愛情の反対は無関心・・・と翻訳品質 | 特許翻訳 A to Z

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1992年5月から、フリーランスで特許翻訳者をしています。

日本では、なぜかマザー・テレサとともに語り継がれている、「愛情の反対は憎しみではなく、無関心」という言葉。

マザーのほうは根拠がはっきりしないのですが、作家のエリ・ヴィーゼルの言葉であれば、数々の洋書や報道記事に確認できます。

 

The opposite of love is not hate, it's indifference.
The opposite of art is not ugliness, it's indifference.
The opposite of faith is not heresy, it's indifference.
And the opposite of life is not death, it's indifference.
Because of indifference, one dies before one actually dies.
To be in the window and watch people being sent to concentration camps or being attacked in the street and do nothing, that's being dead.

   By Elie Wiesel,  US News & World Report (27 October 1986)


私はよく、この「愛情の反対は憎しみではない」と、スポーツなど人々の趣味のものを重ねて考えます。
たとえば、野球の阪神ファンもアンチ阪神も、阪神に関心があるという意味では同じこと。
SMAPファンもアンチSMAPも、SMAPに関心があるという意味では、同じこと。

単に、そこに向けられる感情の種類が、違うだけ。

関心が「ある」の反対は、関心が「ない」。
だから、愛情の反対は憎しみではなく、無関心になり得るのですよね。


ところで・・・・
私事ではありますが、実はここ1か月半ほど、かつて経験がないほどの忙しさになっています。
翻訳者になって25年半、今のような状態は覚えているかぎりはじめてです。

当然、従来と同じやり方をしていたら、自分の好きなことを楽しむ時間なんて、どこにもありません。
勉強する時間も、とれません。
それどころか、放っておいたら、ストレスと疲れで品質が落ちる可能性も容易に予測できます。

何か対処をしなければ。
どう対処するかを考えていたときに、思ったことがありました。

たとえば、仕事を「頑張って、する」こと。
若い頃の私は、このタイプでした。少しくらい無理をしてでも、家事も育児も仕事も頑張ってしまう。

でも、頑張りすぎると、心も身体も疲れます。

そういうことが長く続くと、周囲から、あまり「頑張らないように」しないといけないよ・・・・と言われることも、よくありました。
そして頑張りすぎないように意識していたことも、ときどきありましたが・・・。

「頑張る」も「頑張りすぎないようにする」も、方向が違うだけ。

結局は、「~する」が入っているのですよね。
頑張らないようにするという、新しい行動(考え;手法)が、存在しているというか。

そんなことを考えていたある日の昼下がりに、ふと、思いました。
重要なのは、頑張りすぎないようにすること「ではなく」、頑張るのを「やめる」ことではないかなと。

少々こじつけ的で荒っぽい言い方ではありますけれど、
良い意味での「無関心」みたいなもの
ですね。

手に持っていたものを、全身の力を抜いて、そのままストンと落とすような感じです。
ここまで思いが至ったとき、ある実験をしてみることにしました。

納期が立て込んで仕事がギュウギュウのとき「ほど」、意識的に、遊びに行く。

頑張りすぎないようにする、のではなく、そもそも頑張るのをやめました。
ただし、守秘義務の問題にならない程度に、仕事は持って出ます。

具体的には、翻訳文の見直しや資料を読むことなど外でもできる作業を昼間に割り当てて、積極的に外に出ました。
美術館や公園などに足を運び、あるいは初めての場所に行って、「ついでに」カフェで仕事をします。
仕事は、あくまで「ついで」です(笑)。

それも、スターバックスやドトールなどのチェーン店ではなく。
自分が最高に良い気分になれそうなカフェだけを、意図的に探して選んでいます。

結果、何が起きたか・・・・

仕事の品質と時間密度が、かなり上がりました。
品質のほうはクライアントからのフィードバック/反応などに反映されましたし、自分でも以前より効率が上がったのを実感でき、なおかつ記憶への定着率も格段によくなったのです。

1件ごとに終わると調べたことの多くを忘れるのが日常だったのに、今は仕事をしながら勉強する形が、成り立ちます。
そもそも自分が最高に快適になれそうな店を選んでいますから、それだけでもストレスが減り、集中力がアップしますし。

相当に仕事が詰まっても、好きなことができないとか勉強する時間がないとかいう問題が、起きない。
好きなことと勉強を「しながら」、同時に仕事をこなせていますので。

学生時代から、友人たちに「ヨーロッパかぶれ」と言われたほど欧州が好きで、特にルネッサンス時代のヨーロッパの貴族には、本当に魅了されます。
だから、そういうアンティークな雰囲気のあるカフェばかり、選びました。BGMは、クラッシック音楽です。


いずれにしろ、愛情の反対は無関心・・・・・からヒントを得て仕事のスタイルを変えたのは、かなりプラスだったようです。

時間がない「から」好きなことが「できない」
ではなく、
時間がない「なら、好きなことも同時に一緒にすればよい」・・・・・・ですね。

物理的なキャパシティの限界もありますから、お断りせざるを得ないときは断っているのですが、しばらくこの方法で続けてみようかなと思っています。






画像は、デ・ラランデ邸という洋館です。
1階の一部が武蔵野茶房というカフェで、2階も見学可能になっています。
(リンク先の360度パノラマビューで店内まで入れます。)

 

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