LINK / Tinker Bell | 安眠妨害水族館

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LINK/Tinker Bell

¥2,097
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1.Pendulum
2.Misguided
3.Touch for Real
4.LINK

大阪を拠点に活動していたTinker Bellのミニアルバム。
1997年の作品です。

ポストLa'cryma Chrisitiを期待されていた彼ら。
幻想的でオリエンタルなサウンドと、高い演奏力。
展開が多く、プログレ志向の強い音楽性は、確かに影響を受けているのでしょうね。

まず、「Pendulum」で、スタートダッシュを決める。
疾走感のある王道ビートロックの形をなぞってはいるのだけれど、そのアレンジは繊細で美しい。
構成としてはストレートに見えて、コロコロと表情を変えていく間奏のギターソロも秀逸。
ときにヒステリックに、ときに優雅に、世界観を作り上げます。
ラストシーンの展開も気持ち良いな。

スラップベースを用いたイントロが耳に残る「Misguided」は、ファンクとロックを融合させたような楽曲。
エフェクトをかけたボーカルや、マニアックなフレーズを弾き倒すギターなど、ダークな雰囲気を纏っている中で、とにかく、テクニカルさが際立つ。
Vo.MADOKAさんの声にはやや癖がありますが、表現をしつつも安定感があり、実力派であることがこれを聴くだけでも理解できるかと。

壮大さのあるミディアムナンバーは、「Touch for Real」。
クリーントーンのギターが美しく鳴り響き、ゆったりと懐の深いサウンドを奏でます。
前の2曲に比べて、展開としてはストレート。
わかりやすいナンバーを、このテンポで演奏してしまうと、そうていも飽きてしまいそうなところなのですが、最後まで新鮮さを保ちつつ聴かせきるというのも、技術力があるからこそなのだろう。

ラストは、表題曲である「LINK」。
1曲目同様、V系の王道を切り取ったメロディやサウンドが詰め込まれているのだけれど、「Pendulum」と比較して複雑な切り替わりを繰り返すため、ややとっつきにくさはあるのかもしれません。
ただし、そんなことはTinker Bellのマイナス点にはなり得ない。
この爽やかさを維持しつつ、玄人好みのプログレッシブな展開をこなしてしまうのだから、恐ろしいものです。

現代においては、あまり語られることがなく、地味な立ち位置のバンドなのかもしれません。
しかしながら、楽曲のクオリティは高く、激しくなくともバンド感は出せるのだぞ、と言いたげなアレンジセンスは抜群でした。
歌詞には時代を感じるものの、これを埋もれさせるには、もったいないだろうよ。

リリースされた音源が少ないのも残念。
このミニアルバムが、もっとも手に入れやすく、値も張らないCDとなっていますので、気になったのであれば、購入を検討してみてはいかがでしょうか。