秋茜 / Jully | 安眠妨害水族館

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秋茜/ジュリィー
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1.秋茜
2.夜明け

セツナ曲愛好家必聴!!とのキャッチコピーにてリリースされたジュリィーのシングル。
結果的に、流通盤としては、ラストシングルになってしまいました。

表題曲、「秋茜」は、ノスタルジックなロックバラード。
序盤は淡々と、しかし、楽曲が進行していくにつれて、感情が洪水のように押し寄せていく。
切ない。とにかく、切ないのだ。
シンプルなサウンドに乗せて、哀愁のあるメロディを歌わせたら、Vo.慎一郎さんの右に出るものはいないと言わんばかり。

初期の昭和歌謡的な未練節感は薄れてはきたものの、後期のジュリィーがチャレンジしてきたオルタナ風のアプローチが、ここに来て、従来の強みであった哀愁ロックとの融合を果たしたといったところでしょうか。
この楽曲に関して言えば、感情表現を追求しているのが、慎一郎さんだけでないというのが、魅力ではないかと。
慎一郎さんが声を張り上げると、それに呼応するかのように、ギターも、ベースも、ドラムも、段々と情念がこもっていくようなフレーズの変化を見せてくれる。
後期ジュリィーにとって、有無を言わさぬ代表曲となりました。

カップリングの「夜明け」は、ツタツタとした疾走感が気持ち良いオルタナパンク。
ハードな楽曲ではありながら、歌われているメロディには、どこか哀愁があって、歌謡曲的。
「秋茜」同様、彼らの音楽の表現方法に、新たな活路を見出したな、というインパクトの大きさがありましたね。
衝動性が、身体をすり減らすような勢いに任せて、届けられるようなイメージ。

この時期の彼らは、UNLIMITSなど、他ジャンルのバンドの交流を頻繁に行っており、良くも悪くも、その影響が音楽性にも表れていました。
ミニアルバム、「アイデンティティ」は、それが上手く彼らの強みとハマらなかったところはあるのだけれど、この「夜明け」については、プラスに働いたよなぁ。

音楽性としては、新たな一面を見せたとも言える本作ですが、感覚的には、ジュリィーの本来持っている哀愁メロディが帰ってきたと嬉しかった。
荒削りながら、魂のこもった歌と演奏。
研ぎ澄まされた表現力は、やや形から入ったところがある、ジュリィー流のオルタナティブが完成されたことによって、更に活き活きとしているような。
世間的に、地味なシングルという認識であることは否めないのですが、ジュリィーを聴くなら、これを聴け!と自信を持っておススメできる作品です。

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