701125+2 / deadman | 安眠妨害水族館

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701125+2/deadman
¥2,100
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1.25
2.god
3.blut
4.blue berry
5.kafka
6.family
7.moniz
8.sons of star fucker

ライブ会場と通販だけで販売されていたミニアルバム「701125」に、同じくライブ会場で販売された「カフカ/モーニス」の2曲を追加して販売された作成。
初期の楽曲をリメイクしたナンバーが中心に収録されており、少しキャッチーさが出てくる中期~後期のdeadmanにおいて、荒々しくもドロドロとうごめく、初期の勢いが戻ってきたような感覚がありました。
Ba.Takamasaさんが在籍していたdeadmanとしては、最後の作品となります。

導入となる「25」は、ダークな展開がたまらない。
「701125」というタイトルは、三島由紀夫の割腹自決の日ということで、この楽曲も、それが背景となっている模様。
単語の羅列が狂気を演出していますね。
ゆっくり地を這っていくようなドロドロさ。
気持ち悪くて素敵です。

2曲目は、「please god」を原曲にした「god」。
メロには面影があるものの、リフを中心に、オルタナ色強めに一新されました。
サビのフックが、言い放つような激しさからメロディアスな歌モノ風に差し変わっていることや、疾走感が増していることから、重さ、ドロドロさは薄れた印象。
オリジナルは、不協和音的なメロディラインが特徴でもあったので、楽曲としては、こちらのほうが聴きやすいと思われますが、好みは分かれそうです。

「blut」の原曲は「blood」か。
テンポが速くなり、ひたすら暗かった原曲のイメージに、わずかながら光が差したようなアレンジになっています。
ジャジーなベースラインもノリやすい。
こちらも、聴きやすさを増していて、マニアックな楽曲が多い本作において、序盤の勢いをつける役割となっているのだから面白い。
原曲を知っていれば、意外性のある配置ですよね。

kein時代からある「ブルーベジー」は、「blue berry」としてリメイク。
前の2曲とは対照的に、メロディアスで聴きやすかった原曲が、マニアックにアレンジされています。
哀しさ、寂しさはあまり感じなくなったけど、浮遊感が増したようで、不気味さが漂う。
心なしか、keinとして演奏されていた頃の「ブルーベジー」に近づいたような。
メロディ運びの強引さが、ここにきて解消されたところはありますな。

会場限定シングルの「カフカ」は、「kafka」として5曲目に収録。
サビに歌詞がない構成となっており、歌詞カードで見るとあっさりしているように見えるのですが、とても展開が多いです。
特に最後の最後で遅くなったり、速くなったり、ブレイクが入ったりと非常にマニアックな盛り上がり方をするのが特徴的。
とにかく色々詰め込んであるので、捉えどころがない曲とも言えるのだけれど、作品の後半戦に移行するにあたり、彼ららしいドロドロした世界観が強まって、良いスパイスになっているのかと。

「family」は、配布シングルの再録。
イントロの段階からマニアックな匂いがするものの、サビにはキャッチーさも見られて、なかなか面白い。
途中でテンポがスローになったり、大サビがあったりと、一筋縄ではいかない展開は相変わらず。
シングル曲らしさと、アルバム曲っぽさ、どちらも兼ね備えた不思議なナンバーです。
こういう楽曲こそ、deadmanの真骨頂。

追加収録された2曲のうちのひとつ、「モーニス」は、「moniz」として。
英詞が含まれているのですが、スペースが空いていなくて、歌詞が読みにくいなぁ。
横ノリ系の楽曲で、洋楽的な要素が強いかな。
もちろん、不協和音が混じる歌メロなど、彼らに期待される部分も押さえたうえで。
あざといくらいにマニアック。
それでいてライブ感もあるのだから、ラスト前、この位置に配置されるのも納得です。

締めは、「sons of star fucker」。
略称が「SOSF」ということで、一応、「site of scaffold」の再録となるのですが、ほとんど新曲といったところ。
完成形、または世界観の続きといったところでしょうか。
キメが多かったり、そこから段々激しくなったりと、「目を閉じて」というフレーズにおける展開の多さが、なんだかとてもカオティック。
狂気じみたシャウトと、「ラララ・・・」と不気味に歌うコーラスが重なるラストシーンは、気持ち悪さが際立ちます。

正当派に激しいバンドではないのだけれど、内面にある狂気が感じられる。
初期の楽曲の再録、しかも、大幅にアレンジを変えているという点では、賛否両論は避けられないところではありますが、演奏面でのクオリティが、圧倒的に高まっているのは間違いない。
あとは、好みの問題でしょうね。
じっとりと怖い、ホラー映画のような不気味さは初期のほうが強いと思いますし、オルタナロックとしてのマニアックさ、アルバムとしての流れの良さとしては、本作のほうが練られていると感じます。

ちなみに、新しいファンに届くように、と一般流通でのリリースが決まった経緯があるのですが、既に廃盤となってしまっています。
結果的に、オリジナルの「701125」、「カフカ/モーニス」のほうが手に入りやすいというから、皮肉なものだ。
初心者向けの作品は、フルアルバム2枚なのだと思いますが、よりコアでマニアックな世界観を求める人には、裏ベストのような本作がおススメではあるのですけれど。

<過去のdeadmanに関するレビュー>
in the direction of sunrise and night light
雨降りの向日葵
no alternative