2024年春のナースウエーブ行動 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

2024年は、再生の年です。

不正にまみれた政治を刷新し、コロナ禍で疲弊した医療・介護現場を立て直し、社会保障削減や負担増を撤回させ、防衛費倍増ではなく国民生活を豊かにするために税金を使わせ、憲法改悪を阻止し、安心して働き続けられる職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。そして、戦争・紛争が一日も早く終結し、避難している人々の生活が立て直されることを願います。

そして、能登半島大地震で被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、一日も早く生活が立て直されるよう祈ります。

 

 

5月12日はナイチンゲールの誕生日であり、「看護の日」と呼ばれています。

埼玉医労連では、今年は5月12日が日曜日なので、この日にナースウエーブ行動を行ないました。

以下、その概要をまとめます。

 

開会あいさつは、宮本執行委員長が行ないました。

宮本さんは、昨日(5月11日)の長久啓太先生の学習会で新潟のニッパチ闘争について学んだことを取り上げ、看護師確保法制定のために運動していた頃、ニッパチ闘争を学んで感動したことを思い出し、気持ちを新たにしたと述べました。今、あまりにもいろいろな問題があり過ぎますが、医療人として命を守る仕事をしていきたいと述べました。人員不足は人権侵害だと指摘し、今の政治家に私たちの税金を任せられないと述べました。私たちにとっては春闘はまだ終わっておらず、世論に訴え、対話をし、変えていくことが大事だと指摘しました。先日の三補選で示されたように、多くの人がおかしいと思い始めていると述べました。本日学習するジェンダー問題については、医療、介護の蔑視は女性の地位の低さにつながっていると指摘しました。私たちの仕事に誇りを持ち、働き続けられる労働条件にするため、政治にも目を向けて頑張っていきましょうと呼びかけました。

 

学習講演は「ジェンダー平等を実現するために」というテーマで、講師は大阪大学副学長で法学研究科教授の島岡まな先生でした。

島岡先生は1990年からフランスに留学し、フランスで結婚・出産を経験し、フランス社会の先進性に衝撃を受けたそうです。

専門はフランス刑法とジェンダー刑法だそうです。性犯罪の問題に取り組み、2023年の刑法改正の際には参考人として参議院法務委員会で発言したそうです。その際の法改正によって、不同意性交等罪が制定されました。

そして、島岡先生は2023年10月に日本学術会議の第26期会員に選出されたそうです。

 

まず、日本の悲惨の現状が語られました。

日本のグローバルジェンダーギャップ指数は、2019年は121位、2023年は116位、2024年は125位と、過去最低となったそうです。ジェンダーギャップ指数の発表が開始された当時は、日本は80位でしたが、その後、日本は何もしなかったのでどんどん順位が落ちているそうです。北欧諸国が上位で、躍進したドイツは6位となったそうです。日本は韓国や中国よりも下ですが、危機感がまるでありません。韓国は、かつては日本よりずっと下位でしたが、現在は100位以内に入っているそうです。他の国はどんどん努力していますが、日本は進歩していないのです。G7で日本はずっと最下位であり、G7内6位のイタリアは79位だそうです。近隣のアジア諸国内でも下位であり、ベトナムは72位、タイは74位であり、ミャンマーは123位、インドは127位だそうです。

2022年の女性活躍推進法改正により、男女賃金格差の公表が義務付けられました。労働者が301人以上の事業主は、A~Cの3項目の情報を公表する必要があるそうです。

Aは、次の8項目の中から1項目を選択します。①採用した労働者に占める女性労働者の割合、②男女別の採用における競争倍率、③労働者に占める女性労働者の割合、④係長級にある者に占める女性労働者の割合、⑤管理職に占める女性労働者の割合、⑥役員に占める女性の割合、⑦男女別の職種または雇用形態の転換実績、⑧男女別の再雇用または中途採用の実績です。

