“自虐ネタ”というものは古今東西あるものらしい。私がレパートリーにもしている「フール•サッチ•アズ•アイ(A Fool Such as I)」という曲もその一つ。直訳すると「私のような愚か者」、正式な曲名は「(Now and Then There's) A Fool Such as I」だから「ときどき、俺みたいなバカが居るんだよね」といったところだろうか。
最初に譜面を探したが、ジャズのスタンダードではないので「スタンダードジャズのすべて(通称:赤本/青本)」にはなく、ポップスとしてもそれほどメジャーではないせいか「永遠のポップス」にも無い。探していったら「1001(通称:センイチ)」と呼ばれる曲集に載っていることが分かり、ようやく入手することができた。
次は歌詞の意味である。例によって原詞は専門の歌詞サイトに譲るとして、その内容をナンチャッテ和訳してご紹介するとこうなる。
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「フール•サッチ•アズ•アイ」
作詞•作曲:ビル•トレイダー
別れ言葉に僕が感傷的になっても許してね
別れに際に僕が泣いてもどうか怒らないで
君が去り時が過ぎても僕はまだ夢を見るよ
きっと君との夢を少しだけ見ているだろう
ときどき、僕のようなバカがいるんだよね
愛を教えてくれた君がもう終わりだと言う
僕はバカ、きっと死ぬまで君を愛すだろう
ときどき、僕のようなバカがいるんだよね
訳詞:Saigottimo
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なんとまあ未練タラしくもウジウジした男の泣き言の連発!これを今の日本女性が別れ話をしたカフェとかで聞こうものなら「もう終わりよって言ってんだろがっ、このボケ!」と、コップの水でもぶっかけられそうだ。調べると、この曲はカントリーの大御所、ハンク•スノウのナンバー(1952年)だった。
カントリーといえば雄々しいカウボーイ姿で歌ったりするのに、こんなメメしい歌詞なのかと驚くが、カントリーは米国の魂の音楽だから日本だと演歌かな?この両者の対比は文化や気質にも関連して興味深いので稿を改めて詳述するとして、う~ん、ちょっとこのカントリーの2beatでは歌いにくいなぁ...。
と思っていたら、若い頃はカントリーを中心に歌っていたプレスリーが1959年に全米2位にしていた。これは全然テイストが違ってカントリーというよりもロックンロールだが、ビリー•ヴォーン楽団盤のロカ•バラードのリズム、つまり三連(4拍×三連符=12beat/小節)にすれば、うん、何とか歌えそうだ、とレパートリーにした。
昔も今も米国ポピュラー界の王道はカントリーだから、日本で“歌がヘタな演歌歌手”があり得ない様に米国では“歌が下手なカントリー・シンガー”は存在できないだろう。だから後に黒人のR&Bと白人のカントリーを融合させたロックンロールを確立したプレスリーも、当初はカントリー界で実力を示していったのだ。
【左:ハンク•スノウ、右:エルビス•プレスリー】
てことは今の日本に置き換えると、演歌界で実力を示して他の分野に羽ばたく...あ、氷川きよし?彼は当然、下手じゃないし、演歌界のプリンス”と称されるなど、オバ様方等ファン層をがっちり獲得した上で、今はアニソンなど新たな境地を開拓しようとしている。うん、もしかしたらこのあと、プレスリーみたいに化けるかもよ?
Saigottimo



