フラッシュバック / トーマス | 安眠妨害水族館

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フラッシュバック/トーマス


1.フラッシュバック

5月4日を皮切りにスタートした、"トーマスpresents 4MONTHLY BATTLE GIG[VOLTAGE∞]"。
本作は、このイベントと合わせてリリースされた、会場限定シングルです。

最近のトーマスは、Gt.トシさんの師匠とも言うべき存在である、ギルガメッシュからの影響を受けた楽曲が中心になりつつある。
本来、強みとして持っていたデジタルとエモーショナルとの融合、メロディアスな歌メロの昂揚感は、コアな部分として残しつつ、次なるステージに進むためのアプローチとして、先輩バンドから学ぶというのも、若手バンドには必要な過程なのかもしれません。

そういう意味では、本作においては、Vo.昌孝さんが、MCでも名指しで尊敬の念を表明している、KYOKUTOU GIRL FRIENDへのリスペクトが見て取れます。
アートワークや、グッズのデザインにおいて、ex-KYOKUTOU GIRL FRIENDの林田倫堕さんとタッグを組むことも増えてきて、その影響力が音楽面にも波及してきたといったところでしょうか。

具体的に言えば、不謹慎めいた歌詞や、荒っぽく吐き捨てるようなメロディライン。
攻撃性の高さは相変わらずなのですが、シャウトやデスヴォイスを使用しての表面的な激しさではなく、鋭利な刃物のような切れ味を体感できる。
邪念が入り込んだら、脆く壊れてしまいそうな緊迫感が、確固たる世界観を築いていた倫堕さんのそれに近づいたような。
もっとも、スクラッチ音すらアクセントに加えてしまうデジタル・サウンドと、ずっしりと重いハードな演奏によって、トーマスの音楽に昇華できているという前提。
激しさの表現に、世界観も追い付いてきたという意図ですので、誤解なきよう。

サビに入ってしまえば、いつものトーマス節。
安定した歌唱力を誇示する、メロディアスな疾走ナンバーに。
新たなアプローチを織り込むだけでなく、自らの強みとなる部分を、しっかりと強調できていることも、自信がついてきた証拠です。
シングルとして、十分にインパクトが大きい作品に仕上がったなぁ。

色々なバンドからの影響を吸収した結果、「らしい」音楽になるっていうのも、不思議な話だけれど、Lottoさん加入後の楽曲としては、もっともトーマスらしい、パッションに溢れたキラーチューンだと感じました。
もうちょっと婉曲的にしたほうが良い部分もあるのかもしれませんが、単なる暴れ曲の位置付けではなく、ライブで成長させてみてほしい1曲。
この手の楽曲が、ミニアルバム「Determination」に収録されていても面白かったと思うので、会場限定販売で、聴く人が限定されてしまっているのは、少々もったいないかな。

<過去のトーマスに関するレビュー>
Determination
激情マニフェスト
破壊的イノベーション-新市場型破壊盤-