THE CONTINUATION / DEATHGAZE | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

THE CONTINUATION/DEATHGAZE
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1. 闇に雨 腐敗した世界

2. genocide and mass murder

3. abyss

4. 死桜

5. メメント モリ

6. ディエス イレ

7. 死臭

8. ラブソング

9. 「294036224052」

10. リヒトゾイレ

11. insult kiss me

12. DEAREST

13. amends (piano ver.)


現代における名古屋系の代表格、デスゲイズのセルフカバーアルバム。

2003年の活動開始から、紆余曲折が多かったバンドで、メンバーチェンジが絶えないのが気がかりですが、だからこそ、あの藍ちゃんがボーカルになるなんて奇跡が起こったわけですよね。


藍ちゃんといえば、もともとは御伽というネタバンド出身ということもあり、丸々とした体形でロリータをやるという強いハートが売りだったわけですが、今では、すっかり硬派なバンドマン。

ほっぺに「あいです」なんてメイクをしていたKeiL時代が懐かしい(笑)

もともとはべーシストとして結成時から在籍しているわけですが、2代目ボーカル、宗さんの脱退を契機にボーカルへコンバート。

しかも、なかなかどうして、これが様になっているってことで、今のスタイルに定着します。

最近ハマった若いバンギャルさんは、彼がネタキャラだったなんて知らないのかもしれませんね。


本作は、初代&2代目ボーカル期に発表された楽曲を、現在の体制で再録するという試み。

コンセプトとしては、cali≠gariの「再教育」みたいなものでしょうか。


普通、バンドの顔でもあるボーカルが変わると、なんだか違和感があるのが当たり前。

しかしながら、過去のテイクを聴いたことがあるうえで聴いても、あまり異質な印象を受けないのが、この作品の珍しいところ。

デスヴォ満載のハードなパートも、メロディアスに歌い上げる部分も、あぁ、デスゲイズだねってなノリで聴けてしまうから面白い。

歌唱力も、十分とは言えないまでも、きちんと歌えています。

特に、デスヴォイスの迫力は、本職のボーカリストを凌駕してしまっている。

ヒョロヒョロした歌い手が多いこのシーン、あのがっしりした体形で吠えるダイナミックさは、確かにこのバンドに必要だったのかもしれません。


個人的に、最近多くなってきているラウド、ニューメタル系のバンドは、やや食傷気味なんですよ。

音に隙間がなさすぎて、繊細さに欠けるし、メロディもパターン化されてしまう。

何よりも、日本語が乗りにくい洋楽ライクなシャウトは、オリジナリティを出すのが難しく、その中でインパクトがあるバンドなんてなかなか生まれません。

流行れば流行るほど、陳腐化してしまう悪循環の中に来ているな、というのが、このジャンルへの正直な感想。

もっと、わびさびを感じたいのです。


ただ、このデスゲイズについては、ついつい聴いてしまう正統派ラウドバンドのひとつ。

勢いで押し通す曲もあれば、ミクスチャー的にサビがメロディアスになる曲もあって、ラウド系バンドが陥りがちなワンパターン構成にはなっていませんし、そのメロディも、キラキラしている狙いすぎなものではなく、90年代名古屋系を彷彿とさせる、繊細に気持ち悪い艶めかしさがあるのです。

案外、デスヴォ一辺倒な曲は少なく、緩急のメリハリがあるから、アルバムになっても飽きずに、疲れずに聴くことができる。


分厚く骨太な重低音を響かせながら、ピアノやギターで繊細なフレーズを紡いでいるのも、注目すべきポイントですね。

音の洪水の中でうっすら重なる、触ったら壊れそうなアルペジオは、ときおり、洋楽っぽくなってしまいがちなラウドミュージックの中にも、和の風を運んできてくれる。

もちろん、ズシズシ畳みかけるハードな演奏があってこその雰囲気作り。

硬派なスタイルも相まって、男受けが良いのは納得のところです。


実質、ベストアルバムですし、デスゲイズに興味を持った人が最初に手にするCDとしては、かなりおススメの一枚。

また、単なる再収録ではなく、現体制でのリレコーディングとなれば、これまで音源を揃えていたファンであっても、買って損した感は少ないのではないでしょうか。

葉月時代の曲はレア化してしまっていることもあり、気軽に曲を振り返ることができるようになったという意味でも、貴重だったのかもしれませんよ。