神前式が無事に済んで、


これで晴れて夫婦になったんだなぁって、


改めて感じた。




両家の親族紹介は、


たどたどしくだったけど、なんとか済んで、


その後は、写真撮影だった。



写真撮影は、慌ただしかった気がする…。



「あなたはこっち。」

「あなたはそっち。」

「そこの人、一段下りて。 」

「あなたとあなた、入れ替わって。」


「はい、チーズ。」

「はい、もう一枚。」

「今度は、こっちのカメラね。」



出来上がりを見れば、確かにプロの腕だ。






そして、披露宴が始まった。




挙式と同じ衣装のまま、


俺は紋付き、妻は白無垢に打掛で入場した。





入場のときのスポットライトは、本当に眩しかった。



誰の顔か分からないくらいに、目がくらんだ。



「おめでとう!」



誰の声か分からないほど、お祝いの言葉が交錯していた。


その時点で、舞い上がってしまったのかもしれない。




とにかく、訳が分からないまま、


係りの人に誘導されながら、席に到着した。





司会者による新郎新婦の紹介から始まって、


主賓の祝辞や乾杯が続いて、歓談となった。





そうそう、司会者による新郎新婦の紹介と言えば…。


式の打ち合わせのときに、


いろいろと聞かれるものだと思うけど、



「新婦のどこが好きですか?」


の定番の質問に対して、


俺は、


「嫌いなところ以外、全部」



と答えたら、妻から冷やかな目で見られた…。




そんなに変だったかなぁ…。


でも、事実だし…。





披露宴の演目は、


かなり目いっぱいに予定を詰め込んだので、


歓談とは名ばかりで、

すぐにスピーチが始まり、


代わる代わるそれぞれに言いたい放題の内容だった。





そうこうしてる内に、お色直しとなった。





「披露宴じゃ食べられない」とは、よく言ったもんで、

うわさどおり、やっぱり食べる間もなかった…。




新婦が退場して、少ししてから俺も退場した。



新婦の控室では、忙しそうに着替えていた。



妻は、パープル系のドレス。




俺もさっさと着替えた。


俺は、白のタキシード。




準備万端、再び二人で入場だ。





お色直しの間に、祝電が読まれていたんだけど、

祝電ってのは、式場のスタッフから、


披露宴が始まる前に、


その日に届けられた電報を

すべて見せてもらえるようになっているようだ。


つまり、紹介しちゃマズイ電報のチェックってわけだ。




どういうつもりか分からないけど、


その電報の中には、


女性二人から連名のものが混ざっていた…。


確かに見覚えのある名前だった……。





なんで電報?


どうして連名?




