新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」
(2/23-25/2024 新国立劇場オペラパレス)
2月23日(金・祝)13:00
ホフマン 福岡雄大
オリンピア 池田理沙子
アントニア 小野絢子
ジュリエッタ 柴山紗帆
リンドルフほか 渡邊峻郁
ラ・ステラ 木村優里
2月24日(土)13:00
ホフマン 井澤 駿
オリンピア 奥田花純
アントニア 米沢 唯
ジュリエッタ 木村優里
リンドルフほか 中家正博
ラ・ステラ 渡辺与布
2月25日(日)13:00
ホフマン 奥村康祐
オリンピア 奥田花純
アントニア 小野絢子
ジュリエッタ 米沢 唯
リンドルフほか 中家正博
ラ・ステラ 渡辺与布
各キャスト1回ずつ観劇。
オッフェンバック作曲ランチベリー編曲の軽快で華やかで美しい音楽に乗せて、一人の男性の人生を切ない恋を通して振り返る物語。
オリンピアは人形だったし、アントニアは病死してしまい、ジュリエッタの魅力には負けてしまう。ステラとも、・・・
切なく、最後まで救いのない物語。
ホフマンがかわいそう。
人生、自分ではどうにもならない理不尽なことがあるもの。
笑われるような恋をしたり、愛する人を亡くしたり、誘惑に勝てなかったり、すれ違ってしまったり。。
作者は、逆にそれは悪魔の仕業などではなく、人生とはそういうもの、ということを本当は言いたかったのかも。
福岡雄大さんのホフマンはそんな一人の男性の悲哀に満ちた人生を密度の濃い演技と品格ある踊りで見事に表現。
悩み苦しむ男性を演じる雄大さんの演技と踊りは「ベートーヴェン・ソナタ」(中村恩恵さん作品)の時もそうだったけれど、濃い演技とあふれる悲哀が心に響く。
苦悩に満ちた初老を演じる時、そのダンサーの個性、重ねてきたもの、蓄積してきたものが踊りを通して見えるのかも。
人生を振り返り、過去の1つ1つの恋を丁寧に語りかける井澤駿さんのホフマンも心に響く。踊りも演技も素晴らしい。
千秋楽の奥村康祐さんのホフマンは、初役とは思えない康祐さんのホフマンの世界が舞台に広がった。
雄大さんや駿さんのような濃い演技ではないけれど、悲哀に満ちた恋の人生が静かに物語られる。
康祐さんは、個人的に一番の当たり役はペトルーシュカだと思ってる。
彼は、ああいう、かわいそうな主人公を演じる舞台が素晴らしい。
渡邊峻郁さんのリンドルフも素晴らしかった。場面ごと(幕ごと)に全く違うキャラ、全く違う方向からホフマンの人生を操る濃い演技と安定感のある深い踊り。
峻郁さんは悪役、悪魔役もよく似合う。凄みがあって怖かった。実にいい。
中家正博さんのリンドルフも、峻郁さんとはまたひと味違った悪役感。
悪魔という絶対的な存在感ではなく、どこにでも悪はある、という様な自然な悪。
美し過ぎる小野絢子さんのアントニアは、深い深い愛の中で旅立って行く。
米沢唯さんのアントニアも素晴らし過ぎ。
なんと可憐でエレガントな踊り。
熱い愛がいっぱいで、美し過ぎる踊りと自然で密度の濃い演技に鳥肌の連続。深く深く感動。
踊りと演技の美しさの中に妖艶さを感じる柴山紗帆さんのジュリエッタは初役とは思えない女性らしい魅力。
木村優里さんのジュリエッタは、深く濃い演技と美しい踊りが素晴らしい。
優里さんは先日観たシェヘラザードも素晴らしかったし、ああいう魅惑的で濃い役も抜群に美しくて素敵。
早く優里さんのマノンが観たい。
唯さんのジュリエッタも、美しさと妖艶さがパワーUP。
唯さんはどんな役も自由自在だなぁ。
凄すぎる。鳥肌の立つ美しさ。
唯さんは、一人でオリンピア、アントニア、ジュリエッタの3役を一度に踊ることも出来てしまうのでは・・・と思えてくる。すごい。
可愛らしい池田理沙子さんのオリンピア、可憐で細部まで磨かれた奥田花純さんのオリンピアも、それぞれ素敵。
理沙子さんも花純さんも、カクカクとした動きも、つま先立ちの多い(難しそうな)踊りも、音のしないポアントも、表情や目線もお人形っぽくて、すべてが完璧!
花純さんは、全幕主役をまた踊ってほしいなぁ。花純さん、どんな踊りも本当に素敵だから。
木村優里さん、渡辺与布さんのラ・ステラも超素敵。まさにオペラ座のスター。
優里さんは威厳のある大スターのオーラが輝く美しいステラでありながら、ホフマンへの思いが伝わって切ない。
与布さんのチャーミングで美しいステラも実に素晴らしい。
ホフマン物語は、愛する人を亡くした、ピアノを弾く初老の老人が、劇場のスターに思いを寄せるという設定。
自分自身とも重なる部分があって、そういう意味でも胸が熱くなる作品。
とても素敵な作品、良い舞台だった。
1幕は周りのみんなの振りや衣装、演技がとても可愛らしい。
2幕の美しい幻影の踊りは、まさに美の世界。深く美しい舞台が感動的。。
3人の幻影では、特に廣川みくりさんが美しい。
花形悠月さん、中島春菜さんもとても素敵。
3幕は、前回公演時は、バックの演技がもっとドロドロしていた様な気がするけれど、怪しさ、妖艶さは今回くらいが丁度いいのかも。
ポール・マーフィーさん指揮の東京交響楽団の演奏も、豊かで柔らかな響きが素晴らしい。
ホフマンって、こんな素敵な音楽だったっけ〜と思ってしまうほど。
14-12-10-8-6の厚みのある弦の響きも、優しく華やかな音色の管も心地良い。
東響にとっては初めてのバレエ「ホフマン物語」だったらしいけれど、あっという間に自分たちのものにしてしまって素晴らしい〜!とマーフィーさんも絶賛。
舞台も音楽もブラボー。