CRUSH!3 / V.A | 安眠妨害水族館
CRUSH!3-90’s V-Rock best hit cover LOVE songs-/オムニバス ¥3,150 Amazon.co.jp 功績なのか、戦犯なのか。 V系界にも、カバーコンピブームを巻き起こしたCRUSH!シリーズの第三弾。 今までは、「-90’s V-Rock best hit cover songs-」というサブタイトルだったのですが、今回は、「-90’s V-Rock best hit cover LOVE songs-」となっていることからもわかるとおり、ラブソングに限定した選曲になっているようです。 って、それ、本当か? あんまり、ラブソングってイメージがない楽曲も入っているけど・・・ 1. 彼女の“Modern…” / CRASH49 原曲:GLAY Vo.みつ from ν[NEU]/Gt.YOSHIHIRO from ギルド/Gt.Aki from OZ/Ba.華凛 from NoGoD/Dr.HIROKI from Dというメンバー構成の、スペシャルセッション。 演奏も歌もしっかりしていて、トップバッターとしては聴きやすいです。 リズム隊が安定しているのは大きい。 声質も、GLAYのハスキーなアッパーチューンを、絶妙に再現できています。 間奏のベースソロや、同期の織り交ぜ方で、新世代であることのアピールもできており、即席バンドながら、本作のコンセプトに合致した内容に仕上がっているのではないかと。 2. KISS ME / 宇宙戦隊NOIZ 原曲:氷室京介 V系なの?1発目。 コンセプトの破綻にさえ目を瞑れば、これこそカバーの醍醐味というアレンジですね。 シンセのフレーズを挿入し、現代風のポップ感の演出。 そこに、バンドだからこその見せ場を追加し、原曲を大きく崩すわけではないのに、NOIZっぽい楽曲にリメイクしています。 このあたりは、さすがベテラン。 良い仕事をするなぁ。 3. ROSIER / defspiral 原曲:LUNA SEA こちらもベテラン、外しません。 原曲のソリッドな雰囲気を残しつつ、テンポチェンジを加えて、緩急をつけた。 演奏も申し分ないですし、鍵盤やストリングスのシンセも効いています。 間奏で、壮大に広がっていくところが、ドラマ性を駆り立てますね。 押さえるところを押さえすぎて、無難の範疇に収まってしまっているところはあるけれど、お手本のようなカバー。 4. WHITE BREATH / DIV 原曲:T.M.Revolution デジタル色の強い浅倉節を、バンドサウンドを強調したアレンジに。 ところどころ、打ち込み感を加えてきますが、工夫の跡と捉えることができるでしょう。 まぁ、この曲のバンドアレンジは、ご本人がセルフカバーアルバムでやってしまっていることもあり、本家との演奏力の差は目立ってしまうかな。 このラインナップでは、無名枠のバンドですが、案外、しっかりしていました。 5. ESCAPE / AYABIE 原曲:MOON CHILD V系なの?2発目。 比較的原曲に忠実なフレーズを残しつつも、曲が進むにつれて、オリジナリティが増していく構成。 渋く低音が効いた歌声が魅力のMOON CHILDに対し、軽さがあってポップなAYABIEの音楽が、どう噛みあうのかというところだったのですが、実はハマっていてびっくり。 シンセの使い方や、力を抜いた歌い方によって、お洒落なイメージを纏っています。 これはこれでアリ。 6. Rusty Nail / 犬神サーカス団 原曲:X JAPAN 格好良いですね。 コブシの効いた女声ボーカルで歌われるX JAPAN。 高音も掠れずに出せるし、メタルナンバーでも十分い弾きこなせるメンバーがバックにいることも大きい。 コーラスパートが前に出てきた間奏の遊び方も面白いです。 聴く前から安定感は保証されているようなバンドですけれど、期待を裏切らないクオリティでした。 7. illusion city / ALSDEAD 原曲:SEX MACHINEGUNS 正直、選曲が疑問。 代表曲がまだ出てきていない中、何故にカップリング曲なのか。 演奏は、正統派メタルで、単純に格好良いとは思います。 ただ、アレンジの違いとか、違いを楽しむといった、カバーだからこその醍醐味を放棄してしまっているような気がして。 前作に収録されたカップリング曲、PIERROTの「蜘蛛の意図」とは、意味合いが違うような気がしますね。 8. insomnia / 凛 原曲:ROUAGE これまた、渋いところを。 オリジナルへのリスペクトは表現しながら、凛らしい、シンフォニックなアレンジを加えていて、なかなか盛り上がる構成になっています。 凛というバンドが、90年代のコテコテ王道もこなすことができるキャパシティを持っているだけあって、彼らの楽曲として発表されてもおかしくないような内容。 ところどころ、流れが強引なところがあるので、そこが残念ですが、コテコテにコテコテを重ねる再構築っていうのも、面白いものです。 9. 