Open the door / My heaven’s luck sisters | 安眠妨害水族館

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Open the door/My heaven’s luck sisters

¥500
Amazon.co.jp

1. Open the door
2. The brain is scooped out
3. Love carved for the memories (re-mastering ver.)

2010年、My heaven’s luck sistersが残した、唯一の流通CD。
3曲入りで500円と、手に取りやすい価格となっています。

血糊に包帯というLa'muleを彷彿とさせる衣装。
肌の露出度も高く、コテコテなヴィジュアル系ミュージックを想像させますが、意外と世界観重視の暗黒系バンド。
歌メロはデスヴォイスでのシャウトが中心ながら、メロディラインも感じられるという独特な音楽性を持っています。

ミディアムテンポな曲を中心に持ってきて、それなりに雰囲気は出せているかと。
ボーカルを含めスキルは高くないのですが、気持ちの悪さを押し出した歌唱法を前に出すことで、ドロドロとした楽曲とはマッチしているような気がしないでもない。
たとえば、「Open the door」では、コミカルなサンプリング音と、ダークで地を這うようなメロディを上手く組み合わせて、ホラー要素を強めている。
あまりシングル曲っぽくはないのですが、90年代コテコテシーンと、現代暗黒シーンの間に落ちたような、ニッチなサウンドを奏でているのは面白いです。

また、「The brain is scooped out」が顕著なのですが、民族音楽、宗教音楽的なアレンジも特徴的。
基本的にはシャウトで進行され、綺麗な歌メロがあるわけではない。
なのに、不可思議なシンセと併せて聴くことによって、メロディとして耳に入ってくるのですよ。
これは中毒性が高いな。

唯一、しっかり歌っているイメージの「Love carved for the memories」は、一転してメロディアスで疾走する王道チューン。
会場限定で販売されていたシングルのリマスターバージョンなのですが、かなりぐちゃぐちゃにリミックスが施されています。
音の重ね方に、マニアックさを求めたようで、結果としては、ストレートな構成とは裏腹、聴きにくさが勝っているという。
ただし、この手の歌モノ風のナンバーは、ボーカルの弱さが露骨に出てしまうのがネック。
雰囲気モノだと、気持ち悪さも味になったりするのですが、歌い方には振れ幅が欲しかったでしょうか。

残念なのは、音質ですね。
3曲共に録音バランスが違っていて、最後の最後で、ガクッと音圧が弱くなるのは、音楽性とは別の意味で聴きにくさを増してしまっています。
会場限定でのシングルよりも、音質が悪いというのは、いかがなものか。
意図的なミックスであれば、ちょっとセンスがあるとは思えません。

聴き手を選ぶバンドではありましたが、個性は強かった。
価格的な手に入れやすさもあり、売り方しだいではブレイクの可能性もあったように思えたのですが、これからというところで解散に至ってしまったのは残念。
演奏力さえ安定してくれば、もう少しアピールできる層もあったでしょうに。

<過去のMy heaven’s luck sistersに関するレビュー>
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