じこ報告書 -54ページ目

板状

12月も半ばを迎え、房総の地も随分と冷えたものだと実感する。
目を落とせば、歪んだ水面が太陽の光をいびつに屈折させ、層が二つに分かれていることを認識させる。

冬の水溜まりは、寒さを見せつける為だけに存在しているのだろう。
厚さ1㎝にも満たない透明な板であっても、今のオレには十分過ぎるほどのアピールだった。

足を乗せてみようか。
悪戯な心が顔を覗かせる。
そっと力を入れると、全体がキュゥと沈んでいくのがわかる。

その下では、茶色くなった泥水が右往左往を繰り返しながら、徐々に行き場を無くしていく。

ピタッ。

上面に張り付き、真空と化した茶色い液体の様は、まるで一枚のチョコレートのようだ。
空腹の体にダイレクトな刺激が走る。



甘い甘い考えは、チョコレートにヒビが入るまで続く。

パキッ。

現実に戻されたオレは、一人ラーメン屋の暖簾をくぐって行った。