Bは男女の賃金差異です。

Cは次の7項目から1項目選択します。①男女の平均継続勤続年数の差異、②10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合、③男女別の育児休業取得率、④労働者の一月当たりの平均残業時間、⑤雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間、⑥有給休暇取得率、⑦雇用管理区分ごとの有給休暇取得率です。

また、内閣府男女共同参画局による男女共同白書によると、末子6歳未満の共働き夫婦の時間区分別行動者率では、男性は主に仕事、家事をやるのは主に女性であることが明らかになっているそうです。

このことは、女性の正規雇用率の減少につながり、非常に男女差が大きくなっているそうです。これは他の先進国では見られないことであり、政治の問題だと指摘しました。

次に、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツについて取り上げられました。

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツは、「性と生殖に関する健康や権利」と訳されます。1994年の国連・国際人口開発会議で話題となり、当初は女性の権利として①安全な生活、②生殖能力、③家族計画など、性と生殖に関する包括的な権利が保障されるべきとされてきましたが、最近ではすべての個人とカップルに保障されるべき人権と考えられているそうです。

しかし、日本では未だに人工中絶に堕胎罪が適用されます。これは、戦前の刑法が残っているそうです。一部を改正しただけで、明治40年の刑法・民法が今でも使われているそうです。こんな国は世界で日本だけであり、家父長制の亡霊が未だに残っていると指摘しました。

母体保護法により、一定の条件下での人口中絶が合法とされましたが、日本では女性が自分で薬を飲む堕胎法は違法とされているそうです。このことは、先進国で日本の女性だけが安全な避妊・中絶へのアクセスが遮断されてきたということだと指摘しました。

ピルは1999年まで解禁されず、解禁後も保険適用外のため高額だそうです。そのため、日本の使用率は0.9%であり、フランスでは36.6%、ドイツでは42.3%だそうです。

避妊の失敗が多いということは、望まない妊娠の危険性が高いということです。

緊急避妊薬、アフターピルは、日本では2011年に初めて承認されましたが、これも保険の適用外だそうです。また、医師の処方箋が必要であり、72時間以内という服用時間に間に合わない危険性が高いそうです。諸外国では、薬局で入手可能だそうです。

なぜ医師の処方箋が必要なのかというと、医師会が「悪用・濫用されるのではないか」と反対しているからだそうです。また、「人工中絶と同等、10万円くらいにすればどうか」という医師の意見もあるそうです。必要とする女性のことが何も考えられていないと指摘しました。

既に90ヵ国以上で、医師の処方箋なしで薬局販売されているにも関わらず、「検証する調査研究を始める方針」としているそうです。

人工中絶薬は、最後の月経が始まった日から49日以内の服用が必要だそうです。日本では、2021年12月に販売承認申請が出され、2023年1月に承認されたそうですが、フランスでは20年以上前に存在しているそうです。

人工中絶手術についても、日本では未だに時代錯誤な手術である掻爬法のみが採用されているそうです。

日本の女性は非常に権利侵害されていると述べました。

アメリカでもバックラッシュがあり、2022年6月、トランプ政権下で、人口中絶権を合憲としていた1973年の「ロー対ウェイド」判決が覆されたそうです。

一方、フランスでは今年、憲法改正が行なわれ、「女性の中絶の権利」が明文化されたそうです。さすが人権宣言の国だと述べました。

 

次に、日本人が変われない、変わらない理由が取り上げられました。

日本では、看護師、介護職、保育士などのケア労働が軽視されます。これは、女性が軽視されていることにつながっていると指摘しました。世界では日本だけだそうです。

そして、ジェンダー平等が必要な理由として、イノベーション創出やそれに伴い経済発展ばかりが強調されていますが、しかし、最も大事なことは人権尊重だと指摘しました。

今、「ダイバーシティ&インクルージョン」から、「ダイバーシティ&エクイティ&インクルージョン」へと変わってきているそうです。「エクイティ」とは、公正、公義と訳されますが、日本では忠義が必要だと指摘しました。「男女を同等にする「平等」ではなく、1人1人の実情に合わせた扱いが「公正」だから、ジェンダー平等は進めなくてもよい」などと誤解される危険があるからだそうです。

