ENIGMA / DEATHGAZE | 安眠妨害水族館

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ENIGMA/DEATHGAZE

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1. ENIGMA
2. DEAD BLAZE
3. ALLURE
4. NIGHTMARE
5. DRAIN AWAY
6. SEVENTH HEAVEN
7. THE UNDERWORLD
8. BREATH
9. SADISTIC SMILE
10. FEAR
11. READY GO

DEATHGAZEの2年ぶりとなるフルアルバム。
通産で6枚目となります。

攻撃性に特化した「CREATURE」、ベスト盤と続いて、次はどう攻めるかといったところで送り込まれた本作は、彼らのメロディアスな部分を押し出したような仕上がり。
邪悪極まりないエフェクト・シャウトをまくし立てる「ENIGMA」、スピード感を残しつつ、ハードコアにゴリゴリ攻める「DEAD BLAZE」と、導入部分こそ激しさを追求していくのですが、「ALLURE」以降は、キャッチーさすらあるメロディの良さを活かしたナンバーが続きます。

とはいえ、メロディアス=マイルドになったというわけではないのがポイントでしょう。
ポップに丸くなるどころか、前のめりに突っ込んでくるドラムの勢いは増していて、ベースも更に重く太くなった印象。
ボーカルとギターがメロディアスに振れている分、DEATHGAZEのラウドなイメージはリズム隊で死守、と言わんばかりのメタルコアっぷりを見せ付けていますな。

また、Vo.藍さんの歌唱にも変化があった。
基本的には、スクリームとクリーンの使い分けのみ。
クリーン部分については、ハードかつスピード重視の音楽性であることも相まって、表情に乏しかったところがありました。
本作でも一辺倒を脱したというレベルには至っていないのかとは思いますが、「
SEVENTH HEAVEN」のようなラフに吐き捨てるような歌い方を披露。
こういう引き出しもあるのか、という驚きを与え、アクセントとして効いています。

終盤では、再び激しさを増し、スラッシーな「
SADISTIC SMILE」、ダークなメロデスチューン「FEAR」と攻撃性が高められているので、こちらも聴きどころ。
やはり最後は凶悪に締めるのか、と思わせた時点で、彼らの勝ち。
ラストを飾る楽曲として持ってきたのが、爽やかさ、明るさを感じられる「READY GO」だったから、またも驚かされましたよ。
この路線、新境地として、今後のスタンダードになっていったりするのだろうか。

もったいないのは、なかなかの作品であるにも関わらず、過去の作品が刺激的だっただけに、地味に感じてしまうこと。
荒削りであるも、初期衝動の塊であった「AWAKE-evoke the urge-」や、とにかくハードさだけに特化して、彼らの強みであるメタルコアサウンドを存分に発揮した「CREATURE」と比較して、メロディを押し出すというアプローチは、インパクトには欠けてしまうのも事実。
彼らの作品としては個性的ですが、シーン全体を見たときに、彼らの個性が薄まったという見方ができなくもありません。

なんとなく、前作、前々作と、本作を分解して、バランス良く再構築したら、完璧な名盤が3枚出来上がりそうな。
楽曲レベルでは、かなり良い曲が揃っているのだ。
そういう意味でも、そろそろ、飛び道具的なアルバムではなく、集大成としての作品にも挑戦してもらいたいものですね。

ちなみに、シャウトにエフェクト加工を施すパターンが増えたのは、クリーンパートとのメリハリを意識してなのかなぁ。
やはり、彼らが求められているのは、硬派でラウドなハードコア。
「ENIGMA」のように、それそのものを武器にしてしまっている楽曲ならともかく、本来の迫力を殺してしまいかねない小細工は不要だった気がしてしまいます。

<過去のDEATHGAZEに関するレビュー>
CREATURE
THE CONTINUATION
AWAKE-evoke the urge-