eternal tones / WAIL | 安眠妨害水族館

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eternal tones/WAIL
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1. yourself

2. frozen

3. eternal tones


2002年にリリースされた、WAILの2ndシングル。

リアレンジ+1曲追加の会場限定盤も存在しています。


当時、たくさん存在していたソフビ系バンド。

その中で、このWAILはやや地味なポジションではありましたが、通好みと言いますか、派手さはなくとも高い評価を受けていた記憶があります。


本作は、そんな彼らの出世作。

疾走感があり、切ないメロディが特徴の「yourself」、ロックテイストを増し、勢いを継続する「frozen」、壮大なバラード「eternal tones」と、どれも及第点以上の仕上がりで、成長を見せ付けています。


「yourself」は、ストレートな構成ながら、シンセストリングスが効果的に楽曲の解放感を印象付け、マイナーコードを使ったコード進行ではありますが、光のある爽やかなナンバーになっている。

イントロでの掴み、アウトロでの余韻の残し方など、ツボを絶妙にとらえており、透明感のある演奏と、ハイトーンなボーカルとの絡みもマッチ。

とても格好良いです。

導入としての役割以上の存在感を示す、キラーチューンと言えるでしょう。


続く、「frozen」は、ボーカルラインがミドルレンジで動いていくため、同じく疾走系ナンバーでありながら、「yourself」とは違った印象を与えます。

演奏も全体的に重さを増しており、ハードさ、攻撃性といった部分を強調しているよう。

少しばかり、歌い方にぎこちなさを感じるものの、積極的に表現の幅を広げようとしている側面が強いので、好みの問題かと。

サビでは、コーラスとの掛け合いもあり、ダークな雰囲気も味わうことができる1曲。


そして、表題曲は、ラストに持ってきました。

「eternal tones」は、締めにふさわしい透明感を意識したバラード。

ピアノにボーカルが重なる形でスタートし、徐々に、他の楽器が重なっていく展開が、ドラマ性を引き立てています。

ギターの入りを、サビまで引っ張っているのも、また一興。

サビのメロディに少し癖があり、ベタに気持ちよく伸びていくというよりは、透明感の中に、翳りを含むような感覚にしているところも、正解と言えるでしょう。

ラストは、更にストリングスが加わり、これでもかというほど壮大になっていく。

若干、クドさがあるので、ハマりきれるか、途中で飽きてしまうかで、評価は変わってきそうですが、レベルの高さは証明していますね。


3曲通して、大きなインパクトはないものの、タイプの違う楽曲を安定して聴かせるセンスには、非凡なものを感じます。

スキルも相応に高いであろうことがうかがえ、特に、バラードでもグダグダにならずに歌いきれる歌唱力は見事でした。


一方で、通好みのバンドで終わってしまったのは、ライト層を取り込むためのセールスポイントが弱かったといったところか。

強烈な個性があったわけでもなし、話題性があったわけでもなし。

なんなら、有名バンドに在籍していたメンバーが一人でもいたら、もうちょっと門戸が広がったのではないかと思ってしまう。

今からでも再評価されてほしいバンドです。