1.life trees
2.elemental
9GOATS BLACK OUTの漾さんが所属していた新潟バンド、デルスキュエル。
1stシングルとなったのが、この「life trees」です。
今でも、幽閉感のある独特な音楽性が支持されている漾さんですが、その真髄は、1996年当時でも既に味わうことができていたのだから、凄いとしか言いようがない。
ライブでの盛り上がり、聴きやすいポップでキャッチーなメロディ、オーディエンスとの一体感・・・
そんな、楽しいライブをやったバンドが勝ちとでも言いたげな最近のV系シーンを、真っ向から否定すうようなマニアックさ。
暗く、淡々と、メリハリのないダークなフレーズを、ゆらゆらヌラヌラと、蝋燭の炎のように演奏する楽曲スタイルは、全盛期の名古屋系ミュージックに受け継がれるところ。
意図的なのか、音質が悪いだけなのかは不明ですが、存在感のある漾さんの歌を、あえて演奏に埋もれさせることで、聞き苦しく、気持ち悪くしているような演出が、ぴったりとハマっているのです。
このダークネスを貫いた音楽性は、今ほどジャンル化され、一般的ではありませんでしたが、当時から、男性層を中心に、コアなファンからを獲得していました。
歪んだギターと、エフェクトがかかった声が、アングラな世界観を演出。
悪魔主義の宗教家のような邪悪さを醸し出す表題曲、「life trees」、当時の王道だったダーク系バンドの要素を取り込みつつ、徐々に更なる深い暗黒へと引きずり込まれるような展開が繰り広げられる「elemental」と、2曲とも存在感は抜群です。
微動だにすることもできない、圧倒的な暗黒のオーラに、何も言葉が出ないほど。
そんな中でも、ひとつだけはっきりと言えることは、どちらもシングル向きの曲ではないということ(笑)
本作に収録されている2曲は、デモテープ「D'elsquel」にも収録されています。
(収録されていないバージョンも存在しているようですが。)
とはいえ、今の環境下でデモテープを聴く機会がないこと、そもそもデモテープもレアで手に入れにくいこと、CDになったことで音質面での改善はされていることなどから、まずはこちらでといったところでしょうか。
曲数が多いCDから手に入れて行きたい人は、代表作、「嘘と鏡」でもいいでしょうけれどね。
10年以上、ブレない音楽をやっているというだけでも凄いのに、ましてや一般受けをしそうもない暗黒系を極め続けている漾さんには、素直に感心してしまいます。
ゆっくりなペースで構わないので、じっくりと作り上げたい世界観の構築に向けて、更なる進化を遂げていってほしいものです。