地獄の三夜 第二夜「脱皮」@Zepp Tokyo(2014.4.13) | 安眠妨害水族館

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黒夢 The second coming of 1994 『地獄の三夜』。
1994年に行われた伝説のライブを、20年後となる2014年に再演するという、コンセプトライブです。

1日目の『生前』は、「中絶」、「生きていた中絶児...」からの選曲。
2日目の『脱皮』は、「亡骸を...」からの選曲。
3日目の『奈落』は、「迷える百合達」からの選曲を中心とした構成になっているとのことで、これは一体どうなることか、と。

残念ながら、諸々の都合上、第二夜しか行けなかったのですが、三夜とも見るべきなんだろうな。
この演目の続きを見たい。
伝説を、自分の目で完結させたい。
そんな想いに駆られるライブでした。

まだ名古屋、大阪での公演も残っていますので、ネタバレを気にされる方は、これ以降は後日にしたほうがよいかもしれません。


1.亡骸を
2.DANCE 2 GARNET
3.JESUS
4.賛美歌
5.終幕の時
6. Bass Solo
7.Decoy(DEAD END)
8.If
9.IN SKY
10.十字架との戯れ
11.MISERY
12.狂い奴隷
13.S・A・D
14.狂人
15.親愛なるDEATHMASK

en1. UNDER...

開花の響(SE)


幕が開くと、ステージ中央に配置された十字架や棺桶といったセットに目を奪われる。
突き詰めるところまで初期黒夢の世界観を追求したら、という妄想でしかなかった景色がそこに広がっており、この時点で鳥肌が立ちました。
しかも、そこで演奏されるのは、「亡骸を」。
デカダンスが香るアンダーグラウンドなサウンドが、本人の声、本人の演奏で、こんな大きなステージで再現されるのだから、感極まってしまうのも、無理がない。

衣装は、喪服をモチーフにしたような、黒尽くめのもの。
清春さんは、それにモーニングベールを被っており、なんとも背徳感のある色気を漂わせていました。

「DANCE 2 GARNET」、「JESUS」と続く序盤は、ライブ映えするポップな一面がある楽曲を披露しているように見せつつ、実はアングラな方面へ誘うようなアプローチ。
「賛美歌」や「終幕の時」に辿り着く頃には、すっかり清春さんのパフォーマンスの虜になっており、演劇の舞台に魅了されるかのごとく、食い入るように見惚れていました。
世代的に、黒夢と言えば、パンキッシュで激しい、というイメージも強かったのですが、内面から抉る世界観への演出をさせても、一流のバンドなのだなぁ、と改めて痛感。
煙草に火をつけたり、闇の向こう側を覗き込むような仕草をしたり。
MCを挟まず、SEや語りで曲を繋ぐ手法も、その間の立ち振る舞いも、ひとつひとつが格好良いのです。

前半戦を終えたところで、人時さんを除くメンバーが一旦退場。
ベースソロが披露されます。
数曲、打ち込みのSEに合わせてベースプレイを披露すると、最後は、ベースオンリーで高速のフレーズを奏でるコール&レスポンス。
一言も言葉を発しないのに、これを成立させてしまうあたり、やはり、この人も一流のベーシストなのだ。

再び登場すると、衣装が変わっている清春さん。
頭にはバンダナが巻かれ、白いインナーに黒いジャケット。
いかにも初期!な風貌なのですが、これがサマになる清春さんのスタイルはおかしい。
美しすぎるだろ、これは。

DEAD ENDのカバーから再開した後半戦は、攻撃的なナンバーが中心。
前半戦では、演じる、魅せるといった言葉がふさわしかった清春さんが、今度は、会場を巻き込むようなライブをしている、といった印象。
アグレッシブに動き回り、ときには煽りも入れていく。

特に、「十字架との戯れ」でのテンションの高まりは感動モノでした。
まさか、2014年になって、十字を切る清春さんを見ることができるとは。
オーディエンスのノリとしては、古株ファンが多いとはいえ、さすがにこの頃をリアルタイムで見ていたという人はそこまで多くなかったと見え、一緒に十字を切っていたのはまばらでしたが、それでも、空気が変わるというか、ヒートアップするというか。
格好良い、以外の言葉が見つかりません。

「S・A・D」、「狂人」、「親愛なるDEATHMASK」と、とにかく激しくまくし立てて、本編は終了。
「狂人」では、ダイバーが発生していましたな。
ここで、印象に残ったのは、この楽曲の終了後でしょうな。

清春さんが、人差し指を口元にあてる。
興奮そのままにメンバーの名前を叫んでいたオーディエンスが、これを合図に静まっていく。
そこで、清春さんが一言だけ。

「東京・・・皆殺しだ!」

放送禁止用語連発の「親愛なるDEATHMASK」になだれ込みます。
この手の煽り、現代ヴィジュアル系においても陳腐化していると言えるほどスタンダードなものではありますが、安易に乱発せず、ここぞというときに持ってくるのだから、素直に受け止められる。
この日は、多くの若手バンドマンも集まっていたと思われますが、こういうところ、きちんと持ち帰って行ってほしいものですね。
時代がどのように作られていったのか、それを効果的に魅せるにはどうすればいいのか。
すべての答えがここにあると言っても過言ではなかった。

アンコールは「UNDER...」。
アルバム、「亡骸を...」の最後の楽曲ではじまり、最初の曲で終わるという構成だったわけですな。
これが終わると、第三夜へと繋がるのであろう、「開花の響」が流れ、パントマイムのような仕草を見せた清春さんが、最終的には動きを止めて、『脱皮』は完了。

ちなみに、カーテンコールもありました。
先ほどまで、隙のないステージを見せていた清春さん、人時さんが、笑顔でオーディエンスからの拍手に応える。
このギャップも、あざといなぁ。

いやぁ、第三夜を見れないのが本当に悔しい。
どうしても来れなかった地方の方や、多忙の方も多かっただろうし、そういう人も気持ちは同じなはず。
これはですね、是非ともDVD化を。
映像化をお願いします。

圧倒。
圧巻。
これは伝説の再現ではなく、伝説そのものである。