すかさず、それは排除させてもらった。


事前チェック、大正解。



だから、新郎新婦がお色直しをしているときにやる


祝電の紹介も安心ってことなんだなぁ…。






さあ、キャンドルサービスだ。

とうとう結婚式の日がやってきた。




その前日に俺は散髪した。


その日、俺は一足先に実家へ帰って泊まった。



その晩、形式的だったけど、


親父とおふくろに、あいさつをした。



既に結婚生活を送っていたから、


なんだか妙だったけど…。




当日の朝、


生まれて初めて髭剃りだけのために床屋さんへ行った。



でも、ヘタクソだったのか、ちゃんと剃ってもらえず、


結局、自分で剃りなおすことに…。



念のために、鼻毛の手入れをしていたら、


シュッと軽く切ってしまい……。





出血が………。





俺は、鼻にティッシュを詰めたまま、式場へ到着…。



情けない……。





まぁ、ご愛嬌ってことで、そんなに気にすることもなく、


控室へ行って妻に会った。



控室にいた妻は、そんな俺の姿を見て、大笑い。




そりゃあそうだ。





そんなハプニングがあったお陰で、


俺も妻も、ものすごく緊張することもなく、

結婚式に臨めたのかもしれない。





子どもと両家の親族も到着して、


あいさつ回りを済ませた。





いよいよ神前式が始まった。




まず、神主に心身を清めてもらった。


次に、巫女がなんかやっていた。


三三九度の杯を交わした。



それまでは、俺も妻も、割とリラックスしていたけど、

神主の前での誓いの言葉のときには、さすがに緊張した。



そして、指輪の交換も無事に済んだ。





これで本当に夫婦になったって感じた。




入籍のときも感じたけど、やっぱり結婚式だ。





先行して結婚生活をしてたけど、


結婚式ってのは、


後になってからでもやった方が良いと思った。


できれば、結婚生活を始める前にやった方が良いのかも…。





シングルマザーだった妻だけど、


結婚式は俺とが初めてだった。




だから、お互い初めての結婚式だったってわけだ。






そうそう、鼻を切って出た血は、


式の前には無事に止まってくれた……。

新しい社宅は、二階建ての一軒家にした。



しかも新築だった。



前の社宅はマンションだったから、


かなり良い感じだった。



新築で二階建ての一軒家だから、


新婚の俺たちには最高の社宅だった。




通勤には1時間以上かかったけど、


良い気分だった。




毎日、終電に乗って帰ってくるから、


通勤1時間は睡眠時間になっていた…。





妻が送迎してくれるときは、


徒歩15分がなくなるので、かなり楽ができた。




子どもは俺に懐いてくれてたから、


たまの休日は、子どもを連れて遊びに出かけた。





俺にとっては、満ち足りた日々だった。






間もなく、俺たちの結婚式がくる。





シングルマザーとの結婚だったから、


結婚式の前に子どものいる日常生活がある。




結婚式の前に子どもがいるってことは、

ある種、できちゃった結婚のように考えれば


良いのかもしれない。




もっとも、できちゃった結婚と比べると、


子どもが大き過ぎるけど・・・。


俺の実の子どもじゃないし…。





でも、まだ子どもが小さい頃から接してきたから、

結婚する頃には、


自分の子どもだっていう感情が


自然に芽生えてきていた。






あとは結婚式だ。


招待リストも着々と進んで、


その日を待つばかりだ。





新婚早々、小さい夫婦喧嘩は、何度もあった…。



でも、些細なことだと思う。




新婚生活も良好だった。



子どもとの親子関係も良好だった。


家も新築だ。





いま思えば、あの頃の俺は、幸せだったんだろう…。

新婚早々、俺は、転勤が決まった。



一緒に生活を始めてから、


わずか2ヶ月ほどのことだった。



あれほど子どもの転校とかを気にかけて、


ようやく新しい生活が始まったばかりだったから、

転勤に慣れていた俺も、さすがに困惑した…。





しかも、転勤の理由は、


会社の大きな転換期ということで、

大規模な人事異動が行われることになったからだ。

いわゆる組織の慢性化による


業績の伸び悩みというやつのようだ…。





俺は、転勤には慣れていたけど、


今回の転勤は、これまで経験したことのない


遠い地方への転勤になる…。




その地方の中心都市へ転勤だったから、


俺の実績を評価されてのことだったけど、

新婚早々に遠距離の地方へ転勤することは、


なるべく避けたかったので、

トップに直談判して、特別に近場へ変更してもらえた。



しかも、その近場というのは、


妻の実家がある同じ県内だった。




この特別配慮は、本当にありがたかったけど、


この選択が、後に大きな岐路だったことを、

このときの俺は、まだ知る由もなかった…。






転勤先は、妻の実家のある県だったけど、


勤務地と妻の実家は、かなり離れていた。


通常、社宅を借りる場合は、


通勤時間を考えて勤務地の近所になる。



しかし、これほど転勤が多い会社なので、

また転勤となれば、


また子どもが転校することになってしまう…。



それだけは避けたかった。




だから、俺は、社宅を借りる場所を、


妻の実家のある町に決めたんだ。



そうすれば、また転勤するときは、


俺が単身赴任すれば、


子どもは転校しなくて済む。





異例だったけど、


俺は、転勤先から離れた他場所に


社宅を借りることにした。




転勤して社宅を借りたにも関わらず、


俺の通勤時間は、1時間を超えることになった…。




俺の仕事は、朝早く、夜遅くまでの長時間労働だ。


通勤時間1時間は、かなり体力的にも厳しくなる…。



でも、子どもの転校によるリスクを考えれば、


俺が我慢すれば済む話だった。




俺の周りの人たちは、



「そこまですることないんじゃないか?」


とか


「お前の子どもじゃないのに…。

 シングルマザーとの結婚って、

 やっぱり、いろいろ面倒だな。」


とか


「それじゃマスオさんと同じじゃないか?」



といった反応があった…。

 



確かに、俺の実の子どもじゃなかったけど、


そのときの俺は、


「子どものことを全てに優先したい。」


素直にそう思えた。






後に、この考えが、俺の思いが、


全て無駄になることを、


このときの俺は想像もしていなかった……。

少し話が変わるけど……。




妻がシングルマザーだったことは、何度も言ったとおりだ。


その妻には、姉が一人いる。



実は、その姉も離婚していたんだ。


そして、子どももいる。



つまり、妻の姉もシングルマザーだった…。



そう、姉妹とも離婚歴があり、


姉妹揃って、シングルマザーってことだ……。



しかも、妻の姉も、


子どもを産んだ直後に離婚したようだ。





妻の実家は、女系家族というか、


父親の威厳は全くなく、女が完全に優位だった。



そして、娘が二人とも出産直後に離婚している…。




明らかに家族に問題があると、俺は感じていた…。






妻が俺と結婚するまえに、


妻の姉は再婚して、二人目の子どもを産んでいた。




妻の姉の再婚相手は、


どこから見ても、人の良さそうな男だった。




その男は、俺の義兄になるんだろうけど、


妻の姉の夫と呼ぶことにする。




妻の姉の夫は、長男だったようだ。



でも、妻の姉の実家の同じ町内に家を建てされられた…。



ちなみに、妻の姉の夫は、公務員だった。




俺は、それらを見て、


妻の姉の夫であれば、義姉と離婚することもないだろうし、

妻の姉の実家ともうまくいくだろうと思った。



妻の姉の夫のような男でなくちゃ、


妻の一家とはやっていけないだろう……。



妻の姉の夫は、それで幸せそうだったので、


それはそれで良いことだと思う…。






ちなみに、妻の父親は、妻の母親と結婚する際、


妻の母親の実家のある同じ町内に転居してきたようだ。



やっぱり、妻の家族は、


完全に女性優位にあるようだ。




男が女に合わせるもの。



そんな家柄なのだろう…。






俺の実家は、一般的だと思う。


男も女も関係ない。



ただ、父親の威厳は、保たれていた。






そんな俺と妻の結婚生活が始まったんだ…。