コータ③アサコの牽制
そんなある日のことだった。私が一人で研究室にいたとき、アサコが来た。失礼しまぁす。PCに向かっていた私は、伺うように入ってきたアサコの姿を認めて、自然とよそいきのスイッチが入った。アサコ。どうしたの?えっと、コータさん、いないの?私が来たときはいなかったよ。多分休憩(タバコ)かな?そう。アサコがその場を立ち去らなかったので、待ってる?そこ座ってて大丈夫だよ。と言って空いている椅子を指さした。もともとアサコとは実はそこまで親しい仲じゃない。リュウやコータがいることでよく遊んでいたけれど、変な感じだけれど二人きりとなると違和感があるのだ。女子として緊張感がある相手。気まずいな。なんとなしにそう思った時、アサコが口を開いた。サクラは、どうして清田くんと別れたの?え?!突然そこ、ぶっこんで来るか・・・!どう答えていいのかわからず、うーん・・・うまくいかなかった、というかすれ違ったというか、一口には言えないけど・・・。と言い淀んだ。そうなんだ。あの、わたしね、清田くんと4人で遊んでた頃、ほんと楽しかったんだ。・・・楽しかったね。実際あの頃は楽しかった。切ない気持ちで、そう思った。ね?清田くんから話聞いたんだけど、サクラのことまだ好きみたいで。うーん・・・。そうなのかな。うん、清田くんとサクラ、すごいお似合いだし、サクラ清田くんと付き合ってるとき、すごい清田くんのこと好きだったよね?そうだね。もう私の中では蹴りのついた話。今更どうして蒸し返してくるのか、そんなのは肌感覚でわかる。けん制しているのだ。も一回付き合ったりはしないの?・・・しないね。私は即答した。誰か好きな人がいるとか?今はいないよ。そっか。じゃあさ。もうコータさんと付き合えばいいのに。はい?思わず眉間にしわが寄った。コータはアサコと付き合ってるんでしょうがもう別れよーかなって思ったりする。いやいやいや・・・。何を言ってるの。最近ケンカばっかりだし、コータさんにはサクラみたいな人の方がきっと合うしー。驚いて言葉もないよなんで?二人、すごい似てるし、コータさんとサクラ、ほんとよく似てるし。言動も行動も思考回路も。似てるからって付き合うわけじゃないでしょ。絶対二人の方があってると思うし、うまくいくと思う。条件だけでうまくはいかないよ友達だからうまくいってるんだよ。そんなことない。ほんとにわたしはサクラとコータさんが付き合えばいいと思ってるもん好きになったら教えてね?ちょっとやめてよ。ほんとにそういうの困る。もしもコータさんのこと好きになったら教えてね?同じ言葉を二回言い、強く牽制を感じた。こんな話題なのにアサコはにっこりと笑って部屋を出て行った。張り詰めた緊張感が一気に溶けたその時、もう苦しい。そう思った。お似合いだとか、付き合ったらうまくいくとかは、アサコからもう幾度も言われていた。そのたびにほんと、ないわ。絶対無理。友達としか思えない。本気でずっとそう思っていたからそう言っていたのに、それが少しずつ変わってきたのはいつからだったんだろう。アサコが言ったこの時にはもう、絶対ない!と今までのように大きく否定することはできなくなっていた。