揺れながら… / Kaya 原曲:Laputa デジタルアプローチに特化した、Kayaさんらしいアプローチ。 癖のあるakiさんの歌い方にもつられず、きちんと自分の歌を固持しているところも、好感が持てます。 Laputaは、後期は実際にテクノ風のアレンジに傾向していた時期もあったわけで。 このトランス的なミックスは、初期の曲を、後期のLapuraが演奏していたら・・・みたいな、アンソロジー的な楽しみ方もできるかも。 他のどのバンドよりも、アグレッシブに遊びを加えたアレンジですが、ここまで変えても失われない原曲の個性と、Kayaさんのブレなさ、どちらも称賛に値します。 10. VENUS / SARSHI (from HERO) 原曲:千聖 ペニシリンのギタリストのソロ作品を、HEROのギタリストがカバー。 クラブ風のトランスアレンジが施されて、非常に現代風になりました。 SARSHIさんの声質も含めて、なんとなくご本人と似た印象も受ける。 カバーで大幅にいじりました!って感じではないけれど、クラブで披露するために、別アレンジを作ったよ!みたいなニュアンスであれば、十分に聴ける。 期待してなかったけど、地味に良かった一曲。 11. ズルい女 / カメレオ 原曲:シャ乱Q V系なの?3発目。 ただ、バンドのイメージにハマりすぎていて驚かされる。 ギラギラでケバケバしい楽曲の雰囲気が、カメレオの持つ世界観と合致しています。 間奏部分で寸劇を挿入し、唐突に次の展開に移っていくという、オリジナルナンバーで見せた手法も登場し、上手く昇華させたなぁ。 ある意味、音楽性の違うV系バンドをカバーするよりも、正解だったかも。 12. Cage / MEJIBRAY 原曲:Dir en grey 今回の選曲の中では、もっとも新しいナンバー。 全体的には、原曲を忠実に再現するスタイルですが、イントロのオルゴール音をギターにしてみたり、マイナーチェンジ的に変化をつけてきましたね。 メロディアスな部分で、ボーカルの弱さが気になる。 高音を張り上げるところで、ウィスパーボイスで誤魔化しているところは、逃げたな、と。 もともとは、「唾と蜜」をやりたかったようですが、アルバム曲はダメと却下されたとのこと。 MERRYは、アルバム曲やってた気がするのだけれど、バンドとしての価値の差かねぇ。 13. Eternal Flame / マコト 原曲:SOPHIA どんだけ、SOPHIA好きなんだよ、と。 第一弾では、ドレミ團として「街」をカバーしていましたが、ソロアーティストとして、再びSOPHIAに挑戦。 「街」は、あまりに松岡充の物真似だったことの反省からか、きちんとマコトさんの歌い方になっています。 アレンジ的に、面白みがないのが残念。 解散後、マコトさんの歌声が聴けるという意味では、おいしいと言えるのかもしれません。 14. HURRY GO ROUND / スカーレット 原曲:hide with Spread Beaver ここまで、良い流れで来ていたのだけれど、最後の最後で、普通のコピーになってしまったか。 まぁ、オリジナルが完成されすぎているので、変えてしまう勇気を求めるのも、酷なのかもしれませんが。 下手を打っていない分、アンドの「ロマンス」のような、悲惨なことにはなっていませんが、スカーレットの良さという意味では、少しも反映できてないですね。 全体的な聴きやすさや、チャレンジの面から言えば、第二弾よりも出来は良いかと思います。 第二弾は、ただのコピバン大会に成り下がってしまっていたところがあり、自己満足感が強かった。 その点、本作については、その反省を活かしてか、自分たちの色を出そうとしてくるバンドが多く、第一弾の楽しみながら聴ける感覚が戻ってきたような気がしました。 一方で、コンセプトについては、ほころびが見え始めたかな。 90年代のV系界の名曲を、現代のバンドが再構築することでの面白味を目指していたはずなのに、V系とは言えないバンドが混ざってくる比率が高まりすぎているような。 親和性が高ければ良い、ってものでもないでしょうに。 また、現代のバンドとして参加しているアーティストについても、カバーされる側と対して世代が違わないじゃないって人たちがいたりして、本来の趣旨とは外れちゃいますよね。 第三弾については、そういうベテランが入ったことで引き締まった面は、間違いなくあるだけに、難しいところではあるのですが。 セッションバンドや、普段ソロでやっていない人のソロワークスが登場したりしているし、ネタ切れってところもあるのでしょうけれど。 もっとも、期待していなかった分、内容の良さには驚かされた。 変な縛りは、この際無視して、普通のカバーコンピとして聴くには十分です。 なんだかんだで、流行に乗っかった他のカバー企画よりは、ブランドイメージも強いので、このクオリティが維持できたのは大きい。 第4弾に向けて、良い布石になったのでは。 とはいえ、ネタが煮詰まったり、参加バンドが集まるまで、期間が空いてもいいのかな、とは感じますけどね。
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