21時32分


電話があった。








「俺が誰だか分かるか?

 姪の親から20分前に呼ばれたから電話した。」 












………。


何で妻の叔父なんだ?

(この叔父は、妻の母親の弟だ。)


本っ当に、意味が分からない…。








でも、まあ連絡が来たんだ。


・叔父さんまでに迷惑をかけて申し訳ないです。










「姪は、そっちの家に対して怯えている。

 あなたと話すことも、

 あなたの両親と話すことも、

 親がそっちの両親と話すことも。

 姪たちは、話をするつもりは無いから。」









(こいつも腹が立つ野郎だな…。)


・明日、何時にこっちへ来られますか?









「行くつもりもないし、

 話をする必要はない。」









・お義母さんから、

  離婚する前提で話を進めます

 って話があったんですよ。









「そんなことがあったんだ。」










・だから、子どもの退院の話をしているんですよ。











「母親が子どもを連れて行くのは、

 当たり前でしょ!」










・勝手に決められないでしょ。







「こういう問題は、時間がかかるんだから。」










・子どもの退院は、来週なんですよ。











「母親が連れて行くのは当たり前でしょ。

 乳をあげるのは母親の役目だ。」










(妻は、4日も見舞いに来ていないし、

 母乳も持ってきていないし、

 そもそも、妻は、ほとんど母乳が出ない。

 この野郎は、何を言ってるんだ?)



・子どもはウィルス性の病気なんです。

 そっちは猫もいる。

 甥が虫を持ち込んでくる。








「そんなことは医者の見解だ。」








(この野郎、何様のつもりなんだ?

 お前は、医者じゃないだろうが。)



・親である以上、可能性のあることは、

 極力、避けるべきでしょう。

 
 この前、お義父さんと親父が話した以上、

 お義父さんと親父が話して然るべきでしょ。

 親父に変わりますから、
 
 お義父さんと代わって下さい。






(妻の叔父じゃ、話しても全く意味がない。

 親父とのチェンジで、

 何とか状況を打破させようと試みた。)

   
   
   
帰宅してから、家族会議を始めた。



友人にも参加してもらった。








当然かもしれないけど、

何も結論は出なかった…。









夕方の面会時間になった。






看護師から、



「退院後のことや事前教育のことがあるから、

 退院のことを早めに決めてもらいたい。」


ということだった。






つまり、俺と妻、

どっちが子どもを引き取るか?


ということだ…。









またもや、妻は面会に来なかった…。












帰宅してから、妻の実家へ電話をした。




留守電だったから、

メッセージを入れておいた。



「子どもの退院後の話と、

 皮膚のことを話したいから、

 21時30分までに電話を下さい。」






俺は、ちゃんと責任を果たしている。





皮膚のことって入れておいたから、

妻から連絡があるはずだ。


連絡せざるを得ないだろう。











………。






21時30分まで待ったけど、

妻から連絡がなかった…。

   
   
   
面会時間には、

両親と友人も一緒に行った。









医師によると、


「発疹の検査は、

 原因がB型肝炎かどうかも兼ねている。」


ということだった…。










前日に髄液検査が陰性だったから、

細菌性の髄膜炎じゃないってことで、

ようやく安心していたところに、

かなりショッキングな話だった…。










でも、まあ一応の検査ということだったから、

髄液検査の時よりは、

身構えなくても良いようだった。










とにかく、発疹の検査が陰性となることを、

心から祈るだけだった…。










そりゃそうだ!


髄膜炎も乗り越えたんだ!


B型肝炎のはずがない!









俺は、根拠のない自信で、

何とか自分を落ち着かせていた。











ちなみに、やはり妻は面会に来なかった。


相変わらず、来なかった…。









面会記録も入室記録もなく、

看護師も見ていないってことだった。

   
   
   
突然の妻の離婚宣言から、

ようやく初めての週末が来た。






週末が来たとは言ったものの、

実は、この日から夏期休暇となっていた。




タイミングが良いのか、悪いのか、

何とも言えないけど、

少なくとも、仕事のことを考えずに、

子どものことだけを考える時間ができた。









前日には、田舎から友人が来てくれた。






俺は、さすがに疲れが出てきた…。





でも、そんなことは言っていられない。





午前中は、面会時間じゃないから、

子どもの面会はできない。







前日の夜だけじゃ話しきれなかったことを、

友人に相談して、何とか打開策を練り始めた。









そうこうしている内に、

昼頃には、田舎から再び親父が来た。







この時点で今後のことは、

まだまだ決められなかったけど、

まずは、子どもの面会だ。






そうこうしているうちに、

面会時間がやってきた。

   
   
   
病室を出ると、妻の母親が、


「娘も考えているようだから、

 お父さんへ宜しくお伝え下さい。」






なにがあったんだ?


「はい。」


と返事はしたものの、なんか変だ…。








看護師から妻へ、


「明日は来ますか?」





妻は、


「体調次第です。」








おいおい、さっき俺が話したこと覚えてないのか?


俺は、どんなに具合悪くても来てるって言ったぞ!


これが、この女がダメ証拠だな。






そもそも、夕方に来る気ないな。


看護師にも見抜かれてるってことか。









俺は、昨日届いた保険証を、

ナースセンターへ提出して、

手続を済ませて、おふくろと帰った。













俺は、会社に戻って、

残務処理を済ませて、

夕方の面会へ向かった。



正確に言うと、夕方じゃなくって、

夕飯の時間帯なんだけど…。










病院へ着いたけど、

やはり妻は来なかった。








発疹が増えていたから、

看護師に聞いたところ、


・内臓が原因の発疹だとまずいけど、

 薬で治れば問題ない。


ってことだった。










その夜、田舎から俺の親友が、

ことの顛末を聞いて、

心配して駆けつけてきてくれた。






有り難かったし、心強かった。

やっぱり持つべきものは友だな。







俺は、長い間、田舎を出っぱなしだったし、

転勤族だったから、

今の住所地には、誰も知り合いがない…。







親友の訪問は、本当に助かった。










この日の妻たちの対応を見て、

改めてあの一家の考え方は異常だと、

本当に痛感させられた。

そして、あの一家は、絶対に許せないと思った。








俺は、一連の事件について、

親友に説明をしていたら、

今後どうするべきかを、

真剣に考える必要性があると感じた。