1.羅紗桜
2.哀し 怨めし あな愛し…
3.屍楽園 heaven version
残念ながら他界してしまった、ex-kagrra,のVo.一志さんのソロシングル。
shiki∞project~志鬼陰謀~を立ち上げ、その挨拶代わりとして通販限定でリリースされた作品ですが、結果として、遺作となってしまいました。
初回盤として、AタイプとBタイプが存在しており、3曲目の「屍楽園」のアレンジが違っています。
僕が買ったのは、Aタイプ。
heaven versionと、hell versionって、状況が状況だけに、hell versionは不謹慎で買いにくいじゃない。
音楽性も、アートワークも、kagrra,時代の雰囲気を残す和風なイメージ。
そこに、タガが外れたからこそできる、新境地的な要素も組み合わさって、なかなか面白い作品になっているのではないでしょうか。
タイトル曲でもある「羅紗桜」は、クラシックをモチーフにしながら、和風の音色という、なんとも独特なSEからスタート。
ワンフレーズが終わると、一気にバンドサウンドに突入し、疾走感のあるメロディアスナンバーに様変わりします。
中音域から、高音域に流れていく一志節は健在で、彼らしい、それこそ桜のような儚さ、切なさを、歌に閉じ込めている印象的な一曲。
これがもっともkagrra,っぽさを残しているでしょうかね。
演奏面が、幾分かあっさりシンプルになっていますが、メロディを前に押し出すスタイルも、この音楽性ならハマらないわけがないといったところです。
続く、「哀し 怨めし あな愛し…」は、タイトルこそ、ドロドロした和風愛憎劇でもはじまりそうですけれど、これが新境地を切り開いた。
これまで、一志さんが描いてきた雅やかな世界観からは、随分と現代に迫ってきたような、お洒落な楽曲。
音を厚く重ねず、アコーディオンの個性的な音色が目立っています。
意外は意外なのだけれど、それでも、レトロ感というか、白黒映画的なアナクロっぽさが強いので、雰囲気を損なってはいないところは、さすがの安定感。
しっかりとブレイク部分で琴の音は含んでいたり、明治維新のあと、ハイカラ思想が入ってきたころの、垢抜けない洋風文化が表現されているようで、とても味わい深いですね。
最後の「屍楽園 heaven version」は、オフィシャルページでアコースティックバージョンが無料配信されていた楽曲の、リアレンジバージョン。
「heaven version」は、文字通り、空へ浮かび上がるような浮遊感があり、幻想的に仕上がっています。
天国、というよりは、極楽。音から受けるインスピレーションは、そんな感じ。
暗さのある楽曲ではあるのですが、穏やかに、真っ白に歌い上げる一志さんの歌声で、随分と表情も変わるものです。
美しさ、繊細さが大事にされている。
こうして、一つの曲の歌い分けを耳にできると、表現の幅が広がったことを、わかりやすく実感できますね。
だからこそ、悔しいというか、寂しいというか。
最後の曲が意味深なだけに、精神的にへヴィな作品になってしまったところはあるのだけれど、たとえ遺作とならなかったとしても、十分に話題になるだけの力はあったと思わされる作品。
もっともっと、続きが聴きたかったです。
ここまで、徹底した和を演出できるボーカリストは希少。彼の代わりは、そう簡単には現れないというのに・・・
幽玄な世界観を堪能したければ、ファンならずとも必聴盤です。