『ルポ 低賃金』の感想 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

2024年は、再生の年です。

不正にまみれた政治を刷新し、コロナ禍で疲弊した医療・介護現場を立て直し、社会保障削減や負担増を撤回させ、防衛費倍増ではなく国民生活を豊かにするために税金を使わせ、憲法改悪を阻止し、安心して働き続けられる職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。そして、戦争・紛争が一日も早く終結し、避難している人々の生活が立て直されることを願います。

そして、能登半島大地震で被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、一日も早く生活が立て直されるよう祈ります。

 

 

毎日新聞の東海林智さんは、私が労働組合運動に参加するようになった当初から活躍されている記者さんで、メーデーについての記事一つでも、この人の手にかかるとどこか胸を打つものがあると尊敬している方です。

その東海林さんの御本が4月に発行されていたと、雨宮処凛さんのマガジン9の連載で知り、6月2日のオール埼玉総行動の帰りに慌てて買ってきました。タイトルは『ルポ 低賃金』(地平社・2024年4月23日発行)です。

東海林さんの文章にはいつも泣かされてしまうのですが、本書も随所で涙が出てしまい、ティッシュが手放せませんでした。でも、悲しさややるせなさから出る涙だけではなく、人と人の繋がり合いや助け合うことへの感動の涙もありました。

本書には、多くの悲惨な状況も記されています。困窮の果てに闇バイトにたどり着いてしまう若者、コロナ禍で心中一歩手前まで追い詰められてしまう母子世帯、労働者としての尊厳を奪われて使い捨てにされる非正規労働者や個人請負で働く人々…… 

年越し派遣村で東海林さんと一緒に実行委員を担った棗一郎弁護士が、コロナ被害相談村にも参加し、「低賃金の労働者が置かれた状況は、10年以上前の派遣村当時と何も変わっていないね。少しでも良く変えたいと思って頑張ってきたつもりだけど……」(101ページ)と悔しそうにつぶやいたことが書かれていますが、労働運動に関わってきた人たちは多かれ少なかれ同じ思いを抱えていることと思います。

ですが、本書には61年ぶりのストライキに立ち上がったそごう・西武の労働組合のことや、非正規春闘の連携が広がっていることも書かれています。そうしたことが行なわれた背景には、かつて非正規差別に憤って立ち上がったメトロコマースの労働組合のたたかいがあり、当時も連帯のために全く別の産業で働く労組員たちが集まったように、そごう・西武労組のストライキにも連帯して集まる労組員たちの姿があったそうです。

自分の労働の価値を認めさせるために声を上げることは労働者としての尊厳を取り戻すことであり、労働者であるという一点だけで共感し、連帯できるということは、この悲惨な日本社会の中にわずかに残っている希望であり、決して絵空事ではなく、実感できることなのだと思いました。

巻末には東海林さんと雨宮さんの対談も収録されており、必読です。

 

最後に、あとがきで「年越し派遣村を共に担い、現場で新自由主義に抗ってきた、いずれも故人となった」方々に本書を中間報告として捧げるということが書かれているのですが、そこに見知ったお名前を見つけてまた涙が出てしまいました。労働運動の力と価値を信じ、粉骨砕身された方々には本当に頭が下がります。少しでもその背中を追いかけたいと思います。

そして、「中間報告」ということは、東海林さんのペンはこれからも新自由主義との闘いを続けていくのだということであり、次回作にも期待したいと思います。