十字架の結末~第二の悲劇~ / Madeth gray'll | 安眠妨害水族館

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十字架の結末~第二の悲劇~/Madeth gray'll
 

1.狂死曲
2.白昼夢の惨劇
3.missantroop

Matinaの代表的なバンド、マディスグレイルの2ndシングル。
Vo.翡翠さんの強みを活かした発狂系の楽曲は、聴く人を選ぶが、激しくドロドロ、グロテスクな世界観を好む層の支持を集めていました。

このバンドの作品は曲の使いまわしが多く、本作についても、デモテープ等で発表されていた楽曲ばかり。
3曲で2,000円の値段設定は、いくら特殊ジャケットと言えど高すぎるかなぁ、というのが正直なところでした。
とはいえ、再録により、見違えるように楽曲のクオリティが高まっていたため、無視するわけにもいかなかった、というのが、当時のコテコテバンドファンの大半ではないかと。

"僕はおかしい・・・"という語りから入る「狂死曲」は、文字通りの発狂系ナンバー。
 3拍子のリズムでツタツタと疾走するAメロ部分が印象的。
ダークで、グロテスク。
ズタズタに崩壊していくような楽曲において、ギターのフレーズがクラシカルだったりするから面白い。
まぁ、それでもやはり、頭に残るのは翡翠さんのシャウトなのですけれど。

「白昼夢の惨劇」は、歌詞も演奏も、ずっしり重いヘヴィーなナンバー。
 阪神大震災がテーマとなっているようです。
 序盤はものものしい語りから入り、残酷な描写を含みつつ、ラストシーンへ繋がるドラマティックな構成。
最後は、疾走して終焉を迎える。
ひたすら重苦しく、それを助長する語りの被せやブレイクなどの工夫があるので、最初はなかなか空気に入り込めないところはあるのですが、聴き続けると抜け出せなくなりますな。

ラストは代表曲の「missantroop」。
1stCDにも収録されていたものの、早くも再録となりました。
しかし、クオリティは圧倒的に高まった。
クラシカルな様式美は、歌メロやギターフレーズなどにも見られ、メンバーチェンジを経て生まれ変わった「missantroop」が披露されている。
まぁ、どうせ再録されるなら、歌唱力の安定を期待したかったところだけれど、そこはご愛嬌。
最後は教会の鐘の音というのもベタな手法で、この手のバンドとしては清々しい。

聴き返すとそれなりに粗も見えてきてしまうものなのですが、リアルタイムで聴いたときはかなり衝撃を受けた。
苦手だと思っていた発狂系バンドが、格好良いとさえ思ってしまった瞬間。
メロディ部分でのボーカルは、相変わらず不安定ではありますが、世界観と、シャウトの破壊力でカバーできていると思いたい。
新曲が聴きたかったのは本音だとしても、Gt.右狂さんが在籍時の作品は少ないので、彼らを語るうえでは、外せないシングルです。

ちなみに、3曲ともベストアルバムに収録されているため、今から探すのであれば、そちらのほうがお得感はあるでしょうか。
心酔するか、嫌悪感を抱くか。
アクが強く、スキル的には未熟な部分も多いので、好き嫌いはかなりはっきりしたバンド。
90年代後半のツタツタコテコテ系ジャリバンは、マディスを聴かずしては語れません。

<過去のMadeth gray'llに関するレビュー>
亡界ノ魔都 ~Entith de marge~
Lucifer ~魔境に映る呪われた罪人達と生命の終焉~
狂死楽園