そうではなく、不平等があることを前提として、それを正す対策を行なうことが「公正」であり、ポジティブアクション、クオータ制、パリティ制などは必要だと指摘しました。

こうしたことを「逆差別」だと言っているのは日本だけだそうです。他の先進国ではとっくに克服されており、「割り当て」であるクオータ制から「同数」であるパリティへ、法律で義務付けが行なわれているそうです。

アンコンシャスバイアス、特権に無意識であることに注意が必要だと指摘しました。

ダイアン・J・グッドマン氏の『真のダイバーシティをめざして』には、「今企業(大学)に求められているのは、「自分は差別なんかしていない」と思っているマジョリティ側が、実は目に見えないゲタを履かせてもらっていることにまずは自覚的になり、その理解を踏まえてマイノリティについて新たな考え方や行動様式を取り入れていくことである」と書かれているそうです。

島岡先生はご自身が経験したジェンダーバイアスの自覚について語りました。1993年のフランスで第一子の娘さんを出産した際、出産祝いで青い服ばかりが届き、男の子と間違えられていると思ったそうです。ですが、フランスでは当時既に子ども服はユニセックスになっていたそうです。そのため、第二子の息子さんにもその服が使えたそうです。

ですが、日本では2024年の現在でも未だに、女の子は赤、男の子は青としているそうです。

日本では、現在も男性中心のジェンダーバイアスを植え付ける教育、人権に反する教育が行なわれていると指摘しました。ブラック校則、性別を強調する制服、教師による性虐待、軍隊式朝礼、夏休みの宿題などです。

メディアでもジェンダーバイアスが再生産されており、フランスで育った島岡先生の娘さんは、「日本のテレビって差別的で気持ち悪くて観ていられない」と言い、日本で教育を受けた息子さんは平気でテレビを観ているそうです。

なぜ日本のテレビが差別的になっているかというと、メディアにおける男女格差があるからだそうです。特に役員数が顕著で、女性役員は10人しかおらず、3.13%だそうです。

人権教育も欠如していると指摘しました。いわゆる道徳教育は人権教育ではないと述べました。道徳では「他人に迷惑をかけるな」と教わりますが、欧米の子どもは「他人に迷惑をかけなければ生きてゆけないハンディがある人がいる。そういう人は、堂々と他人に頼る権利がある」と教わるそうです。

自由、自己決定を「わがまま」と教える日本に対し、先進国ではおかしいことはおかしいと言える子どもを育てているそうです。

ブラック校則など、人権に反する教育をする日本に対し、先進国では自立や自律を促す教育を行なっているそうです。

 

次に、ジェンダー平等の実現のためにできることが取り上げられました。

ジェンダー平等が必要な真の理由を理解することが必要だと述べました。

それは、「結果の平等より機会の平等」の時代から、「機械の平等より、1人1人の弱点を支援することにより、可能な限り結果の平等に近づける」時代へ進んでいくことであり、それが公正であり、人々の幸福実現の鍵だと指摘しました。

中立は社会をよくすることは絶対になく、むしろ悪くすると指摘しました。中立であろうとすることは、変わらない、格差をそのまま温存することになるが、マジョリティがマイノリティの側に立つことによって格差が是正されると指摘しました。

次に、アンコンシャスバイアスや自らの特権を自覚することが必要だと述べました。

マジョリティの側に属していることで労なくして得ることができる優位性があると指摘しました。

特権のイメージとして、自動ドアが示されました。前に進もうとするとき、特権のある人にはセンサーが働いて自動的にドアが開きますが、マイノリティにはドアが開かなくて前に進めないので社会の差別に気付くということです。

