じこ報告書 -56ページ目

イエス

冬の柔らかな陽射しが傾き始める。
隣接する公園からは、下校を済ませた子供たちの声が引っ切りなしに聞こえてくる。

わんぱくそうな掛け声。
弾むボールの音。

インドアな子供たちの増加などとうたわれる昨今、彼らの明るい大声は心に親しみを与えてくれさえする。

子供たちが集まる。
遊ぶための何かを決めようとしている。
雰囲気がそう教えてくれていた。





「せーの」

「フォーリンラブ!」





…そう聞こえた気がした。





「フォーリンラブ!」





…まただ。

耳垢が詰まっているのかもしれない。
そう思いながら、彼らとの年齢のギャップに急に胸が痛くなる。

彼らは何事もなく遊び始めていた。ボールを蹴る乾いた音が、公園中に響いていた。