気狂いピエロ / Pierrot | 安眠妨害水族館

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気狂いピエロ/Pierrot
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1. プロローグ
2. VANITY DANCE(Remix Version)
3. 気狂いピエロ
4. Labyrinth(Remix Version)
5. Mother
6. Dual
7. Sleep Or Dead

1994年にリリースされた、Pierrotの記念すべき1stCD。
・・・とは言いましても、メジャーデビュー後のメンバーとは多少違いがあるので、ご注意が必要です。

まず、今もなお狂信的なファンを持つカリスマ・ボーカリスト、キリトさんは、この時点ではギタリストとしての在籍。
ボーカルは、HIDELOWさんが担当しています。
Dr.TAKEOさんも、まだ加入しておらず、後にD≒SIRE、JILSで活躍する秀誉さんが、LUKA名義で参加。

アイジさんとTAKEOさんがおらず、キリトさんが歌っていないピエロ。
メジャー期しか聴いたことがない人は、なかなか想像しにくいものがあるんじゃなかろうか。

内容については、時代と規模を反映して、非常にチープ。
演奏も軽ければ、歌も弱い。
中でも、ギターは危なっかしくて、聴いていられないレベルです。
正直、メンバーチェンジがあったとは言え、このバンドがトップシーンにまで上り詰めると予測できた人は少なかったでしょうね。
これがピエロじゃなかったら、2012年の今、わざわざ語られることはなかったに違いない。

ただし、一通り、彼らの作品に触れてから振り返ってみると、確かに原石だったんだな、と思えるフレーズがちらほら見て取れるから面白いものです。
例えば、わざとなのか、天然なのか、コードから外れて不協和音を掻き鳴らすギターサウンド。
フレーズとフレーズをぶつけるようなアプローチを基本線としていて、安易にパワーコードに逃げることはしないアレンジへのこだわりがあるよう。
ボーカルラインも含めて、どれもが主旋律に聴こえる不思議な感覚には、この段階で完成はしていないまでも、ハマれば大きな衝撃になる予兆は確認できる。

全体的に漂う、オリエンタルな雰囲気も特徴的。
ギターリフの粒が大きく、単音の響きが耳に残るからか、割とよくあるダーク・メロディアスなナンバーでも、異国情緒が上乗せされています。
激しい曲はないのだけれど、淡々と不気味な演奏が続いていくので、これはこれでヴィジュアル系らしい気持ち悪さとデカダンス。

なお、SEである1曲目を除けば、キリトさんが4曲、当時はJUN名義だった潤さんが2曲、作曲を手掛けています。
マニアックで癖があるのがキリト曲、わかりやすくて、ポップさがあるのが潤曲と、コンポーザーの個性が、既に滲み出ているのも、熱心なピエラーさんにはたまらないポイントか。
単体で味が出る作品ではありませんので、彼らを知らない人に聴いてほしいアルバムではありませんが、ある程度、コアなV系ファンだという自覚がある人には、研究対象として良い素材だと思いますよ。

<過去のPIERROT(Pierrot)に関するレビュー>
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