勝手にしやがれ / KYOKUTOU GIRL FRIEND | 安眠妨害水族館

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勝手にしやがれ/KYOKUTOU GIRL FRIEND
 

1.放送禁止のブルース
2.勝手にしやがれ
3.完全犯罪
4.罠
5.夜光虫
6.拝啓、売国奴の皆様 靖國の空が哭いています
7.サヨナラセカイ
8.縄と拡声器とヒロイン
9.闇を嗤え_警告
10.堕落論
11.依存
12.樹海

KYOKUTOU GIRL FRIENDが2010年に発表した1stフルアルバム。
初回盤1,000枚をあっという間に完売させ、近年V系インディーズシーンには珍しく、3rdプレス盤までリリースされたロングセラー作品です。

"不謹慎なカリスマ"を自称するVo.林田倫堕率いる4人組。
ハードコアなヴィジュアル面同様、社会のタブーやアングラな世界をテーマにした過激な歌詞をパンキッシュなサウンドに乗せて送り込むハードボイルドなスタイルにはインパクトあり。

「勝手にしやがれ」というタイトルから、"ラフでフリーダム"、"粗雑に彼らが思う格好良い音楽だけを詰め込んだ"というイメージを受けてしまうのですが、その実、黎明期ヴィジュアル系のセオリーが緻密に組み込まれ、戦略的に構築されているのも面白いですね。
短く勢いのある「放送禁止のブルース」でスタートし、光が差すような疾走メロディアスナンバー、「樹海」で締めるのは、"名盤の定義"に従ったのだとか。
激しい楽曲ばかりではなく、じっとりと湿度を纏ったミディアムチューンや、アダルティーな渋さを、哀愁メロディに押し込めた楽曲など、その他の構成も絶妙。
安易にインストナンバーをスタートかラストに持ってこないことにも、こだわりが見えます。

そこまで狙ったものだと知ると悔しさも出てくるのだけれど、「放送禁止のブルース」から、「勝手にしやがれ」に繋がるスタートダッシュが、とにかく格好良い。
粗削りなスピードチューンで勢いを煽ると、少し捻ったパンクナンバーで、勢いを殺さずに、裏世界的な世界観に引き摺り込む。
そこからは、シンプルながら、ヒリヒリするような緊張感漂う楽曲に、ただただ圧倒されるだけ。
ミディアムチューンですら、シリアスでスリリングなのだから、耳が離せません。

キラーチューンは、「縄と拡声器とヒロイン」。
"ヒロイン"を"メス豚"と歌ってしまう価値観の倒錯を、シャウトにも近い荒々しいボーカルにより、彼らの世界観におけるリアリティとして受け入れさせてしまう。
"おまえが好きさ 死ぬ程好きさ"なんて歌詞を、まったく甘ったるさを感じさせず、狂気的な表現として使ってしまうのが、彼らの音楽性を象徴しているでしょう。

総じて、クオリティの高い作品。
倫堕さんの歌い癖の強さ、個性的な歌声により、聴く人を選ぶ側面は否めませんが、演奏力は安定しています。
特に、Gt.ケッチさんのテクニカルかつエモーショナルなフレーズの応酬は、全編通して聴きどころかと。
少し、丁寧に歌いすぎているきらいもあるが、説得力は十分。
結果的に、オリジナル盤としては、最初で最後のフルレンスになってしまったことが惜しまれます。

<過去のKYOKUTOU GIRL FRIENDに関するレビュー>
エクスタシー
実録ハードコア+サイレンス
禁忌(タブー)