1.Downer
2.Love Me
1998年にリリースされた、Fatimaの1stシングル。
Vo.Hitomiさんは、現在、Moranにて活動中。
また、ドラマーとして、その後、蜉蝣でボーカリストとして大成する、大佑さんが在籍しているため、プレミア度も高いCDとなっています。
Fatimaというと、難解でマニアックな曲構成で、歌いにくい、聴きにくいというイメージがある人も少なくないと思いますが、本作は、初期の作品ということもあり、少し違った味わい。
スピードディスクからCDをリリースしはじめ、知名度を上げてきた頃の彼らしか知らなければ、音楽性の違いに驚かされることでしょう。
曲は、どちらかと言えば、構成そのものはストレートな部類。
だけど、その味付けとなるアレンジが、やたらと近未来的なのです。
デジタルな機械音が、コンピューターウィルスのように、ノイズとなってバンドサウンドを浸食していくかのよう。
シニカルな歌詞も含めて、サイバー感が強くて、ある種、ボーカロイドに近い印象すら受けます。
「Downer」は、序盤からエフェクトボイスで、機械的に。
ほどよく疾走感があるのですが、音量も、エフェクトの加工具合も、意図的にぐちゃぐちゃになっており、曲調のわりに、とても聴き苦しい。
しかしながら、このフラストレーションが、エフェクトが外れ、生音が主体になるサビでのカタルシスに繋がっていくのです。
この解放感から、ラストの盛り上がりに至るまでの流れが秀逸。
マニアックであることは認めるものの、奇才ぶりの片鱗を見せつけます。
カップリングの「Love Me」は、ストレートさを増し、比較的聴きやすい。
デジタルさを多用した演出は控えめで、捻くれた歌詞を、声を張ったメロディアスに歌い上げるあたり、Hitomiさんらしさが良く出ているのではないかと。
ライブでも、要所要所で演奏されていた楽曲ですね。
ラストは、再びデジタル世界へ戻されてしまうような、機械音の波に飲み込まれていくエンディング。
素直に終わらないところも、Fatimaならでは。
なんというか、当時の彼らの音楽性は、ヴィジュアル系と、インダストリアルミュージックとの親和性が高かった時代を表しているのではないかと。
最近のヴィジュアル系バンドは、音楽面において、同ジャンルの先輩バンドに影響を受けていることが多いようですが、黎明期のバンドたちは、洋楽シーンやサブカルシーンからの影響も強かった。
その結果、インダストリアルの方向に興味を示すバンドは、現代に比べて、結構多かった印象です。
もっとも、ここまで、個性的に染め上げることができるセンスを持ち合わせていたのは、ほんの一握りではありましたが。
Fatimaは、そのアプローチを受け継いでいるかのように、その後も、あらゆるジャンルの音楽からオリジナルに昇華させていく手法をとっていましたね。
そんな彼らの、記念すべき1st。
この作品以降、しばらくリリース間隔が空いてしまうため、インダストリアルと融合したFatimaを聴けるのは、本作だけ。
そういう意味でも、貴重盤と呼ぶべきCDなのだと思います。
<過去のFatimaに関するレビュー>