通としては初となった、2013年にリリースされたミニアルバムです。

楽曲コンセプトは、"ハイテンション・ソリッド・ポップ"とのこと。
初期の作品は、"平成歌謡ロック"をテーマにしていたはずですが、イメージチェンジを図ったということなのかな。
もっとも、当初の方向性は、先輩バンドであるスカーレットや、その音楽性の源流であるMERRYの影響を色濃く受けすぎてしまっていたので、自分たちの音楽性を見つけたということであれば、必要な転換であったと思います。

実質的にはSEとなる「自分汚染」と繋がるように、表題曲である「キラーチューン」へ。
ギラギラしたデジタルサウンドと、軽めのタッチのノリ。
初期の彼らしか知らなければ戸惑いがあるのだろうけれど、代表曲になっていきそうなポテンシャルを感じます。
同期バリバリ、ポップでキャッチーなサビ、というと、現代風と捉えられそうなのだが、なんとなく、懐かしい雰囲気もある。
サウンドをパワーアップされた、90年代ダンスポップと言ってもいいのかも。

その流れは、「精神崩壊物語」にも引き継がれますな。
タイトル通り、歌詞にはややダークなフレーズも使われているのだけれど、メロディのベタベタなポップさ。
イメージチェンジで現代的に、というのは、よく見かけるのだけれど、また面白いところにスライドしてきたというか。
この辺り、地方バンドならではの進化なのかもしれません。

やはりデジタルポップ路線ながら、しゃがれ声で歌うことで、荒々しさ、激しさを出そうとするのが「M.C.T」。
演奏をハードにするのではなく、歌唱部分でのアプローチでイメージを変えようとするのは斬新な気もします。
続く、「オレンジハート」は、90年代ポップス感を押し出すミディアムチューン。
ヴィジュアル系特有の刺々しさはなく、甘く切なく柔らかい。
こういう引き出しも持っているのだな。

ラストの「kisekinohito」は、"ハイテンション・ソリッド・ポップ"に帰結するべく集大成的なナンバーを持ってきたのかな。
本作中、もっとも表面的にもハードな演奏となっており、スピード感もあり。
マイナーコードで疾走する王道なサビからギターソロへの移行も、ばっちりV系リスナーの耳に刺さって、個人的には「キラーチューン」よりもキラーチューンだったり。

ギタリストの脱退、ドラマーの加入という体制の変化もあり、垢抜けてきたところがあるクレイドル。
この路線で結果が出るかは未知数ですが、現在のシーンにありそうでないところを突いてきており、化ける可能性はありそうです。
首都圏と比較して、パイの少ない地方バンド。
コテコテのコンセプトで行くよりも、一般層にも受けやすい表現を試行錯誤した先に、本作の音楽性に辿り着いたのであれば、興味深いですね。

全国流通のCDをコンスタントにドロップできるようになったので、次は、全国展開を見据えて、どういう戦略をとってくるのか。
地方からの勢いが増してくるのは、シーンにとっても望ましい。
しっかりと力をつけてもらいたいものです。

<過去のクレイドルに関するレビュー>
ドク裁純愛記/哀愁参道