The name of the ROSE / D | 安眠妨害水族館

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The name of the ROSE(繭月の棺Ver.)/D
¥3,780
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1. Day Dream
2. GOD’S CHILD
3. 闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア
4. Art de la piste
5. 狂人舞踏譜
6. Hourglass
7. Ever after
8. 悪夢喰らい
9. 黒い花園
10. Sleeper

2005年にリリースされたDの1stフルアルバム。
前任ベースの突然の脱退があり、レコーディングでは、プロデューサーの加瀬氏がベースを担当しています。
初回盤は、それぞれ違う内容のDVDが付属した2種類。
これの完売を受けて、入手困難であった「白い夜」、「月夜の恋歌」、「繭月の棺」をボーナストラックとして収録した通常盤が発売されています。

幻想的な「Day Dream」でスタート。
所謂白系といった楽曲で、壮大さのある幕開けです。
Vo.ASAGIさんの歌い方には、ラルク意識が見え隠れしますが、ご愛嬌。
ディストーションがかったギターから始まる「GOD'S CHILD」へ繋げていきます。
その「GOD'S CHILD」は、彼ららしく、宗教観のある内容。
ハードな展開から、テンポを落とし開けていくサビへの移行は、ドラマティックと言える。
音の密度にメリハリをつけたのは、工夫なのかな。
サビでの物足りなさにもなっているのだけれど、そこは一長一短。

インパクトがほしいところで、話題性抜群だったシングル「闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア」。
やはり、この楽曲の派手さや衝撃度は凄まじい。
もったいないのは、それが特出しすぎていて、アルバムとしては浮いてしまうことだなぁ。
これを馴染ませるには、相当力の入ったコンセプト作品を作り上げなくては無理だろうけれど。

「Art de la piste」は、淫靡な雰囲気があるミディアムナンバー。
歪んだギターで弾いたフレーズを、再びオルゴールの音で繰り返す間奏が凝っている。
「狂人舞踏会」は、タイトルにドキドキさせられた。
世界観としては、前の曲と繋がっているのでしょうか。
激しくハードに。
しかしながら、一筋縄ではいかない複雑な構成。
シャウトでまくし立てるパートと、クリアな声でポップなメロディを歌うパートが隣り合わせになるのが面白いです。

折り返し地点で収録されたのは、「Hourglass」。
一転して、再び真っ白なイメージの楽曲で、仕切り直しといった印象もありますな。
アコースティックギターが効いている。
そして、「Ever after」の疾走感。
ここで、これが入るのは気持ち良いですね。
こってりと煮詰めたような楽曲が多い中で、シンプルでストレートな、この手のメロディアスナンバーが入ってくると、開放感が増します。

へヴィーでダークな「悪夢喰らい」、アコースティック調で進行する「黒い花園」と、ラストに向けて歩調を整えると、本編のラストは、「Sleeper」。
サビから始まり、サビの応酬がフェードアウトして終わっていく、とにかくサビを押し出した形の構成は、Dの中では珍しいのではないかと。
他のどの楽曲も、聴き所があらゆるところに散りばめられていて、総合的に完成されたような楽曲という印象だったのだけれど、これは違う。
サビのために、Aメロがあり、Bメロがあり、間奏がある、そんなイメージなのです。
繰り返しが続くので、ややクドいくらいなのですが、ラストシーンがフェードアウトしていくと、もっと聴きたかったと思ってしまうから不思議なものだ。

良いアルバムには2通りある。
出すところ、引くところのバランスが良く、総合演出としてまとまっているアルバム。
もうひとつは、どの楽曲にもパワーを持たせ、ベストアルバムを作るくらいの意気込みで作り込まれたアルバム。
前者には、ある程度セオリーがあるものだが、難しいのは後者。
主張のベクトルがバラバラだと聴きにくいだけだし、詰め込みすぎても飽きてしまう。

そのうえで、本作は後者の良作ですね。
現在のDと比較すれば、甘い部分もあるのでしょうが、丁寧に作り込み、世界観の徹底も完璧でした。
"闇薔薇"が、もっと作品の一部として馴染ますことができていたら、間違いなく名盤と呼べただろうに。

<過去のDに関するレビュー>
名もなき森の夢語り
闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア
Alice
Paradox