このブログでは「長所と短所は同じ要素の表裏」「ピンチとチャンスは同時に存在」などと書いてきた。誰もが自分の長所や短所を意識しながらピンチやチャンスといった局面に対処するが、いつも上手くいくとは限らない。私もそうだが成功する時もあれば失敗する時もあるのだがそこに意外な傾向があることに気付いた。

 

それは「人は苦手な領域では失敗しない」という事だ。よく自分の子や後輩を指して「あいつは○○が苦手だから、それで失敗するんじゃないか」と心配したりする。でも実際はどうかというと苦手な○○で小さな失敗はあっても、何故か、人は取り返しがつかないような大失敗は苦手な領域ではしないものなのだ。

 

大企業の新社長就任の際、その人が開発畑出身で財務面が苦手だったりすると財務分野で失敗しそうだが実際にはそうはならない。得意な開発面では自ら手も出すだろうし独断専行することもあるかも知れないが、苦手な財務面は自ら手を出さずに優秀な腹心を置いて専門的な判断は委ねるだろうからである。

 

今回も野球に例えると、カーブは得意だが速球に自信がない投手は速球で大ケガはしない。何故なら大事な場面で、得意じゃない球種で勝負しようとはしないからだ。得意球種には頼るのでカーブを見事に狙い撃ちされたら痛打を食らう恐れはあるが、パッとしない球種は相手もわざわざ狙わないので致命傷を負わない。

 

つまり人は自らの短所(苦手)と自覚したらそれによる失敗(のリスク)を回避すべく手を打つ(マネジメントをする)ので心配ないという事。逆に自らの長所(得意)と自覚している領域では失敗するという(リスク)意識は薄いが得意だから余り失敗しない(リスクが顕在化しない)。となると一番危ないのは“無自覚な苦手領域”か。

【byカメラ兄さんfrom (写真ac)】

従って冒頭に例示したように自分の子や後輩を指して「あいつは○○が苦手だから、それで失敗するんじゃないか」と思う場合は、それを本人が自覚しているかどうかが重要であり、もし本人が自覚しているなら余り心配する必要はなく、そうでないなら本人に「自分の○○はイケてない」と自覚させられるかどうかの問題だ。

 

これは本人の場合でも同じで「自分は対人関係が苦手だから失敗しそうだ」と自覚していれば対人関係で致命的な失敗をすることはない。そういう人は常日頃から対人関係に気を配るし自分の対応がダメならチェックもするからだ。つまり大失敗するかどうかは“リスク管理が出来ているかどうか”の問題という事になる。

 

「失敗するか」という観点では、当然、得意な領域より苦手な領域の方が失敗の確率は高いだろう。でも「失敗が致命傷になるか」という観点では、得意か苦手かではなく失敗のリスクを把握しマネジメントできているかどうかで決まる。だから苦手領域の方が失敗のリスクを意識している分だけ大失敗に至らない

 

組織不祥事のトップ会見で「そのような事は、ウチでは“あってはならない事”です」などと聞くと「この組織は危ないな」と思う。何故なら“あってはならない事”なら、あった場合を想定した準備(リスク管理)はしないだろうし実際に起きてしまったら“あってはならない事”だから“なかった事”にする(隠ぺいする)しかないからだ。

 

Saigottimo