CANNONBALL vol.2 / V.A. | 安眠妨害水族館

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CANNONBALL vol.2/V.A.
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メジャークラスのバンドが多く参加していたら前作に比べたら、少しバンドの規模は落ちるものの、相変わらず今が旬のバンドを集めてきていたな、というCANNONBALLの第二段。
前作は8バンド14曲だったのですが、本作は8バンド12曲と、若干ボリュームダウン。
その代わり、企画モノはなく、どのバンドもしっかり曲を送り込んできたという印象です。


1.東京花火 / 七三式

現在、【MU:】に在籍しているVo.愛歌さんや、ex-Laissez FaireのGt.Dyeさんがメンバーとなっていた七三式。
イントロからダークな展開で、彼らとしては異色な楽曲でしょうか。
ミディアムテンポながら、演奏は激しめで、テクニカルなギターソロは聴きごたえあり。
タイトル的には、昭和歌謡的なものを連想させますが、もっと純和風なイメージですね。
重めの演奏と、美しいメロディにギャップがあって、なかなかの佳曲。

2.デビルズキス / レオン

Vo&Gt.タケルさん作曲のポップロックナンバー。
Aメロとサビのみという、シンプルな構成です。
タケルさんの甘い歌声には華があり、聴きやすい。
ただ、もう少しインパクトがあっても良かったかなぁ。
サウンドがシンプルなだけに、地味な印象派否めないか。
レオンの中でも、ぐりむの路線を継続するような楽曲で、前バンドからのファンには嬉しい一曲。

3.『betray』 / Duel Jewel

イントロのダンサブルなシンセから、ロックテイストの暑苦しいバンド演奏に。
全体的にはミディアムテンポですが、途中で疾走していく展開もあり、面白い。
ラウド風の演奏にシャウトが入ってきたり、ダークなイメージになったり、他にも工夫があって、目が離せないです。
上手くやりすぎて、無難な感じになっているのが、もったいない。
盛り上がりのポイントを、もっと明確にできれば、とっつきやすかったような気がします。

4.楓 / re:Make

正当派の生き残り、といったコテコテダーク。
演奏に粗が多く、ドラムも軽いけど、ボーカルの細さも含めて、懐かしい古き良きを体言しています。
メロディアスなサビは、素直に好み。
方向性としても、良い意味で本作中浮いていて、注目を浴びやすかったのでは。
Duel Jewelの後だと、拙さが目立ってしまうのが彼らにとっての不運か。

5.Dear Fool's / MASK

ボーカルが、現HEROの尽さんにチェンジしたということで、葵さん時代の楽曲、「一見氏」を、歌詞を変えて再録。
オリジナル音源ではなく、オムニバスにこういう曲を持ってくるのはありでしょう。
ノリ重視の曲なので、音源だとちょっと盛り上がりに欠けてしまうところはあるのですが、聞き比べの面白さはありそうです。
この頃の尽さんは、現在ほど歌い癖が強くなく、むしろ、一般受けしそうなタイプ。
メロディアスな部分が、最後の大サビだけというのが残念。
もっと、歌っているところを聴きたかったですな。

 6.「雪と花」~祈り~ / MASK

もう1曲は、「Calcio」の再録です。
タイトルと曲のイメージが、だいぶ違うような気がするのは、僕だけでしょうか。
やはり、尽さんはメロディアスな楽曲に映えるタイプのボーカリストなので、Aメロのお洒落系特有のノリには違和感あり。
この手の再録は、どうしても前の前任ボーカルの印象が強くなるので、難しいところはありますよね。
構成についても、もっとシンプルでも良かった気がします。

7.華ゾ昔ノ薫ニ匂イケル / アンティック-珈琲店-

哀愁漂う、疾走系のナンバー。
アンカフェで、こういう楽曲が聴けるとは。
Vo.みくさんの歌い癖は相変わらずで、歌い尻のピッチの甘さが気になってしまうものの、全体的には聴きやすいかと。
この辺りから、彼らは急激に進化していくので、過渡期の楽曲を聴けるというのは、ある意味、お得感だったりするのかもしれません。

8.Life is ... / アンティック-珈琲店-

荒々しいシャウトと、激しめの演奏というイントロで始まるアッパーチューン。
サビだけメロディアスという辺りは、お洒落系のテンプレートでした。
英詞部分はエフェクトがかかっていて、従来のアンカフェからは意外に思われる、スタイリッシュで格好良い展開。
ただ、その流れをサビで生かせていないのがもったいなかった。
単調なサビに終始してしまったので、もっと工夫があれば。
惜しい。

9.innocence / KuRt

一瞬、カントリーロードかと思ってしまった。
前身バンドである餞の路線に近い、素朴なバラード+ロック。
サビの入り方など、多少強引な展開はあるけれど、彼らの持ち曲として、バラードがなかっただけに、アクセントとしてもこの選曲は成功でしょう。
余韻が残るラストが切なくてツボ。
感情を込めた歌い方は、Vo.てんてんさんの十八番。

10.さらばバンビ dancing version / KuRt

ライブの定番だった楽曲を、リアレンジで再録。
後期のホタルあたりがやっていそうな、昭和歌謡パンクですな。
間奏で琉球的な音使いになるのが面白い。
演出面も含めて、雰囲気作りはしっかりできています。
後半にドラムがもたついてるのが残念ですが、掛け合いのあるサビはノリやすい。
ダンシングバージョンというほど、ダンサブルではなかった気がするけれど。

11.「黒い空の雨だって」 / 【FIGURe;】

ex-Dué le quartzの、Vo.Sakitoさんと、Ba.キカサさんによるユニット。 
Sakitoさんのボーカルは、自分で曲を作ってることもあってか、バンド時代よりも、多少安定している気はします。
サビで急にポップになるのが、それまでの構成から違和感があって微妙。
それ以外の部分は、デュール時代からお得意としている独特なリズムを踏襲していて面白いのですけど。
ボーカルとベースのユニットなのに、ベースが目立つ部分がないのも残念。

12.「http://www.deaikei.com」 / 【FIGURe;】 

コテコテ路線で時代を作ったデュールのメンバーが、とうとうお洒落系に走ってしまったか・・・
と思わせるタイトルなのですが、むしろ、こちらのほうがデュールっぽさがあるような。
途中の台詞は、やや蛇足だとは思うものの。
Bメロでのキメや、コードを弾かず、ずっとメロディを奏でているギターとか、実は演奏面にこだわりが見える。
それにしても、聴き所がボーカル、ベース以外に多いってのは、このユニットの編成上、大丈夫なのか・・・とは思ってしまいます。


相変わらず、新曲やニューテイクの楽曲が多く、安定したオムニバス作品。
これが当たりだった!という衝撃は前作よりも薄かった部分はありますが、逆に、ハズレも少なかった印象です。

当時は、お洒落系の時代、と称されているものの、こうして見てみると、一言でそう括っていいのか、疑問に思いますよね。
なんだかんだで、どの時代も、個性を出そうと必死なバンドが、注目を浴びているのだなぁ、と。
収録曲数が減った分、もう1、2バンド、発掘してくれてもよかったのに。