いい人、素直な人ほど特権に気が付かないそうです。それは教育の影響だそうです。

「マジョリティの特権を可視化する」というYouTubeの動画が参考に紹介されました。

真の人権を理解し、行動するためには、これからが重要だと述べました。

日本では人権教育が欠如しており、1人1人の成長、意識改革、行動変容が重要だと述べました。

また、日本では性教育も遅れているそうです。性教育の本質は人権教育だと指摘しました。

日本人に欠けているのは「批判精神」であり、「良い子」を育てる教育は為政者の都合のよい国民を育てるものであり、「日本は平和な軍隊国家」だと欧米人に言われたと述べました。

校則など守る必要はなく、頭髪や服装などは個人の自由であり、下着の色まで決めるのはセクハラだと指摘しました。

「時間を守れ」とうるさく言われるのは日本だけであり、時間厳守よりも大事なものがあると述べました。100人以上が死亡した福知山線脱線事故は、時間を守ることを安全よりも優先したために起きたものです。

受験勉強の弊害、暗記教育は無意味であると指摘しました。

「運も実力のうち」と言われますが、親がお金持ちであるなど、運があったからこそ実力をつけることができたのであり、「実力も運のうち」だと指摘しました。

日本学術会議では、第6次男女共同参画基本計画に向けた提言と包括的反差別法制定に向けた提言を計画中だそうです。

人権とは、最も弱い立場の人、少数者の権利を尊重することだと指摘しました。そして、個人のモラルの問題ではなく、国民の権利と、それを保障する国家の義務の問題だと指摘しました。

今日から実践していただきたいこととして、知識の向上、権利の行使、人権の向上のために闘うことが呼びかけられました。

 

続いて、質疑応答が行なわれました。

精神科の病院でトランスジェンダーの方が入院した際、部屋とトイレとお風呂をどうするのか困ったが、海外ではどう対応しているのかという質問に対しては、大学でも学生寮などで問題になっていると述べました。フランスでは、学生寮は男女混合で、全て個室でシャワー室もついているそうです。日本はその点でも遅れていると述べました。トランスジェンダーの方に対しては、その方の自認する性で扱うべきだと述べました。

小学生の時に、男女関係なく活躍できる仕事をしたいと思って看護師になろうと思ったが、看護師の間でも性的マイノリティの人が来ると噂になったりして、日本のジェンダーギャップの状況はまったく変わっていないが、なぜ政府は何もしないのか、どうすれば変わるのかという質問が出されました。島岡先生は、まずは政治を変える必要があると答えました。日本は「世界の田舎」であり、田舎には昔ながらの因習が残っていると指摘しました。日本も10年くらいすれば大きく変わるだろうと述べました。

オールジェンダーフリートイレを歌舞伎町に置いたら、逆に危ないのではないかという話になってしまったが、フランスではジャンダーフリートイレが普通に使われているのかという質問に対しては、日本ならではの問題があり、分断が起きている、昔から運動をしてきた人が「女性が危なくなる」と主張しているが、フランスでは問題にならないと答えました。変な人はいるが、それと少数派の権利を尊重しないことは話しが違うとしているそうです。フランスでは元々男女混合トイレでそれが普通であり、犯罪は犯罪として対処しているそうです。

女性専用車両についてはどう考えるかという質問に対しては、痴漢は性犯罪だが軽視されており、厳正に対処する法改正がされたが、女性を守るためにはまだ専用車両が必要だと述べました。

 

講演の後、行動提起が行なわれました。

今月中のベア回答を勝ち取ること、最低賃金引き上げ署名と最低生計費調査に取り組むことが提起されました。

そして、本日は看護職員増員署名に取り組むことが呼びかけられ、駅前で1時間ほど署名活動を行ないました。母の日でもあったので300本のカーネーションの造花を準備し、配り切るまで署名を呼びかけました。

 

以上で報告を終わります。