特許公報での調べ物をしている過程で偶然、「からなるグループから採択した材料を含む」という表現を含む請求項に出会いました。
翻訳による出願です。
言うまでもなくマーカッシュクレームなのですが、驚いたのは「採択」という表現が使われていること。
権利化されていますから審査過程では問題にならなかったのだろうとは思いますが、請求項に採択は、なじまないのも事実です。
それで試しに公報を検索してみたところ・・・・・。
方法クレームで、請求項に「採択するステップ」を含む出願が、いくつか実在しています。
翻訳案件の場合、原文はacceptだったり、adoptだったり。
acceptに「選ぶ」意味はないため、こちらは訳語そのものに問題ありの可能性があるのに対し、adpotは、choose以外に「to take by choice」という意味にもなり得るのは事実です。
ですので、どの出願も問題だと断言しているわけではありません。
ただ、英文の方法クレームでは通常、1つの動詞で表現される工程は1つです。
かたや採択は、複数のものから何かを(1)選択し、それを(2)採用すること。
たとえば条約の採択なら、諸外国から出された案のうち良いものを選び、条約としてまとめますよね。
最近は「決議を採択」といった使い方もなされているため「選び取る」意味が弱いこともありますが、少なくとも言葉としては、選ぶ+取り入れることを示します。
つまり、請求項の「採択するステップ」は、原文とは意味が違う可能性があるということです。
そして似たようなことは、実は「determine」で頻発しています。
特に、ソフトウェア関係に多いです。
「a step of determining~」という原文に、「~を判定するステップ」と翻訳しているケースです。
英語のdetermineは「決める」だけなのに、「判定」という語は、「判断」して「決定」することを意味します。
つまり、原文の1工程から、2工程だという解釈を許す訳に変えてしまっているわけです。
この場合、たとえば判断をまったく別のところで行って決めるだけの場合が、権利範囲に含まれなくなる可能性があるでしょう。
もとの原文は、決めているだけなのに。
判定=判断+決定以外にも、選定=選択+決定など、似たような語はいくつもあります。
方法クレームを外国語から日本語に翻訳するときは、原文の1工程が翻訳で2工程になってしまわないように、十分な注意が必要ですね。