灰の帝國 / 梟 | 安眠妨害水族館

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灰の帝國/梟


1.胎動
2.灰の帝國

列島空襲 民衆反乱 粛清虐殺 首都壊滅・・・
新潟バンド、梟の1stシングル。

和風バンドは数多くあれ、なかなか面白いアプローチをしていた彼ら。
戦時中の重苦しい空気を、ラウドなサウンドに乗せて表現するようで、似たようなバンドがありそうで思い浮かばない、絶妙なラインを突いてくる印象です。

「胎動」は、冒頭に記載した四文字熟語の羅列がインパクト大。
ひとつひとつは物騒な単語に過ぎない言葉も、畳み掛けることで呪術的な響きになる。
お経と言うべきかラップと言うべきか、よくわからないけれど、とにかく禍々しいのですよ。
これが、楽曲の要所要所で登場してきて、重要なフックになっている。

デスヴォイスの掛け合いがあったりと、全体的にはノリの良さもあるラウドチューンなのですが、そこにドロリと湿った空気が漂っているのが彼らの世界観。
お経的なメロディラインが、そんな彼らの強みを増長しているので、導入としてはもってこいの楽曲に仕上がったのでは。

表題曲である「灰の帝國」も、その流れは引き継いで。
全体像としては、「胎動」よりもテンポを落とし、和風ダーク色を強めているのですが、ラップ調のボーカルパートと、宗教的なメロディとのメリハリにより、更にギャップを際立たせる。
穏やかというわけではないのだけれど、悟ったような静けさも感じられ、なんとも不思議な聴きごたえがあります。
お盆シーズンにはもってこいかも。

残念ながら解散してしまい、知名度が全国区になることはなかったけれど、地方の優良マイナーバンドは、見つけたときの掘り出し物感といったら。
コアなファンの中では、口コミで広まりつつあっただけに、もう少し活動が続いていたら、もう少し早く存在が知られていたら、歴史は変わっていたかもしれません。

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国家主義